驚異の省エネ事例!オール電化工場 CO2 99%削減

従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される

エネルギーのうち、有効な仕事として使えるエネルギーを「エクセルギー」と呼ぶが、燃料を熱に変える従来のやり方ではこのエクセルギー損失が大きく、場合によっては燃料が持つポテンシャルの半分も活用されていないという。 東京大学生産技術研究所で、燃焼時にできるかぎりエネルギーの有効活用を図る「超燃焼技術」を研究している堤敦司氏に、現在の工場におけるエネルギー使用の問題点を聞いた。

堤敦司氏

東京大学生産技術研究所 教授
エネルギー工学連携研究センター長 堤敦司氏


50%以上のエクセルギーを蒸気タービンは捨てている

―エネルギーを有効に活用するためには、どうしたらいいのでしょうか。

エネルギー保存の法則により、エネルギーは理論上、使っても使っても減らないはずです。 しかし、私たちはたくさん化石エネルギーを消費している。 それは、有効な仕事として使えるエネルギー= 「エクセルギー」をムダに消費して、最終的にはエクセルギー率の低い熱に変えているからで す。そうするともう何にも使えない。

あるものからどのくらいのエクセルギーが取り出せるかという指標をエクセルギー率というのですが、熱エネルギーだけがその割合がものすごく低いんです。 電気エネルギーのエクセルギー率は100%、化石エネルギーは90%以上なのに対し、熱エネルギーは100℃くらいで10%前後、1000℃くらいでも50%でしかありません。

蒸気タービンの性能のいいものは最大で600℃程度まで加熱できますが、その温度での熱エネルギーでも44%しかエクセルギー率がないんです。 この場合は、90%以上のエクセルギー率を持つ燃料を44%までしか有効活用できておらず、50%以上のエクセルギーが失われているのです。 燃料や電気を直接熱に変えると、ロスがどうしても発生してしまう。



技術開発の進展で大幅省エネが可能になった

電気ヒーターとヒートポンプ

ヒートポンプ、IH工場導入事例


―では、少しの電気エネルギーで何倍もの熱エネルギーを取り出せるヒートポンプはどんな点で効率的なのでしょうか。

エクセルギー率100%の電気で約40℃のお風呂を沸かしたとします。 40℃はエクセルギー率が3%くらいですので97%のエクセルギーが失われていることになります。 しかしここにヒートポンプを導入すると、変わってきます。 エクセルギー率0%の環境熱を持ち上げるには、理論的には3%の仕事を加えてあげればいい。 ここで電気エネルギーは熱を生みだしているのではなく、環境熱を持ち上げるのに必要な仕事をしているだけです。 非常に効率的です。

エネルギーの賢い使い方はエクセルギー損失がミニマムになるようにすることです。 エネルギー資源の枯渇が深刻になっている今、どんどん燃料を燃焼させて無駄にエネルギーを使い捨てているのでは限界が訪れます。 それなりの装置を入れれば大幅な省エネができるんです。 技術開発も進んできましたので、数年でペイする段階にきていると思います。


―政府も、省エネ・CO2削減の観点から、さまざまな補助金を用意しています。 また、日本エレクトロヒートセンターでは、ヒートポンプなどの産業分野における高効率な加熱・冷却システム導入の支援を行っていますから、普及に向けた条件が整ってきていますね。

将来的には、ヒートポンプからもっと進んで、低温となった熱エネルギーを断熱圧縮で高温にグレードアップし、またそれを同じ過程の加熱に使うことで熱を何回もリサイクルして使うという技術「ヒートサーキュレーター」が有効でしょう。 ただし現在、熱エネルギーをグレードアップできる高温のコンプレッサーはありません。 ですから開発する必要がありますね。 工場への導入はそれからになります。

―熱を加え続けるというのではなく、一度加えたらそれを使い続けていくというやり方ですね。 まさに工場の未来形かもしれませんね。


工場・生産プロセスの電化で大幅CO2削減を実現した事例

電化ファクトリー目次
・従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される
ビールの発酵熱を回収して年間400トンのCO2を削減/サッポロビール
1分以内に600℃まで急速加熱 厚板の高品質化と省エネルギーを両立する誘導加熱設備/JFEスチール
電線のサイズアップで送電ロスが半減/日本電線工業会
ヒートポンプで実現 15トンボイラ1基分の蒸気レス化/日野自動車
パスタ製造工程のオール電化でCO2 99%削減を達成/フクヤマパスタージャ
気化式加湿器導入で不良品率3%未満を目指す/市光工業
水熱源・空気熱源のヒートポンプ併用で生産工程導入が可能に/加ト吉


※月刊「環境ビジネス」2009年8月号 巻頭特集「電化ファクトリー」の内容を掲載しています。 掲載内容は、2009年6月時点のものです。