月刊「環境ビジネス」2009年7月号 カリフォルニア発 循環型革命
日本の4倍強!世界最大の廃棄物から生まれる循環型ビジネス
カリフォルニアスタンダード

アメリカの一人当たりのゴミ排出量は日本の1.8倍。人口は2.3倍だから4倍強のゴミを排出している。分別や焼却・減容は一般的でなく、なんでも埋め立てが基本だ。しかし、いかに広いアメリカといえども、地域住民の反対などで埋立処分場の確保に苦労するようになってきた。人口増が著しいカリフォルニア州では先進的な廃棄物削減策を打ち出している。これを受けてカリフォルニアのリサイクル産業は急成長、ハリウッド産業に迫る勢いを見せているという。
電子機器リサイクルで急成長 アメリカ・リサイクル業界の星ERI
国際資源循環前提にIT管理
ドットコムバブル崩壊後に急成長
ERI=エレクトロニクス・リサイクル・インターナショナルのジョン・シェゲリアンといえば、知る人ぞ知るカリスマ的なベンチャー企業家の一人だ。ERIはカリフォルニア最大のE-ウェイスト(電子機器廃棄物)のリサイクラーだ。ERIは2002年に設立されたベンチャー企業で、毎月およそ100万ポンド(454トン)を処理するアメリカ最大の電子機器リサイクラーだ。カリフォルニア環境保護局(EPA)や汚染物質管理局の認可を受けたトレーサビリティ・システムによって適正処理・リサイクルを推進する。海外に輸出される場合も、トレーサブル(追跡可能)な管理をしていることが最大の強みといっていい。アメリカからはもっとも多くの再生資源が中国や東南アジアに渡っているからだ。
アメリカには日本のマニフェスト制度に相当する制度はないが、国際資源循環におけるトレーサビリティではERIが一歩リードしているといえそうだ。
複数の著名投資家らがバックアップ
ERIには、実績のある経営者や著名なクリーンテック投資家が役員として名を連ねる。へダン・アンジェフはシカゴやロンドン、ホノルルに拠点をもつ貿易投資会社の社長、キース・ブロンステインは放射性廃棄物や有害廃棄物の処理でNASDAQに上場しているアメリカン・エコロジー・コーポレーション役員、マシュー・マクゴバンはクリーンテクノロジーの投資家、財政アドバイザー、アレクサンダー・リュクダシェルはベンチャー・キャピタリストである。
錚々たるメンバーを後ろ盾にもつERIのCEOジョン・シェゲリアンはいま、アメリカでもっとも注目される社会起業家の一人と目されている。
元服役者、知的障害者を積極雇用
ERIが注目されるもうひとつの理由が就職困難な人々、すなわち元服役者や薬物依存症の人、知的障害者などを積極雇用している点だ。産業空洞化で、ブルーワーカーの雇用機会が減少しているうえ、所得格差の大きいアメリカでは、安定した雇用機会に恵まれず、保険に入れないマイノリティや貧困層の医療費や、さらに犯罪に走ってしまった人たちの刑務所の運営費など、社会的コスト負担の増加が問題になっているという。
廃棄になる電子機器は増加傾向が見込まれるため、ERIの電子機器リサイクルは雇用問題に解決をもたらす画期的なビジネスと目されている。
巧みなメディア戦略
ERIは定期的に廃電子機器の回収イベントを実施し、ユーザーから直接品物を集める。会場に品物を持ち込んだユーザーには「Green is Good」とプリントされた緑のTシャツがプレゼントされる。
広大なアメリカでは、回収の物流コストをいかにして抑えるかが重要な課題。それだけに、一般市民の持込みはありがたいはずだ。また、自らリサイクルに参加することで、ユーザーの環境意識の向上効果は大きい。
さらに、CEOのシェゲリアンは「Green is Good」というラジオ番組にもレギュラー出演し、メディアを通じたコミュニケーションにも積極的だ。
廃棄物処理業者の枠を超えたERIは今後ますます注目度が高まりそうだ。