オフィスビルのエネルギー消費量は年々増加傾向にあるため、改正省エネ法や地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)によって、建物の環境配慮が推進されている。現代の新築の高層ビルでは、省エネ・CO2削減などの環境配慮の設計は、建物に対する評価にもなると言えるだろう。
秋葉原ダイビルは2005年3月、秋葉原再開発のシンボルとして、「秋葉原クロスフィールド」という産官学一体の都市プロジェクトの中核施設として誕生した。地下2階・地上31階塔屋1階の超高層ビルには、こうした時代のニーズに即した建築設計を見ることができる。
計画・設計を担当した鹿島 建築設計本部は、同ビルが冷房によるエネルギー負荷の大きいビルであることから、空調設備や冷凍機、熱媒搬送システムなどの省エネを図ることにした。
熱源の負荷平準化と二次側熱媒搬送の大温度差化による省エネルギー、電気・ガス併用熱源の効率的運用などの成果が評価され、同ビルはこの5月、第21回「空気調和・衛生工学会技術振興賞」を受賞している。

外装ガラスにはLow-eペアガラスを採用。日射熱取得量の軽減を図っている。
秋葉原ダイビルの熱源計画の目玉は、電気(ターボ冷凍機)とガス(ガス焚吸収冷温水機)の複合熱源を採用し、さらに氷蓄熱を併用したところにある。熱源システム構成の工夫と熱源群管理制御の構築によって、負荷に応じた運用方法を自動化する。
例えば、電気料金が高い夏季は氷蓄熱とガスで、ガス料金が高い冬季や中間期には電気というように、熱源機器の運転比率が変わる。これにより電力の平準化、低負荷時での熱源機器の効率的運用とLCC(ライフサイクルコスト)の低減が可能となった。
設備設計統括グループの平岡雅哉グループリーダーは、「冷凍機の容量を増やすことはできないので、熱交換機を並列にするか直列にするかといった問題を含め、要は熱源をいかに組み合わせるかが課題だった」と話す。
また、熱媒搬送での省エネにも着目。空調用では冷凍機やボイラに匹敵するほどのエネルギーが、ファンやポンプなどの搬送動力として消費されるからだ。通常は10度に設定される冷(温)水の還り温度を15度に引き上げた。供給温度(5度)との温度差を大きくしたことで、従来に比べ15%程度のエネルギー削減につながった。
「温度差は大きければ大きいほど、動力は少なくすむ。夏場だけてなく、1年を通じてある程度の温度差を確保できるようになったのが大きい」(平岡氏)。

高効率インバーター型蛍光灯を設置し、照度センサーによって自動調光を行っている。
ビルのエネルギー消費量は、単位面積あたりの年間一次エネルギー消費量で表す。秋葉原ダイビルが竣工してから約2年。05年6月から06年5月までの1年間のエネルギー消費実績は1,971MJ/(m2・年)で、一般的なオフィスビルの平均値(2,169MJ)より9%少ない(図1)。
数字上はわずかに思えるが、秋葉原ダイビルにIT関連企業のテナントが多いこと、超高層ビルは3,000が平均値であることなどを加味すると、かなり高レベルで省エネが達成できているといえよう。

秋葉原ダイビルの年間一次エネルギー消費量と消費別比率
では、CO2排出量はどうか。平岡氏の試算によると、05年度の実績値は77.75s-CO2/m2・年で、業務ビルの排出量統計値98.6s-CO2より21%も低い。秋葉原ダイビルは、省エネ・CO2削減という2つの課題をクリアしたのである。
ビルの環境設計は、新築時点の省エネルギー対策に留まらず、建設後の運用段階での省エネまでを視野に入れたものでなければならない。秋葉原ダイビルを設計・施工した鹿島は、10年前から、こうした“エネルギーマネジメント”の必要性に着目し、顧客に対するエネルギー管理システム(BEMS)を提案してきた。そうしたノウハウと実績の積み重ねが、秋葉原ダイビルに結集されている。
「費用対効果というとき、かつては何年で建設費の元がとれるかというコスト計算に終始した。最近は省エネやCO2削減対策で顧客を説得できる状況になりつつある」(平岡氏)。コストベストからエネルギーベストの発想へ。平岡氏は、発注者の意識変化も見逃せないと指摘する。

統計データは(社)日本ビルエネルギー総合管理技術協会
平成16年度版 建築物エネルギー消費量調査報告書
■秋葉原ダイビル
建築主/ダイビル
所在地/東京都千代田区外神田1-18-13
設 計/KAJIMA DESIGN
監 理/日建設計
施 工/鹿島・大林組JV
構 造/地上部:制振装置付き鉄骨造、地下部:鉄骨鉄筋コンクリート造
規 模/地上31階・地下2階
延床面積/50,289.59m2 (15,212.60坪)

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※月刊「環境ビジネス」2007年7月号 特別企画「巨大複合施設に見るエコビルの条件」の内容を掲載しています。
掲載内容は、2007年6月時点のものです。
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