ビールは原料からエキスを抽出し、発酵させてできあがるまでに1ヵ月以上を要し、その間大きなエネルギーが使われている。 サッポロビールでは高効率ボイラやコジェネレーション設備の導入、液体燃料からガス燃料への燃料転換などを積極的に行い、1990年比59.7%のCO2排出量削減を達成。 さらに2009年からは新九州工場に水熱源のヒートポンプを導入し、さらなるCO2削減に挑んでいる。
工場のさらなる環境負荷低減の取り組みの一環としてヒートポンプ導入を検討していたサッポロビール新九州工場ではまず、安定して得られる熱源を探すことから始めた。 そこで見つけたのがビール発酵にともなう発酵熱であった。 同社生産技術本部エンジニアリング部課長代理の嶋津直樹氏は、「それまで、生じた発酵熱は冷凍機で作った冷水で冷却していました。 冷凍機にかかる電力は夏場で工場全体の約3割、冬場では約2割を占め、大きなエネルギー消費量となっております。 そこで、これまで“冷やさなければならない”という考え方だったところを、逆に発生した熱を“回収する”という形で熱源に利用できないかと考えたのです」と導入のきっかけを話す。
ヒートポンプで発生した温水はビール生産設備の洗浄や殺菌に利用している
ヒートポンプ導入には熱源と同時に、回収した熱を活用できる場所も必要だ。 嶋津氏はそれを、工場内のタンクやパッケージング設備などの洗浄・殺菌用の給湯とした。 同社では水を熱源とし、温水と冷水が同時に生み出せるタイプのヒートポンプを4台導入。
このヒートポンプはサッポロビール新九州工場内の給湯設備の30%、冷却負荷の15%を担っている。 工場内の給湯設備、発酵熱冷却過程のすべてをまかなっているわけではないが「生産状況に合わせて調整できるようにしている」と嶋津氏。ヒートポンプだけにしてしまうと、回収される温熱と必要な給湯量とのバランスが取れず、ムダが生じてしまう。
サッポロビール新九州工場には4台のヒートポンプを導入。これにより、工場全体の排出量の約3%にあたる400トンのCO2が削減できる
現在はボイラなどに燃料を投入して温水を作り出す「通常給湯量」が40%、工場内の排熱を回収して加熱に利用する「排熱回収湯量」が30%、ヒートポンプから生みだされる湯量が30%となっている。 一方、冷却工程では冷凍機の使用が85%、ヒートポンプの使用が15%だ。 これは、給湯でのヒートポンプの使用割合を主体に考え、燃料の使用量をなるべく削減していくためだという。

ヒートポンプ導入後実績
「蒸気による給湯では入力したエネルギーに対して取り出すことができるエネルギーは必ず低くなります。 一方、ヒートポンプでは入力した電気エネルギーに対して、その何倍ものエネルギーを活用することができます。 そのため環境負荷を低減させるには燃料を削減する方が、冷凍機のヒートポンプ比率を大きくして電力を削減するより効果が高いと判断しています。 今後も給湯におけるヒートポンプの割合を増やし、蒸気給湯を減らしていきたいですね」と嶋津氏はその意図を話す。
工場導入システムフロー
サッポロビール新九州工場では、ヒートポンプの導入により年間約400トンのCO2排出量削減を見込んでいる。
・電化ファクトリー目次
・従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される
・ビールの発酵熱を回収して年間400トンのCO2を削減/サッポロビール
・1分以内に600℃まで急速加熱 厚板の高品質化と省エネルギーを両立する誘導加熱設備/JFEスチール
・電線のサイズアップで送電ロスが半減/日本電線工業会
・ヒートポンプで実現 15トンボイラ1基分の蒸気レス化/日野自動車
・パスタ製造工程のオール電化でCO2 99%削減を達成/フクヤマパスタージャ
・気化式加湿器導入で不良品率3%未満を目指す/市光工業
・水熱源・空気熱源のヒートポンプ併用で生産工程導入が可能に/加ト吉
※月刊「環境ビジネス」2009年8月号 巻頭特集「電化ファクトリー」の内容を掲載しています。 掲載内容は、2009年6月時点のものです。
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