太陽光発電 高圧ミドル市場に、ストリング型パワコンで本格参入

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太陽光発電の住宅(~10kW)、低圧ミドル(10kW~50kW)向けでパワーコンディショナ市場をけん引するオムロンが、満を持して高圧ミドル(50kW~500kW)市場に参入する。これまで住宅、低圧ミドル市場で培ってきたストリング型(分散設置)のノウハウを生かし、高圧ミドル市場においてもストリング型による効率、コストの優位性をアピールし、ミドル市場で足固めを図る。

オムロンの環境事業の中核的な商品であるパワーコンディショナでは、二つの技術が重要となる。一つは、発電設備を電力会社の送電または配電線に接続して安全・安定的な運用を確保するための「系統連系技術」、そして発電効率を最大化するためのパワコンの「電力変換技術」だ。

このうち系統連系技術は、オムロンが1933年の創業以来手がけてきた得意分野。過電流継電器を皮切りに、高圧受電設備の安全を守る保護継電器を数多く創出し、系統連系技術では業界を先導してきた。こうした保護継電器で培ったノウハウの蓄積をベースに1994年、電力変換技術と組み合わせ、太陽光発電向けのパワコン市場へ参入した経緯を持つ。

以降、住宅、低圧ミドル市場に特化してパワコン事業を展開し、太陽光発電の普及を後押し。また、系統連系技術で積み上げたノウハウを活用して開発した多数台連系時単独運転防止技術「AICOT®」は太陽光発電設備の安全確保に大きく貢献。停電発生時に太陽光発電の電力が系統側へ逆流し、停電復旧作業に危険を及ぼすのを防ぐ技術で、太陽光発電の認証機関であるJETの新認証として採用され、オムロンが太陽光発電市場で一気にシェアを伸ばすきっかけともなった。

現在、オムロンは住宅、低圧ミドル市場でパワコントップシェアの地位を築いている。また、大規模な太陽光発電で必須の保護系機器であるOVGR(地絡過電圧継電器)がある。これは、電線が地面と接する地絡が起こったときなどに回線に危険な電圧がかかるのを防ぎ、一方で健全な回路の電気を保護するための機器である。

オムロンは住宅、低圧ミドル市場でトップシェアを築いたパワコン、および長年培ってきた保護系機器商品群の一つであるOVGR、この2つの商品を高圧市場向けに投入する計画だ。

欧米ではストリング型が主流に

オムロン株式会社 環境事業本部 ストラテジックマーケティング部長 立石 泰輔氏
環境事業本部
ストラテジックマーケティング部長
立石 泰輔氏

そのオムロンが、環境事業の柱に位置づけるパワコンで、セントラル型パワコンが主流を占める高圧ミドル市場へ本格参入を狙う。

環境事業本部ストラテジックマーケティング部長の立石泰輔氏は、「太陽光発電の普及で先行している欧米市場を見ると、以前は大容量のセントラル型パワコンを使用するシステムが主流でした。しかし最近は10kW~20kW帯の容量のストリング型(分散設置型)パワコンを利用するシステムが逆転しています。簡単に設置ができて、ランニングも含めたライフサイクルコストでとらえるとメリットが高い点に着目しているからだと考えられます。同じことが日本市場においても今後起こっていくでしょう。国内市場でもアフターメンテナンスが容易なストリング型への関心が高まっています」と理由を説明する。

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