環境用語集 植物工場

植物工場とは、「施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設(経産省)」である。

施設内での生産なので、天候に左右されることなく作物を周期的に安定供給でき、農薬を使わなくても病害虫の被害を受けずにすむほか、高齢者や障がい者の方の雇用にもつながるなどの利点がある。

2011年以降は、東日本大震災の被災地を中心に、農業復興を見据えた植物工場ビジネスが盛んになっている。

植物工場には、以下の2種類がある。

完全人工光型植物工場

ドーム型植物工場
グランパのドーム型植物工場
(福島県・南相馬ソーラー・アグリパーク)

閉鎖環境で、太陽光を使わず、蛍光灯やナトリウムランプ、LEDなどの光源を利用し、環境を制御して周年・計画生産を行う。

建設においては、農地法上「農地転用」となる事が現在避けられず、大規模になると建築基準法や消防法などの適用・制約を受け、収量減やコストの追加負担につながる可能性がある。

全国組織として、一般社団法人「生産者のための人工型植物工場協議会」があり、一定基準を満たす植物工場野菜に対して共通ブランドの発行、品質表示の規格化を検討している。


太陽光利用型植物工場

温室等の半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、雨天・曇天時の補光や夏季の高温抑制技術等により周年・計画生産を行う。 (太陽光利用型のうち、特に人工光を利用するものについては「太陽光・人工光併用型」という)

和歌山県、植物工場で野菜のポリフェノールを増加させる技術開発開始

2009年に経済産業省や農林水産省の植物工場向け予算が成立して以来、各種補助金の交付により多数の栽培施設が建設されている。三菱総合研究所の「全国実態調査・優良事例調査報告書」によると、2012年3月末時点での植物工場の数は、完全人工光型が106カ所、太陽光利用型(補光も含む)が104カ所。合計するとその数は200カ所を超え、なおも増え続けている。

参入する企業の業種も様々。植物工場は、設備を購入すればすぐに栽培を始められ、サイズも店舗内に設置できる小型のものから工場レベルのものまで、多岐にわたるためだ。2010年には日本サブウェイが、植物工場を併設した店舗をオープン。居酒屋チェーンを展開するコロワイドも、2012年に店舗向けの野菜を栽培する植物工場を建てた。プラント大手の日揮は、2012年、東北地方の農業分野での震災復興を目指し、植物工場ビジネスに初参入。今後も、様々な企業の参入が見込まれる。

【参考】
植物工場は日本独自技術なのか?(2013/7/29)
日立が植物工場のグランパに出資 ITによる運営サービスで協業(2013/5/9)
NTTファシリティーズ、農業ITと植物工場の共同実証PJを岩手県で実施(2013/3/26)
完全人工光型植物工場市場、2014年は10年比6.3%増に拡大(2011/12/7)

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