バイオ燃料


※月刊「環境ビジネス」2007年11月号 特集1「バイオ燃料の行方」の内容を掲載しています。 掲載内容は、2007年9月時点のものです。

CO2削減の切り札となるか!?
「バイオ燃料」

原油価格が史上最高値を更新するなか、世界中でバイオ燃料への注目が集まっている。 米欧の株式市場でバイオ燃料のベンチャー株が高騰、NASAがベンチャー企業とともに航空機向けのバイオ燃料開発を進めるなど、 海外の動きが活発化するなか、日本の産業界も対応を迫られている。 次世代エネルギーへの対応は国内自動車業界、石油連盟、商社など関連業界にどのような変化をもたらすのか。 注目のバイオ燃料ビジネスの最新動向に迫る。

ブラジル油田
アマゾン熱帯雨林のなかのウルク河流域はブラジル最大の内陸油田地帯。日量990万m2のガスと5万3255バレルの原油を産出する。エネルギー生産と自然環境保護との調和的発展に成功した事例としてブラジルが世界に誇る油田となっている。ブラジルでバイオ燃料の導入が進んだ背景には国営の総合エネルギー企業ペトロブラスが石油精製技術と同時にバイオ燃料の開発に取り組んだという背景がある(写真提供:ペトロブラス)


フレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)
2006年発表のブラジル向け
「フレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)」
(写真提供:Honda)。
ブラジルFFV市場にはほかにトヨタ、フォルクスワーゲン、メルセデスベンツ、ルノー、プジョー、シボレー、フォード、フィアットが参入する。

フレキシブル・フューエル・ビークル(FFV)
1925年に行われたエタノール100%燃料の実走行試験。
途中悪路もあったがサンパウロからリオデジャネイロまで完走した。
(写真提供:ブラジル国立技術研究所 INT-Insitituto Nacional de Tecnologia)



輸送燃料多様化の流れは止まらない

 ブラジルではサトウキビを原料とする「バイオエタノール」で自動車が走っている。ブッシュ大統領がバイオエタノールの増産を決めたためにとうもろこし価格が高騰している。
 かつては外国の話にすぎなかったが、いまや日本でもごくふつうのガソリンスタンドでバイオ燃料の給油ができる。2007年4月、石油元売各社は3%のバイオエタノールに相当する7%のETBEを含む「バイオETBE」の販売を開始した。関東を中心に現在50カ所でETBEの給油が可能。石油連盟は08年には100カ所、09年には1000カ所、そして10年には全国での給油が可能になる予定だ。

 1バレル=80ドルという原油価格高騰とCO2削減目標の達成に後押しされ、世界中でバイオ燃料の利用が進んでいる。植物由来のバイオマスを燃やして排出されるCO2は、もともと植物が成長過程で大気から吸収したものであるため、大気中のCO2を増加させたことにならないためだ。
 20〜25%のエタノール混合ガソリンE20やE25、さらに100%エタノール燃料まで販売されるブラジルと比べると日本の3%は微量だが、それでも現状では足りないため、国内外で製造拠点開発が始まっている。

 20世紀にはガソリンやディーゼルが主流だったが、自動車の歴史をさかのぼれば、19世紀前半までは蒸気自動車や電気自動車、石炭ガス自動車の開発も盛んに行われていた。そして21世紀、自動車の燃料は再び多様化の方向に向かっている。その有力な選択肢の1つがバイオ燃料だ。バイオエタノール、バイオディーゼル、電気、水素、天然ガスと選択肢が広がるなか、次世代の主流となるのはいったいどんな自動車なのか。
 2007年7月パシフィコ横浜で開催されたBio Fuels World2007(バイオ燃料展)は、その疑問に対する答えを示唆するものとなった。
BioFuels World 2009


自動車3社はバイオ燃料をこう見ている
※クリックすると拡大画像が表示されます。



トヨタ全車種でE10対応済み 次は水素化処理軽油のHBDに照準

 同展示会でトヨタ自動車の森光信孝氏(BRエネルギー調査企画室)は、「トヨタのバイオフューエルへの考え方」について講演した。森光氏によると、トヨタは@エネルギー対応、ACO2削減、B大気汚染防止を3つの課題として設定、これらをクリアするべく次世代自動車の技術開発に臨んでいるという。将来の輸送燃料は従来のガソリン・軽油のほかに合成燃料、バイオ燃料、ガス燃料、水素、電気の5つの燃料を想定。当面は化石燃料が主流であり、強力な代替燃料はないが、取扱い上の利便性から現時点ではバイオ燃料に優位性があるとしている。
 ただし、CO2削減効果が高いのはバイオディーゼル(脂肪酸メチルエステル:FAME)やバイオマスをガス化したBTL、サトウキビを原料とするエタノールで、アメリカで主流のとうもろこし原料のエタノールは製造過程で軽油と同レベルのCO2を排出する。この点を指摘したうえで、森光氏は食糧との競合を避け、廃木材などを原料とするセルロースエタノールの技術革新が必要と語った。
 さらに、バイオ燃料の資源作物を増産することにより、森林破壊や水質汚染、生態系への負担などの懸念があり、バイオ燃料の導入はE10程度までの低濃度が妥当であるとした。
 トヨタの全車両はすでにE10対応済みで、E85や100などのエタノールとガソリンの両方に対応できるFFVについてはローカル対応の方針(2007年5月ブラジルで販売開始)。また、バイオディーゼルに関しては、フィルターの目詰まりなどが問題となるFAMEではなく、水素化処理軽油のHBDの開発を進める意向であると語った。


日産はCO2排出70%削減目指す カギは再生可能エネ利用

 続いて講演した日産の広田寿夫氏は、日産は@全工場から排出されるCO2を2010年までに2005年比で7%削減、A排ガスのVOC(揮発性有機化合物)低減、B廃棄物ゼロの完全な資源循環を重要課題とすると語った。
 CO2削減の長期目標としては2050年までに新車のCO2排出70%削減を掲げた。これは「地球の平均気温上昇を2℃以内に抑えるには大気中のCO2濃度を500ppmに抑える必要がある」とするIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の見解に基づくもので、そのために再生可能エネルギーからの発電による電気自動車と水素自動車の開発が求められるとした。
 しかし、当面はガソリンエンジンのCO2削減を課題とし、2010年には3リットルで100kmの走行が可能な自動車の日本市場投入を目指す。海外では2005年からFFVを販売、07年から北米でE85対応車を販売、3年以内にE100対応車を販売する。
 今後は、IEA(世界エネルギー機関)のバイオ燃料のシェア拡大のシナリオに基づいた対応を進める方針で、バイオ燃料をCO2削減のための重要なオプションとして考慮するものの、食糧との競合や自然環境へのマイナス影響などへの懸念も示した。レスター・ブラウンのような世界の有識者のオピニオンにも耳を傾けながら、環境負荷低減という目的を踏み外さない技術開発が必要とした。


ホンダで進むバイオリファイナリーと燃料電池車開発

 ホンダもバイオ燃料への対応は積極的だ。2006年年末にはブラジル向けFFVの販売を開始、国内でも現在市場に流通している車種は二輪車を含めてすべてE10対応済みだ。
 また、本田技術研究所は地球環境産業技術研究機構(RITE)とセルロース系バイオマスからのエタノール製造技術を共同開発している。
 ホンダの水戸部啓一氏(環境安全企画室)は「稲わらや植物の茎や葉など、食糧以外のソフトバイオマスに含まれるセルロース類から燃料を製造すべき。コスト低減など実用化までの課題は多い」と語った。また、日本でのバイオ燃料の市場投入には安全性の問題を含め、さまざまな立場からの意見があり、普及には十分な検討が必要だとした。
 また、「ブラジルなど海外からエタノールを輸入すると輸送に多くのエネルギーを使う。Well to Wheel(油田〜乗り物)というトータルな視点でもっともCO2を低減できる道を考えるべきである」との見解を示した。
 「現在のバイオ燃料の技術水準では、CO2削減効果は限定的であるため、いまのところ、再生可能エネルギーを利用した燃料電池車がもっとも環境性能に優れている。ホンダはカリフォルニアで太陽光発電による水素ステーションと燃料電池車の実走行試験を進めており、1回の水素充填での走行距離は570kmに達している」(水戸部氏)

 自動車大手3社はバイオ燃料導入によるCO2削減の意義を認めながらも、効果は限定的であるとし、拡大にはコストや安全性の面でさらなる技術開発の必要があることから、当面は10%程度の混合が妥当であるとした。 農林水産省は精製技術の技術革新や休耕地などの利用が進めば、輸送燃料需要(6000万kl)の1割の600万klまで国内で増産可能であるとしている。
 ほぼゼロからのスタートのため、需要拡大を見込んでさまざまな業界の思惑がうごめいている。自動車業界の対応には今後も目が離せない。




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