日野自動車羽村工場では2008年に水性塗装工場の移設・リニューアルを行い、それに合わせて空調用にヒートポンプを導入している。 さらに2009年、塗装工場があった場所に新しい車体・組み立てラインを引き、そこの一部にもヒートポンプを6台設置した。 これは、ロスの多い「蒸気」を使わずに、エネルギーを効率的に使い、コストとCO2を削減する「蒸気レス化」の一環として行っている。
近年の重油価格の高騰、政府の工場に対するCO2削減の要請などに対応するため、日野自動車羽村工場では、「蒸気レス化」に取り組んでいる。 そのきっかけは2003年に重油単価が99年比で約2倍となったことだった。 「価格の高騰を知った役員からも、“なぜ効率の悪い蒸気を使っているのか”“蒸気以外のエネルギーを使う方法はないのか”といった意見が出てきました。 私も、重油価格の先を見越してエネルギー転換をしていく必要があると考えていました」と日野自動車羽村工場施設管理課・課長の大竹光一氏は話す。
「蒸気レス化」に向けてまず大竹氏が行ったのは蒸気の“見える化”だった。 蒸気はボイラから送気配管で工場内のさまざまな建物に運ばれ、暖房や洗浄槽の加温などに使用されている。 そのどこにロスがあるのか、敷地面積70万m2以上の工場内に張り巡らされた配管などに計測器を設置し、調査を実施。 その結果、ボイラで作ったエネルギーの26.6%しか有効に使われていないことが分かった。
そこで同工場では4トントラック20台分の不要になった送気配管の撤去、保温材の取れた配管の修理などを行い、さらに水性塗装工場の移設とリニューアルに合わせて蒸気を使って行っていた空調にヒートポンプ15台を導入した。 これにより蒸気の使用量を年間63トンから29トンに、CO2排出量を年間7277トン、エネルギーコストを年間約1.1億円削減した。
特に「15トンボイラ1基分の働きをしているヒートポンプは冷暖房の切り替えも簡単で、細かな温度のコントロールも可能です」と話すのは施設管理課の中塚崇之氏。 今では工場全体の冷暖房で排出される年間1万4800トンのCO2のうち、新塗装工場では500トンのCO2を削減している。
現在は塗装工場移設後のスペースに新しいラインを作り、その一部の空調用にヒートポンプを導入。 今後も日野自動車羽村工場では電化を進め、ユニットファンやストリップヒーターにヒートポンプを、洗浄水槽加温用にエコキュートの導入を検討しているという。
「電化などで工場中の蒸気をどんどん減らしていきたいですね。長い配管で蒸気を送るのはロスですから、小さいボイラを部分的に導入して、必要な時に必要なだけ、効率的に使えるような仕組みを作っていきたい」(大竹氏)
蒸気の量の“見える化”に一役買う、工場内の配管に設置された青い計測器
新塗装工場に導入された15台のヒートポンプは、15トンボイラ1基分の働きをしている
エネルギーセンターでは、工場内の蒸気の制御を行っている。
工場内の蒸気の様子が一目で分かるモニター画面
・電化ファクトリー目次
・従来の蒸気タービン方式ではエネルギーが無駄に消費される
・ビールの発酵熱を回収して年間400トンのCO2を削減/サッポロビール
・1分以内に600℃まで急速加熱 厚板の高品質化と省エネルギーを両立する誘導加熱設備/JFEスチール
・電線のサイズアップで送電ロスが半減/日本電線工業会
・ヒートポンプで実現 15トンボイラ1基分の蒸気レス化/日野自動車
・パスタ製造工程のオール電化でCO2 99%削減を達成/フクヤマパスタージャ
・気化式加湿器導入で不良品率3%未満を目指す/市光工業
・水熱源・空気熱源のヒートポンプ併用で生産工程導入が可能に/加ト吉
※月刊「環境ビジネス」2009年8月号 巻頭特集「電化ファクトリー」の内容を掲載しています。 掲載内容は、2009年6月時点のものです。
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