温暖化ガス排出量総量規制/東京都

CO2削減を「義務化」する新たな条例が東京都でスタート
「東京都環境確保条例」とは

2010年4月に施行された、東京都の改正環境確保条例。CO2削減を目指すための規制としては、国が実施する改正省エネ法と方針は同じだが、その内容はより厳しい。対象となるのは、改正省エネ法での「事業者(企業)」単位とは違い、「事業所」ごととなる。年間エネルギー使用量が1,500kL以上であれば、CO2削減義務が課せられる。CO2削減の方法としては、省エネや創エネなどの設備導入のほか、排出量取引の活用も認めらている。

環境確保条例は、「削減義務」を課すものであり、目標数値を必ずクリアする必要がある。削減義務を達成せず、排出枠の調達も行わない場合は、義務履行の命令とともに、3割の追加削減義務が生じる。それでも守られない場合は、50万円の罰金や違反事実の公表など、厳しい罰則が設けられている。

上記のような罰則を設定する一方、CO2削減対策に積極的な事業所に対しては、優遇策も設けている。トップレベル事業所や準トップレベル事業所に認定されれば、削減義務率は1/2又は3/4に軽減される。

同条例の対象となるのは、産業部門で300ヵ所、業務部門で1,100ヵ所程度と言われている。該当する事業所は、省エネ対策に追われることになりそうだ。


東京都環境確保条例の重要ポイント

指定事業所と特定事業所

CO2排出削減等の義務が発生するのは、年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上の事業所。その中でも更に、「指定地球温暖化対策事業所」(指定事業所)と「特定地球温暖化対策事業所」(特定事業所)の2種類に分類される。

指定事業所
エネルギー使用量が年間1,500kL以上の事業所。CO2削減のための計画書提出等が義務付けられる。
特定事業所
3ヵ年度連続してエネルギー使用量が年間1,500kL以上の事業所。指定事業所としての義務に加え、CO2排出総量の削減義務が生じる。

現行の「地球温暖化対策計画書制度」の対象になっている事業所の場合、2006〜2008年度までの3か年度で連続してエネルギー使用量が1,500kL/年 以上であれば、2010年度からは特定事業所に指定されることになる。



オフィスビルは8%、事業所は6%、第二計画期間では各17%程度の削減義務率設定

第一計画期間(2010〜2014)、第二計画期間(2015〜2019)のそれぞれに、削減義務率を設定。

区分 対象施設 第一計画期間削減率 第二計画期間削減率
2010〜14年度 2015〜19年度
T-1 オフィスビル等(※1)と地域冷暖房施設 8% 17%程度(※4)
T-2 オフィスビル等のうち、地域冷暖房多く利用している(※2)事業所 6% 17%程度
U 産業部門に該当する工場等(※3) 6% 17%程度

(注)
※1 オフィスビル、官公庁庁舎、商業施設、宿泊施設、教育施設、医療施設等
※2 事業所の全エネルギー使用量に占める地域冷暖房から供給されるエネルギーの割合が20%以上
※3 区分T-1、区分T-2以外の事業所(工場、上下水施設、廃棄物処理施設等)
※4 見通しの平均値。基準年度比の数値で、第2計画期間開始前に決定



トップレベル事業所、準トップレベル事業所認定制度

・「知事が定める基準」(09年度中公表予定)に基づき、「地球温暖化の対策の推進の程度が特に優れた事業所」を2段階(トップレベル、準トップレベル)で認定
・当該事業所に適用する削減義務率を1/2又は3/4に軽減する
・計画期間の当初でなく、期間中の認定が可能で、認められた当該年度以降の削減率が軽減される

トップレベル事業所、準トップレベル事業所認定制度

(例)2012年度から義務率1/2のトップレベル事業所と認定された場合
→2012年度以降の削減義務率が1/2(第一計画期間中有効※)
※不適合になった場合は認定を取り消し



テナントオーナーにも削減協力義務

・すべてのテナント事業者に、オーナーの削減対策に協力する義務
・「特定のテナント事業者」の指定
毎年度5月末時点において、
@延床面積5,000m2以上を使用しているテナント事業者
A延床面積にかかわらず、前年6月1日からの1年間の電気の使用量が600万kWh以上の事業者
・「特定のテナント事業者」は、テナント事業者独自の対策の計画書を作成・提出しその計画に基づき対策を推進する義務が課される
・「特定のテナント事業者」には、必要に応じて東京都の指導が入る



期間中の新築事業所は、使用開始から3年後に削減義務を判断

・新築ビルは、前年度のエネルギー使用量が原油換算1,500kL以上の場合、指定地球温暖化対策事業所となり、計画書提出、排出量報告等の義務が開始
・3年度(年度の途中に使用開始された事業所の場合、その年度は除く)連続して原油換算1,500kL以上の場合、特定地球温暖化対策事業所となり、削減義務開始
・指定地球温暖化対策事業所では、事業所ごとに、統括管理者・技術管理者を選任する必要あり



削減義務に使える排出権に再生可能エネ、東京都外のクレジットも

<総量削減義務の履行手段>

1. 自らで削減
高効率なエネルギー消費設備・機器への更新や運用対策の推進など

2. 排出量取引 ―次の量を取り引きで取得
@超過削減量:対象事務所が義務量を越えて削減した量
A中小クレジット:都内中小規模事業所の省エネ対策による削減量
B都外クレジット:都外の事務所の省エネ対策による削減量
C再エネクレジット:再生可能エネルギー環境価値(グリーンエネルギー証書、生グリーン電力等を含む。)

※@〜Cの量は、検証を経て、都に認定されることが必要(グリーンエネルギー証書については、すでに認証手続きを経ているので、都の検証機関の検証は不要)
※1、2@〜Cのすべてについて、第1計画期間中の削減量を、第2計画期間で利用することも可能
※再エネクレジットを利用する場合、その分類によって削減量を算出する際の換算倍率が定められている。
・太陽光(熱)、風力、地熱、水力(1,000kW以下):1.5倍
・バイオマス(バイオマス比率が95%以上のもので、黒液を除く):1.0倍
・水力(1,000〜10,000kW):1.0倍



超過削減量、売り手の販売量に制限

・削減義務量の超過量については、各年度、削減義務量の一定割合を超える削減実績をあげた場合、計画期間2年度目からの売却も可能
・売却できるのは、基準排出量の1/2を超えない削減量まで

1. 大規模事業所の超過削減量


大規模事業所の超過削減量

2. 中小クレジット


中小クレジット

3. 再エネクレジット(グリーンエネルギー証書)


再エネクレジット(グリーンエネルギー証書)


対象事業所の指定取り消しの要件

下記の要件のいずれかを満たす場合「指定地球温暖化対策事業所廃止等届出書」を提出することで、対象事業所の指定を取り消すことができる。

・前年度の原油換算エネルギー使用量が1,000kL/年未満
・エネルギー使用量が前年度まで3カ年連続して1,500kL/年未満
・事業活動の廃止、または全部の休止



コラム
これまでの環境確保条例と、どこが変わったのか?

環境確保条例は、CO2削減を目的とし、2000年から実施されている。その後、2002年には地球温暖化対策計画書制度をスタートし、企業に対して、CO2排出量の報告と自主的な排出削減目標の策定を求めてきた。その結果、2006年度には、東京都のCO2排出量を1990年度比で3.5%削減することに成功。しかし、取り組みに熱心な企業とそうでない企業で、CO2削減効果に大きく差が生じるという現状も見えてきた。

そこで、省エネ対策を「求める」政策から、「義務付ける」ものへと発展させたのが、今回の環境確保条例だ。年間排出量の報告に関しても、これまでは自己申告だったが、今後は東京都認定の登録検証機関を通じて報告する必要がある。条例違反があった場合には、罰則も設けられており、以前よりもかなり厳しい内容になっている。