「食べられる家」をつくるZEHビルダーに話を聞きました

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無垢材の床と漆喰の壁など、天然素材にこだわって建てたファミリアホームの家は、玄関を開けると思わず深呼吸したくなるほどに清々しい。家族の環境を考えたらエネルギーまで自然素材にたどり着き、太陽光発電を取り入れた「ZEH」の普及に取り組んでいる。

▲ファミリアホームが手掛けるZEH(1)
▲ファミリアホームが手掛けるZEH(1)

口に入れても安全な素材だけを使った住まいづくり

30余年、住宅業に携わってきた株式会社ファミリアホームの横谷隆社長が熊本で他社に先駆けローコスト住宅の販売を始めたのが2001年。その後社名を現在の株式会社ファミリアホーム変更し、現在はこだわりの「無添加住宅」を建てている。

会社設立当初は無理な住宅ローンの返済に苦しまなくて良いようにと、国の定めた基準の中で品質が高く、無理な資金計画をせずに提案できる「ローコスト住宅」を受注施工。そしてその頃、社長自宅も新築したという。

しかし、住み始めてから約一年、当時小学生の長男が原因不明の激しい頭痛や発疹をはじめとする体調不良を訴え出したそうだ。念のために室内環境を心配して保健所に依頼して調べてみても、ホルムアルデヒドは基準値以下。体調不良の原因を特定することはできなかった。横谷社長は、藁にもすがる思いで高性能換気扇を設置したり、床下に大量の炭を入れたり、化学物質を中和する薬剤を散布したりと様々な取り組みを行った結果、無添加住宅にたどり着いたそう。

無添加住宅の素材でリフォームしたことにより、息子さんの体調は徐々に快方に向かっていったという。「まさか夢のマイホームが原因とは初めは思いませんでした。子供の原因不明の体調不良を直したい一心で試行錯誤した結果、自然素材で作る無添加の『食べられる家』に行き着くことができた」と横谷社長は振り返る。

横谷社長宅も無添加リフォームして約9年。ご子息も健康を取り戻し、無事に社会人になったのを機に、詳細な体験談を公表しているそうだ。

現在ファミリアホームが施工するのは自然素材にこだわった「食べられるほど安全な素材でつくった澄んだ空気の家」。つまり素材は全て、口に入れられる、安全な物だけを使用する。室内にはビニールクロスは使用せず調湿効果にも優れた漆喰を。屋根は天然石、断熱材は炭化コルク。見えない部分に至るまで、体に有害だと思うものは徹底的に排除する。「建材は接着剤に至るまで選び抜きます。アナログだけど、全ての建材は一度口に入れてみるんです。口に含めるかどうかで本能的に判断できる」という徹底ぶりだ。

壁の中に至るまで「口に入れられる」素材でできた「食べられる家=ファミリアホーム」は、天井から床に至るまで無垢材がふんだんに使用されている。

壁の中に至るまで「口に入れられる」素材でできた「食べられる家=ファミリアホーム」は、天井から床に至るまで無垢材がふんだんに使用されている。

心地良さを追求したら「ZEH」に

▲ファミリアホームが手掛けるZEH (2)
▲ファミリアホームが手掛けるZEH (2)

安全素材の家を追求し続ける中、横谷社長は、健康と安全を突き詰めると、室内の温度が大切だと気がついたのだという。「冬になると冷え性のお母さんの足が冷えるとか、北向きの部屋やお風呂場などヒートショックの原因などもなくしたい」と、トリプルサッシを導入し、北海道の住宅と同程度の高気密・高断熱を実現している。さらに「安全な空気環境も、例えば24時間換気システムなど機械頼みだけになってしまうと、ランニングコストがかかります。健康と環境保全を考えるとあまり石油燃料は使用したくない。家全体に自然素材にこだわっているうちに、自然とZEHに結びついた」と横谷社長は語る。

そんなファミリアホームが太陽光発電を導入したのは12年ほど前。当初は国内メーカーを使用していたが、P.V.ソーラーハウス協会にて省エネ住宅についての研修を受けた際にトリナ・ソーラーを知った。「既存のメーカーより発電量が多いのに、1kw当たりのコストは安い。性能がいいのに安いのはユーザーにとって何よりです」。これまでトリナ・ソーラーを施工した住宅では発電量が試算を下回ることはなく、逆に試算以上の実績で売電も出来ているそうだ。

また、屋根の形状に合わせて設置パーツを選べ、つかみ形状の金具を使用することで屋根自体に穴を開けずに載せることができるのも大きなメリットだという。「穴を開けないので漏水の心配もなく、躯体の強度も保たれます」。今回の熊本地震の際も太陽光電池モジュールが落下した家はなく、「マニュアル通りの設置方法で安全が確保できた」というから、その強さも大きな安心につながる。

家自体だけでなく、エネルギーも「太陽光という自然素材で」と話す横谷隆社長
家自体だけでなく、エネルギーも「太陽光という自然素材で」と話す横谷隆社長

住まいづくりも地産地消で

これからのファミリアホームが目指すのは、地産地消の無添加住宅づくり。熊本県球磨郡五木村で伐採した自然木を無垢材として家づくりを行う一方、植林にも取り組んでいる。

横谷社長は「本来日本には、室町時代から今も残るような商家や武家屋敷のように、近所の石や土・草などを建材にしながら長く住まえる住文化があったはずです」と言う。

そして戦後日本の価値観が変わってしまい、住まいの寿命も30~40年と考えるようになってしまったことに疑問を投げかける。「天然素材の家もZEHもコストがかかるからこそ、30年で壊れては困ります」。

ゆくゆくは「少量の太陽光発電で給湯・冷暖房・調理をまかなう現在のZEHを超える、家電全般に必要なエネルギーをカバーできる家づくりをしたい」、それが横谷社長の持続可能な未来への夢である。

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