ビルの省エネ診断:ユカインダストリーズ

東京都地球温暖化対策推進センター(クール・ネット東京)の省エネ診断
電気使用量削減で年間200万円のコスト削減見込み

面積2倍の新本社の電気使用量が3倍に

ユカインダストリーズ(東京都大田区)は、終戦直後の1947年に調達が困難だった絶縁油の再生処理事業に着目して創業。現在は絶縁油の分析による油入変圧器の異常診断・劣化度診断をはじめ、多角化のため、2004年から始めた半導体分野の分析業務など特殊分析を手掛ける。

2006年11月に品川区二葉から大田区千鳥に本社を移転。本社屋として購入した中古のオフィスビルは2倍の面積だったが、使用電力量は3倍弱に増え、省エネによるコスト削減が喫緊の課題となった。また、「弊社は中小企業ですが、顧客は一部上場の企業が多く、この1、2年で顧客から環境対策や省エネについてのアンケート調査が非常に多くなってきている。具体的な対策について問われ、実施していないと取引の優先順位が落ちるとも言われる」と同社総務部長の高橋凡徹氏は語る。

省エネに関わる社内の担当者

省エネに関わる社内の担当者。左から総務部課長佐藤英明氏、同部長高橋凡徹氏、同課長西條允氏、分析・診断部第一課課長芳野健司氏。
芳野氏は、社内で最も電気を使用する部門の省エネ指導者。総務部以外で中心的な役割を担ってくれる人がいると周囲に与える影響が大きいという。
背景に写っているのが遮熱・断熱効果があるコーティングを施した窓ガラス。


環境や省エネへの取り組みを社外に明確にアピールする目的もあり、同社は2008年2月に環境方針を策定。最初のステップとして、夏場に向け省エネを強化していこうという目標を掲げた。



夏場の最大電力を抑え、約40万円削減

移転直後から、不要な照明の消灯や管球の間引きなどを実施していたが、ピーク時の電力使用量で決定される電力料金の仕組みを把握し、昨夏は最大電力を落とすことに努めた。8月は総務部の担当者3人が交替で1時間おきに屋上の電気料金のメータを測定に行き、最大電力が高くなりそうなときは、社内を回って電力使用量を落とすように指示。「その効果は大きく、164kWだった最大電力を140kWに抑えることができた。40万円位の削減効果があった」と高橋氏。

7月末に環境セミナーに参加したときに、クール・ネット東京の無料省エネ診断を知り、さらに効果的な方法を求めて申し込みをし、9月に無料診断を受けた。

照度計を使って蛍光灯を間引いた照明

照度計を使って蛍光灯を間引いた照明。12月初めに再度訪れたクール・ネット東京の技術専門員もその徹底ぶりに驚いたという。




無料でできることは即実行

東京都の診断で提案されたのは16項目。オフィスではもったいないのでトイレのエアータオルの使用禁止、冬期以外給湯器の使用停止、全熱交換器の外気取入れを「強」から「弱」へ、など無料でできるものは即実行した。管球の間引きは各部門の判断に任せ50本程行っていたが、東京都のアドバイスは「照度計を使って照度に合わせて間引きする」というものだった。さっそく7,000円程度の照度計を購入し、事務所に必要な700ルクスを目安にさらに100本程間引きした。クール・ネット東京の技術専門員は、これらの省エネ対策により、年間60万円の削減効果があると試算する。

エアコンの管理状況
エアコンは予備もあるため、両方を稼働させないように曜日で分けて使用日を明記。また、クール・ネット東京の改善提案を受け、空調機は冷暖房運転の30分後に運転を行うようにした。全熱交換器の外気取入量は、竣工時のままの「強」になっていたので、室内環境状況(CO2濃度、粉塵やアルデヒドの量)を測定し「弱」に変更。機能を把握せず、そのまま使用していた機器の設定を変更するだけで省エネにつながるものもある。



窓のコーティングやインバータへの投資も1年半以内に回収見込み

イニシャルコストがかかるものは、参考として提案を受けた。西日が強い3階と4階は、窓ガラスに遮熱・断熱フィルムをつけると夏期は涼しく、冬期も暖気を逃がさないと言われた。現状夏25℃、冬22℃となっているエアコンの設定温度を2℃調整するために、社内の環境づくりとして必要だと判断し、すぐに業者に相談。窓ガラスに金具が入っているため、フィルムだと溶けてしまうので、コーティングがいいといわれ、11月初めに100万円をかけて工事を行った。冷暖房コストの削減効果で1年半以内にコストを回収できると見込む。

また、分析室の排気のために屋上に設置しているスクラバー装置について、モータは30〜40%の出力で使用し取り込む風量を制御していたが、回転数を制御していなかったため、無駄な電力使用があるという指摘を受けた。アドバイスをもとに約30万円のインバータを購入し、モータに取り付けた。「効果は12月にすぐに表れ、モータの回転数を定格の60%に下げることができた。使用電気量も大幅に減らせるのではないか。クール・ネット東京が試算する以上の効果で、1年以内で投資が回収できると思う」と同社分析・診断部課長芳野健司氏。

トイレの水洗の自動化や蛍光灯の省エネタイプへの変更など、その他コストがかかるものは、機器の交換・改修時期に更新していく予定だ。

スクラバー装置
屋上に設置された分析室の排気用のスクラバー装置。スクラバー装置のモータにインバータを設置し(右写真・右下)、回転を制御。



次の展開としてグリーン購入を検討

夏期の最大電力の削減など自主的な取り組みにより、2008年4月から11月までの電気使用量は前年比88.8%で、同社では削減効果は122万円と試算する。11〜12月に実施したクール・ネット東京の改善提案に基づく取り組みで年間60万、さらに数値では算出されていないスクラバー装置へのインバータ導入や窓ガラスのコーティング効果で、「削減効果の合計は年間200万円を超えるのではないか。最大電力も130kWまで下げられるかもしれない」と高橋氏は期待する。省エネ無料診断を受けたことで、省エネへの取り組みが社員に対しての説得力を持ち、協力を求めやすくなったという。

これまでの環境対策は、電気使用量の削減による省エネが中心だったが、今後はグリーン購入など購買活動も含めて考えていきたいという。


■ビルの省エネ診断

・ビルの省エネ診断(ユカインダストリーズ)
ビルの省エネ診断(ドトール日本橋浜町店)
ビルの省エネ診断(吉野家)

※月刊「環境ビジネス」2009年3月号 大特集「省エネ対策」の内容を掲載しています。 掲載内容は、2009年2月時点のものです。