東京では現在、各地域で再開発が進められ、次々と新たな大型建築物が建設されている。
建築物からのCO2排出量削減が必要とされている中で、
現代建築物にはさまざまな環境配慮の工夫と最新技術が取り入れられている。
都心に造られた新たなビルから最新の環境技術を探る。
東京の表玄関・丸の内に、地下4階・地上38階・塔屋1階、高さ約198mの威容を誇るランドマーク
「新丸の内ビルディング(新丸ビル)」(東京都千代田区)が、4月27日にグランドオープンした。
2002年に登場した「丸の内ビルディング(丸ビル)」と対をなすその景観は、
一種巨大な“ゲート(門柱)”のような趣さえ漂わせている。
コンセプトデザイナーに、街の歴史と環境の調和に配慮した設計をする建築家として
世界的に高い評価を得ている英国人建築家マイケル・ホプキンス卿を起用したところにも起因するのだろう。
その新丸ビルは、地下1階から地上7階までを商業ゾーン(集客予測:年間2000万人)、
10階から37階までをオフィスゾーンとしてフロアを構成している。
新丸ビルは、最新の建築物ではあるが、館内のシックな色調は由緒あるホテルのロビーのような落ち着いた雰囲気を醸し出し、奇をてらったところがない。同様に環境対策に対するスタンスも、シンプルで堅実なものになっている。
三菱地所では、新丸ビルの計画当初から、環境対策について検証を行っている。理論的に効果が高いといわれる環境対策のシステムであっても、実際どの程度の品質が保証され、効果があるのかなど、細部にわたって検証を進めた。その結果、実現可能性の高いものや、汎用性が見込めるものなどを採用する際の判断材料とした。その集大成として新丸ビルの環境計画につながり、太陽ソーラーパネルの設置などの取り組みに反映されている。
新丸ビルの34階の屋上、丸ビルに向かう南側の日当たりのいい場所に太陽ソーラーパネルがある。面積約170m2、太陽ソーラーパネル約270枚を設置。丸の内の新しいビルの中で、これだけの規模の設置は他にない。
しかし、設置にはいくつかの課題があった。ビルの屋上には、ヘリポートや機械室などがあるため、思ったほどの設置スペースが取れない。そこでゴンドラの格納庫の屋根に太陽ソーラーパネルを設置することにした。
この規模での発電量は18kW/h。これは大体200m2のオフィスフロア照明を賄える電力に相当する。太陽光パネルの性能が向上したとはいえ、思ったほどの効率はのぞめないが、それでも今後、こうした環境設備のメンテナンス、耐久性などを含めて検証していくことも目的として、今回の新丸ビルで採用した。
新丸ビルでの緑化の方針は明快だ。緑化のできる所はできるだけ緑化するというもの。その一つが高層ビルの屋上にある緑化だ。太陽ソーラーパネルが設置してある34階の屋上には、屋上緑化も行われている。しかし、高さ約160mの地点を緑化することは容易ではない。風雨は強く、また剥離してしまうことも想定しなければならない。
そこで約170種の植物をリストアップし、生育性やボリューム感、メンテナンスの手間や耐風性などについて検討し、約20種に絞込み、さらにその中から10種の植物について生育実験や風洞実験を、新丸ビルの施工会社の竹中工務店とともに行った。一方、屋上では土による育成は難しいとの判断から、マットレスのようなものを苗床にして緑化を進めた。それらの実験からタイムやタマリュウなど3〜4種を選定して屋上を緑化した。
商業ゾーンの低層基壇部についても緑化を行っている。ここではオリーブなど、実や花が楽しめる樹木を植栽。東京駅方向からは、6階と7階部の樹木層が目に映ることになる。

34階屋上の緑化。マットレスのようなものを苗床にして育成させていった。

6階・7階部には、オリーブなどの樹木を植栽。
新丸ビルの省エネ対策は、デザイン性と環境配慮がうまく融合されたものになっている。
新丸ビルはガラスの外装と広い開口部のため開放感があるが、そのままでは、太陽光によるビル内への照射量が多くなり、建物内で消費するエネルギーの増加になりかねない。
新丸ビルでは、外装にルーバーを設置。直射光を遮蔽し、程よい照射量に調節している。さらに、エアバリアやペアガラス、太陽の角度によってフィンの角度が変わる太陽光位置追尾型自動制御ブラインドの採用などによる相乗効果で、ビル全体の空調への負荷が軽減している。こうした取り組みで、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)条件のシミュレーションや空調評価のPAL/CECでは、好結果が出ている。こうしたエネルギー削減の取り組みによって、計算上では90年代の一般的な大規模ビルよりも、エネルギー消費量を30%ほど削減できている。

エアバリア方式

打ち水効果が期待されるドライミスト。
三菱地所では、開発の際に環境共生への取り組みを積極的に展開している。特殊技術を活用するのではなく、確実に効果が見込める技術を採用し、試みが少なく、将来的に可能性があるものについては実験的に採用し、実証データを蓄積していくという方針で取り組んでいる。
今後の取り組みについて、三菱地所ビル開発企画部参事の岡田忠夫氏は、「これらの環境の取り組みを今後単に運用するだけでなく、維持管理なども含めて総合的に評価していきたい。その上で、個別の実績やデータを再検討し、フォーマット化して、実現可能性が高いものについては、新建設のビルだけでなく、既存のビルも含めて展開していきたい」と今回の実績を基に応用展開していく意欲を示している。
■新丸の内ビルディング
建築主/三菱地所
所在地/東京都千代田区丸の内1-5-1
設計・監理/三菱地所設計
施 工/竹中工務店
構造形式/地上:鉄骨造、地下:鉄骨鉄筋コンクリート造
規 模/地下4階、地上38階、約198m
敷地面積 約10,000m2
延床面積 約195,000m2(約59,000坪)

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・ビルの省エネ事例(自然換気と氷蓄熱システム)
・ビルの省エネ事例(複合熱源と熱搬送)
・ビルの省エネ事例(高断熱)
※月刊「環境ビジネス」2007年7月号 特別企画「巨大複合施設に見るエコビルの条件」の内容を掲載しています。
掲載内容は、2007年6月時点のものです。
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