電力自由化・地域エネルギープロジェクト研究員 村井哲之の実践日記

(第19回)木質バイオマス発電とPKS(油ヤシ殻)発電

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電力自由化・地域エネルギー事業プロジェクト研究 第3期研究生の村井 哲之氏が、プロジェクト研究という場を通して「何を学び、何を考え、何を実践し、何を得たか」を書き連ねるスーパーライブコラム。前回は『セレンディピティ』に至るドラマや研究員同士のつながりなどについて語った。今回は、北海道で調査した木質バイオマス発電の現状を中心に、『セレンディピティ』によってもたらされたPKS(油ヤシ殻)発電ビジネスについて紹介する。

昔から、“答えは「現場」にあり”と言います。言うまでもなく、早速、釧路に飛びました。コンソーシアムの理事の中で、最もバイオマス発電に詳しい方からは、以下のようなアドバイスを貰いました。

1. 北海道電力バンク空容量確認

→現地より最寄りの電柱の確認後、北海道電力に事前相談を行う。結果は相談申込書提出の1ヶ月後に出る。この結果次第でプラント出力の初期計画ができる。

2. 現地にてバイオマス発電所の建設の可否判断

→釧路市の各部・課に確認の必要がある。さらに、釧路市から北海道庁への確認作業が必要。早くても1ヶ月はかかる。

3. 燃料ルートの確保交渉

→保有山林については、手入れ依頼をどの業者に依頼するのか確認が必要。その後、地元林業組合及び林業業者との密な打ち合わせが必要となる。また、準備が出来てから1年近くかかり、全くの新規設備の建設と考えると1~2年はかかる。

→上記の期間の確認作業を経て、供給燃料量が見えてくることから、最短でも現在から1年以上調査をしないと、収支を含めた事業化計画は立たない。

4.申請関係

→上記1.~3.の条件が整った後、電力会社への連系申込書及び経済産業省への設備認定申込書の提出を行う。その過程で、上記3.の燃料確保を燃料供給契約書として各々の会社と契約を結ぶ必要がある。林野庁との間でその信憑性をヒアリングとしてもらい判断される。3~6ヶ月程度かかる。

5. 建設までの期間

→上記1.~4.までを加味すると建設開始までは最短でも1年6ヶ月~2年6ヶ月はかかる。また、「建設が可能」と「収益性」は別問題である。木質バイオマス発電は再生可能エネルギー分野で最もハードルが高い。

行ってみると現場は大変でした。釧路空港から10分と書かれていた土地に辿り着くのに何と1時間近くを要しました。このあたりは高圧線銀座で近くに大から小までの変電所も多く、敷地の端には確かに電柱もあり連系そのものは可能なことを確認しました。

改めて翌日は朝一番で釧路市役所に行き、受付で「バイオマス産業都市の件で詳しい話を聞きたく東京から来ました。担当の部署はどこですか?」と要件を告げると市民環境部環境保全課を案内されました。バイオマス産業都市推進課、もしくは、推進準備室なるセクションがあるものと思って勢い込んで乗り込んだので完全に肩透かしです。環境保全課の課長補佐を前に訪問の目的を告げました。ところが、思ってもみない案内をされはした。「それは地元最大の農協がやっているから、農林課(市の産業振興部)を訪ねてください。連絡をしておきますから・・」と言うものでした。

同課の主査を訪ねると、冒頭「実は、元々地元の農協が老朽化した家畜の糞尿を堆肥にする施設(「堆肥化センター」)を建て変える資金を農林水産省から引き出すのに、バイオマス産業都市に指定されていると何かとスムースに手続きが進むからなんですよ」「だから、市の各部署で集まってバイオマス産業都市として国に認可されるよう、産業推進室主導の下で絵を書いたんです」正直驚きました。

さらに、その後の進捗を詳しく聞きバイオマス産業都市建設・推進計画への参入の芽を探すべくヒアリングを進めると「北電に連系申込みをするため、以前バンクの空容量を聞いたが、“ない”と断られた」「ではと言うことで、バイオガスを市の工業団地の食品加工工場にボイラー燃料として売り込みに行ったが、原油価格が大幅に下がっている今、とても買えないと言われてとん挫した」最後は、「何か今の状況を解決できるなら直接農協を訪ねてください。その後は動いていないと思いますよ」あっさりしたものでした。

次ページ →インドネシアでPKS(油ヤシ殻)発電を事業展開

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