※月刊「環境ビジネス」2006年12月号 特別企画「検証!ビル・工場の省エネツール」の内容を掲載しています。
掲載内容は、2006年11月時点のものです。
顧客に快適な空間を提供するために毎日大量のエネルギーが消費されている商業施設。顧客満足度を低減せずに、いかにエネルギー消費量の削減を図ることができるか。省エネ機器を導入し、取り組みを始めた地下商店街もある。
CO2削減が緊要な課題とされる中、新築・既存を問わずオフィスビルと同様に省エネによるCO2削減が求められているのが商業施設だ。
神奈川・川崎の地下商店街「アゼリア」は2005年8月、省エネ型の空調設備「水和物スラリ蓄熱空調システム」を導入することを決定した。大規模商業施設で消費するエネルギー量を抑制し、CO2排出量の低減に努めている。
アゼリアの延床面積は約5万6000m2(150店舗)、1日の通行者は約30万人、全国で3番目に大きい商店街だ。規模の大きさとともにエネルギー消費量も多かったアゼリアでは、2005年度から3カ年計画で、「水和物スラリ蓄熱空調システム」を始めとした省エネシステムの導入を進めている。
同空調システムでは、従来の蓄熱システムで冷媒として使用していた水の代わりに使用しているのが水和物スラリ。水和物スラリとは、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロマイド)という物質を溶解した水溶液が冷却することによって作られる、水和物と水溶液の混合流体。水の2〜3倍の冷熱量を持ち、空調配管や熱交換器に直接流すことができる。

延床面積約5万6000m2、1日の通行者は約30万人、全国で3番目に大きい商店街「アゼリア」。施設規模が大きくなれば、消費エネルギー量も大きくなる。

川崎地下街 常務 福井靖邦氏(写真左)、施設・駐車場担当部長 小野辰夫氏
同空調システムは、JFEエンジニアリングとNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が共同開発した。JFEエンジニアリングでは、アゼリアが同空調システムなどの省エネ対策設備を導入することによって、以下の効果が見込めるとしている。
@既設の水蓄熱槽を水和物スラリ蓄熱槽に変更することで、水に比べて約2倍の増蓄熱を実現、大幅に熱源動力を削減する。
A冬季の低温外気を空調熱源に利用する「フリークーリング」を併用できる。
B熱源機(吸収式冷温水発生器)に、高効率機器(COP:1.3以上)を導入することで燃料消費を削減する。
C空調機・換気ファンに対するインバーター制御の導入によって、ファン動力を低減する。
D中央監視システムに「BEMS」(ビルエネルギーマネジメントシステム)」を導入。施設全体のエネルギー管理を徹底する。
アゼリアでは、こうしたシステムの整備によって地下街全体で削減できるCO2排出量は年間1090t、光熱費では年間約2700万円が削減できるとの試算を出している。
アゼリアでは、水和物スラリ蓄熱空調システムなどの整備によって、年間約2700万円の光熱費が削減できるとの試算を出している。
アゼリアがこうした省エネ対策を進める背景には、街全体で取り組むCO2削減活動がある。
川崎市では2004年、「地球温暖化対策地域推進計画」を改定。その一環である「かわさき都心部循環型まちづくりモデル事業」は、環境省が推進する「環境と経済の好循環のまちモデル事業」に採択された。
アゼリアの省エネシステム導入の取り組みは、「かわさき都心部循環型まちづくり協議会」が事業主体となり、地域の省エネ推進策の一環として進められている。
同事業では、省エネシステム導入などに6億5000万円、省エネ推進の啓発活動などに1750万円が予定されている。そのうち省エネ機器整備については約3億9000万円、啓発活動については委託事業として全額が環境省から補助される予定だ。
大規模商店街に先進的な省エネシステムを導入した理由について、アゼリアの福井靖邦常務は、街ぐるみのCO2削減の取り組みに、川崎を代表する商店街として率先して取り組む必要性を指摘する。
「当社は建設20年になり、冷暖房設備の老朽化はあるが、設備の更新契約まで5年残っており、まだ使える状況ではあった。しかし現在、CO2削減は重要事項となっており、とりわけ当社の地下街は、川崎の玄関口でもあり、CO2削減には全面的に協力すべきと判断した。水和物スラリ蓄熱空調システムは、CO2排出量の大幅削減が図れること、環境省からの補助金もあることなどを考慮し、更新計画を前倒しにして導入を決定した」。
省エネシステム導入事業の3カ年計画をみると、05年度に高効率熱源機類の大型機器の設計・製作工事、06年度に水和物スラリ蓄熱槽工事、空調機・換気設備のインバーター化工事、最終年度の07年度に水和物スラリシステム工事、熱源機械改修工事、中央監視システム改造工事、総合試運転となっており、長期にわたる省エネシステム導入工事が予定されている。
導入の進捗状況について施設・駐車場担当部長の小野辰夫氏は、「大型省エネ機器への入れ替え・据え付けだけでなく、運転管理システムを高効率的なものに切り替えていく。蓄熱槽の作り変え作業は70%ほどが済み、設備機器については、11月下旬を目途に1台を据え付ける予定」と話す。
福井常務は、「当社は第三セクターで県と市の出資を受けており、利益追求だけではなく公共性を重要視している。当社の地下街に省エネ機器を導入しCO2の大幅削減を実証できれば、他の地下街のモデルケースにもなり得るのではないか」と取り組みの意義を指摘する。
地下商店街の省エネ化の取り組みは、太陽光発電や風力発電のように目立つものでなく、むしろ顧客が気付かない中で行われているが、アゼリアで省エネ効果が実証されれば、他の施設でも省エネの取り組みが進められることが期待されている。
・ビル・工場の省エネツール(建物の環境配慮)
・ビル・工場の省エネツール(中部電力/部分更新対応型ビル管理システム)
・ビル・工場の省エネツール(三菱電機/設備用ロスナイ床置形)
・ビル・工場の省エネツール(アゼリア/水和物スラリ蓄熱空調システム)
・ビル・工場の省エネツール(日清製粉グループ/ニューマエコ)
・改正省エネ法とは
・行政情報/改正省エネ法
・東京都環境確保条例のポイント
・省エネ関連事業の補助金
・省エネ関連事業の融資
・LED照明の補助金
・LED照明 メーカー一覧
・エコキュートとは
・エコキュートの補助金
すぐ効く運用改善と補助金活用法
「改正省エネ法対策」
補助金活用事例
選ばれる補助金事業申請のポイント
「見える化」の進め方
7月31日の提出期限間近
「エネルギー使用量届出書の書き方」
78店舗の電力使用量を見える化 運用改善だけで2年で4800万円を削減
性能、パフォーマンス急上昇で新時代
「LED照明の使い方」
最新!省エネ照明活用法
高効率照明の選び方
LED関連補助金一覧