座談会/イオン×アイゼット×ビーネクスト×扶桑電通

省エネ企業の集合知がもたらす短期・ローコストでのCO2削減
イオンの挑戦―新発想で達成する2012年・CO250万トン削減

JUSCO

イオン グループ総務部施設グループマネージャー 杉浦恒夫氏
イオングループ全体の省エネを推進する中心セクション。

扶桑電通 ファシリティ事業部ファシリティサービス部次長 浦田 稔氏
エネルギー使用の診断から設備の設計、施工、運用を手がけている。

ビーネクスト 代表取締役社長 林 治氏
空調・冷凍機の運転状況を感知し、適切な温度管理を可能にする技術を持つ。

アイゼット 代表取締役社長 林 邦男氏
50%の省エネを実現するために高性能反射板を用いた省エネ照明器具を製造。

司会 編集部 (順不同・敬称略)

2012年までという短期間に、イオングループ全店舗で06年度比30%、50万トンのCO2削減―その実現のためには、スピーディに、かつローコストで導入できる省エネ技術が不可欠だった。そこでイオンがとった手法は、省エネに特化した技術を持ったメーカーを選別、各社と削減目標を共有し、互いが独自に持つ分析データや店舗情報を持ち寄り、ムダのない、ベストの方法を導入するというもの。CO2削減対策に頭を悩ませる全国の小売業者はもちろん、他業種にも通じる好事例である。



イオンと複数の省エネ事業者がフォーメーション築き省エネ対策立案

座談会:杉浦 恒夫氏×林 邦男氏×林 治氏

―2012年までという短期で30%を削減するためには、省エネ設備の早期の導入と施工、またそれら設備のコストパフォーマンスが重要なだけに、イオンの取組みには小売業界を中心に高い注目が集まっています。どのように進められていらっしゃるのでしょうか。


杉浦 まず、今までは、新規店舗であれば、ゼネコンから示された選択肢の中で設備展開をしている面があります。一方、既存店舗であれば、多くの省エネ事業者さんからの提案を個別対応で導入していました。

―新規出店は、全体に対してみればわずかな数となるだけに、30%削減を達成するためには、既存店での対応がより重要になりますね。

杉浦  この既存店の省エネで課題となったのが、イオンと省エネ事業者の一対一の関係でのソリューションを逐一導入していくと、全体で見るとムダが生まれてしまうことです。それでは30%という目標の達成は非常に難しい。また、省エネはコスト削減という側面もありますので、コスト面でのムダはできるかぎり避け、省エネを進めることも大事な視点でした。

林(邦) そこで、杉浦さんからお声かけ頂いて、省エネを担当している各社が集まったのが始まりでしたね。

杉浦 高い省エネ専門技術を持つ各社にお声かけをし、集まってもらって、知恵を出し合い、最適な省エネを目指す形をとっています。

浦田 進め方は、はじめにイオンさんと各分野の省エネ企業がフォーメーションを組んで対策を話し合います。そうでないと、提案した省エネ技術が、構想通りに動きません。たとえば、広い店内では、熱いところも寒いところもあり、室温にある程度ムラがあるので、まず、ある企業が室温の分布を把握し、それに応じた対策を持つ専門企業が施さなければ、省エネは達成できません。

林(邦) 2012年までにCO230%削減という目標を達成するためには、異なる専門技術を持った企業、あるいは同業種であっても連携しなければなりません。
杉浦 この設備さえ導入すればよい、という魔法の杖はないということなんですよ。

イオン グループ総務部施設グループ マネージャー 杉浦恒夫氏
イオン グループ総務部施設グループ
マネージャー 杉浦恒夫氏


扶桑電通 ファシリティ事業部 ファシリティサービス部次長 浦田稔氏
扶桑電通 ファシリティ事業部
ファシリティサービス部次長 浦田稔氏


アイゼット 代表取締役社長 林邦男氏
アイゼット
代表取締役社長 林邦男氏


ビーネクスト 代表取締役社長 林 治氏
ビーネクスト
代表取締役社長 林 治氏


林(邦) 2008年はジャスコさんの共有部で省エネタイプのダウンライトを2万台以上導入させていただきましたが、同じ反射板仕様のダウンライトを開発するメーカーと連携することで、いい意味の競争心も生まれました。そのことと同時にスピードアップがはかれたのは魔法の杖に代わる効果かもしれませんね。

浦田 当社も初めは単独で省エネの営業をしていましたが、競合他社も交えてアイデアを出しあうようになると、これまで自社で見過ごしてきたデメリットがわかり、新製品開発、技術力のアップにつながっています。

林(邦) 1000店舗をどうやっていち早く省エネ化するかを考えると、そうやって高めあっていくしかないんですね。

林(治) 空調・冷凍機の省エネでも、店舗の状況により新たな対応が必要となることが多く、毎回いいテーマをいただいていると思います。必要に応じて各社が製品の改良を行うのも参考になります。

杉浦 複数の専門分野の異なる企業が集まって既成概念を打ち破ることによって、1+1が3にも4にもなるんです。


まずは消費エネルギーの見える化

―具体的な省エネ化のフローはどう進めていらっしゃるのですか。

杉浦 店ごとに、省エネできる余地が異なりますので、その状況をまず把握し、その余地が大きいところから手をつけていきます。イオンでは、60の省エネアイテムをリストアップしています。その中で、CO2削減能力の高いもの25アイテムに絞って、綿密に調査した上で、各店舗への適合性を〇×でチェックします。

浦田 ここでは、消費エネルギーの“見える化”が重要になってきます。そのためにITを活用し、空調を含めてそれぞれの設備の消費電力データを収集します。トータルでエネルギーをマネージメントすべきなのです。これにより、空調熱源を搬送するポンプや駐車場の換気ファンをインバーター化するなどの解決策もわかってきます。

杉浦 イオン苫小牧店にはBEMS(ビル環境エネルギー管理システム)を導入しています。これにより、各設備の稼働状況について計測や制御、監視が可能となり、またデータの保存、解析なども実施できるようになりました。

扶桑電通【FBEMS】問03-3544-7241

エネルギー収集統合管理システム(FBEMS)で店舗の各施設のエネルギー使用データをインターネット網で常時アクセ ス可能な形で管理。省エネ・CO2削減効果及び対策を導き出す。ほかにも、LEDや自然エネルギーシステムの提案など 幅広くイオンの省エネをサポート。


照度を維持しながら蛍光管本数を半減

―では次に、実施段階で高い省エネ効果をあげている個別箇所として、まず、照明の改善がありますね。

杉浦 苫小牧店では、照明の改善でリフレクターを用い、蛍光管1本で従来の2本分の照度を確保できる「リライト」をバックヤードで試してみました。今まで店舗内の省エネをメインにしてきましたが、バックヤードへも省エネの考えを広げていくのが今後の課題といえますね。

林(邦) 照度を維持し、消費電力を抑えたことによって、導入部の消費電力をそのまま50%削減できました。バックヤードの中でも事務所や休憩室での活用をさらに提案していきます。

杉浦 照明の改善は、年間通じて即効性と安定性を持った対策といえますね。バックヤードの中でも事務所や休憩室での活用をさらに提案していきます。

林(邦) 施工もすぐにできるし、設置したその日から効果が出ますから。

浦田 同時に、レストラン街では間接照明としてLEDを試験導入しています。蛍光灯タイプのLEDは省エネできますので今後製品化する予定です。

アイゼット【高効率照明器具】問03-5833-8801

苫小牧店では従業員休憩室や会議室に設置された『リライト』は反射板+高出力インバーターの組合せで逆富士40W 2灯と同等照度をFHF32W 1灯で実現した。「1本で2本の明るさ、1本で日本の明るさ」のキャッチコピーのとおり、消 費電力を50%削減することで日本の省エネに大きく貢献する。


アイゼット【高効率照明器具】問03-5833-8801

同じく苫小牧店の店舗共有部に設置されているダウンライト『SDRシリーズ』。主として150Wクラスのランプに対して 70Wのランプで省エネを図る。2008年度は70店舗以上に導入され、5000トン以上のCO2削減を実現した。


冷凍ショーケースの温度変化を抑制

―店舗というと、やはり冷凍ショーケースなど、動力の省エネが不可欠になります。

杉浦 エレベーターやエスカレーターの改善も考慮しましたが、人感センサーもあるため、改装しても省エネ効果が見込めるほど消費電力が多くはありません。

浦田 エスカレーターのモーターは小さく、手入れしても、それほど大きい効果は望めません。コスト面でも厳しいところがあります。また、安全面を考慮することも重要です。

杉浦 そこで手をつけたのがアイスクリーム系統を除く冷凍ショーケースです。ただ、この部分での省エネは、単純ではありません。

林(治) なぜかというと、空調だけなら温度にある程度の幅を持たせられますが、冷凍設備は“食の維持管理”とかかわり、ヒーターの結露という問題にも対処しなければならない。コンプレッサーだけではなく、それにかかわっている設備を効率的に省エネしなければならないんです。

杉浦 そこで、ビーネクストさんには空調と一緒に制御をみてもらっています。

林(治) 別個だったデータを一元管理し、ショーケースからの冷凍要求をコントロール、温度変化を最小限に抑える装置を導入しました。

杉浦 また、動力という面では、結構な数の店舗にオーバースペック問題があります。その動力をいかに制御するかという観点でも、インバーター化が重要です。

浦田 ところで、これは動力だけの問題ではありませんが、最近の特徴として、最高気温が上がってきて、夏場の省エネが難しくなってきていることがありますね。

―夏に限れば、削減が難しくなっていると?

浦田 事実ですね。温暖化の影響が出ています。

杉浦 イオンとしては、すべての季節で、省エネを達成しなければならない、とは考えておりません。

林(邦) 1年トータルで見て達成できればと。

浦田 そうなんです。中間期冬場などで効果を高めて、トータルで削減目標を達成する、そうした考え方で動かざるを得ないんですね。

ビーネクスト【Be Next】問06-6101-0611

別個であったデータを一元管理し、30分に1回、3分程度ショーケースからの冷凍要求をコントロールすることにより、冷えすぎなどの温度変化 を最小限に抑える。 室外機やショーケースに多大な影響を与える従来型の強制制御ではなく、ショーケース側の電磁弁を制御することで負荷を軽減している。



重油使用の200店すべてをエネルギー転換

―空調の省エネでは、また高い効果をあげられていますね。

杉浦 2つ方針があります。一つは、既存の設備をいかに活かすかということ。もう一つが、設備の更新。エネルギー源を重油から天然ガスや電気に換えれば、CO2排出量は半減します。また電気でも最新の設備に変えるということを行っています。更新の場合、投資回収の判断が求められます。

浦田 たとえば、原油価格が昨年夏は高騰し、冬場にかかり下がってきました。

杉浦 設備更新のタイミングが難しくなっています(笑)。とはいえ、重油はいずれ全廃することになると思います。

―重油を使った施設はどのくらいあるのでしょうか。

杉浦 重油を使った自家発電施設を導入していた店舗は200近くありました。ほぼ廃止しています。また、重油を使った空調機の店舗もまだ30近くあるのでこれらをすべて電気か天然ガスに切替えます。こうしたところは、イオンという会社の先見性といえるのだと思います。

浦田 また、空調機器も消費電力の少ないタイプに切り替えるべきですが、開店して10年足らずの店舗の場合は「もったいない」という意見もあり、すぐに新しい空調機器を入れ替えるべきかどうかは意見が分かれるところです。

林(治) あるものを使うということがやはり一つのコンセプト。電力を測定することによって、実際の負荷と運転時間データをもとに省エネの手法を提案できます。東京都の規制も目前に迫っておりますので、よりいいデータをご提供しなければと考えています。

杉浦 東京都の規制に先んじて、東雲店で11〜12%の削減を予定しています。

林(邦) 店舗の場合は照度を著しく落とすような“我慢の省エネ”はやるべきではありません。その上で数字を積み上げるのは相当な工夫が必要です。

杉浦 やれることは全部やる、そうでなければ、30%の削減目標にはなかなか近づけません。



省エネにおけるお客様とのコミュニケーション

杉浦 省エネで忘れてはならないことは企業の取り組みをお客様に伝えることです。いくらインバーターや照明でCO2を削減してもお客様にうまく伝わらなければ十分でありません。

浦田 例えば太陽光発電や風力はわかりやすいのですが。

杉浦 表に出にくい省エネ活動は、より伝わる工夫をし、イオンにご来店いただくことで、省エネに貢献できるというふうに、お客様の理解を促進したい。レジ袋削減の際のように。

林(邦) まったく同感ですね。店舗や事業者側だけでなく、消費者と一緒になって省エネに取り組んでいく、そういう時代に移り変わってきているので、少しでもその流れを後押しできたらと思います。

杉浦 我々は“いいとこどり”で動くチームです。こうしたチームワークで最大の省エネ効果を引き出す手法であったり、既存店舗で有効活用された技術は、広く参考になるものかもしれません。総じては、イオンの取組みが日本の省エネに貢献できたらと願っています。

―日本中に展開する企業や、チェーン・FC店などが、このような方式で省エネ・CO2削減に取り組むことで、全国的にスピードをもって一気に推進されればと思います。



■お問合せ先

扶桑電通【FBEMS】
TEL:03-3544-7241 http://www.fusodentsu.co.jp/

アイゼット【高効率照明器具】
TEL:03-5833-8801 http://www.iz-inc.co.jp/

ビーネクスト【Be Next】
TEL:06-6101-0611 http://www.benext.co.jp/

※お問合せの際は、「環境ビジネスを見た」というとスムーズです。