水素エネルギー社会の実現に向けて

Power−to−gas技術による再生可能エネルギー由来水素の活用可能性(第4回)

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本コラム第1回から第3回にかけて、再生可能エネルギーと水素エネルギーの導入が進む背景と、それらを結びつける技術であるPower−to−gas技術に関連した制度整備状況や技術開発・実用化動向を整理した。(連載:第1回第2回第3回)今後にかけても、再生可能エネルギーの導入と水素社会の実現に向けた取組が続き、Power−to−gas技術や再生可能エネルギー由来水素の普及・拡大は進むと見込まれるものの、現時点では制度面・技術面の双方において欧米の取組が先行していることを認めざるを得ない。しかしながら、そのような状況においても、日本が優位性を発揮しうる分野は依然として複数存在しているのではないだろうか。この点について、本コラム最終回では考察してみたい。

まず、Power−to−gas技術の肝となる水電解技術についてであるが、本コラム第3回で述べたように、世界的には経済性の追求等を背景にシステムの大型化がトレンドとなっており、電解方式としては特に固体高分子形水電解(以下「PEM水電解」という。)で更なる技術開発や実証試験が盛んに行われている。PEM水電解は、アルカリ水電解に比べてシステムサイズやコスト、電解効率や水素の品質面でも優れており、2020年以降を見据えても水電解技術の中心に位置することになると考えてよいだろう。しかし、もうひとつの電解方式である高温水蒸気電解(以下「SOEC」という。)については、PEM水電解と比べても電解効率が30%程度優れる(アルカリ水電解又はPEM水電解:約4~5kWh/Nm3、SOEC:約3kWh/Nm3)ほか、その逆反応により発電を行う固体酸化物形燃料電池(以下「SOFC」という。)を組み合わせることで、充放電効率で50%弱(熱利用効率を除く)である現状のシステムよりも大幅に高い80%程度を実現可能だといわれている。これは、SOFCが発電時に発熱する一方、SOECが電解反応時に吸熱する特性に着目したシステムフローであり、実用化に向けては高効率での電解を長期間維持する電解セル構造や、高温蓄熱装置、高温下でも水素を網羅的に取り出すセルスタック構造等の開発に加え、システムの大型化が課題だと言われている。

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