メガワット級の電力貯蔵システムとして、世界のエネルギーインフラを支えてきた日本ガイシの「NAS電池」。執行役員 エネルギーインフラ事業本部エナジーストレージ事業部長の市岡立美氏に、工場の脱炭素化における大容量蓄電池の役割について聞いた。
日本ガイシが開発した大容量蓄電池「NAS電池」。国内外で68万kW/480万kWh(2021年6月末現在)を納入するなど、定置型二次電池として世界トップクラスの実績を誇る。
NAS電池の魅力は6~7時間という大容量の電力を貯められることだ。太陽光発電と組み合わせれば日中や土日の余剰電力をNAS電池へ充電し、必要なときに放電するなど、電力の需要と供給の調整役を担う。「太陽光発電を最大限に活用し、自家消費の比率を高めたいという需要家のニーズに応えます。また、工場やオフィスの電力需要ピークに合わせて放電すれば、契約電力を低減でき、電力コストの削減にもつながります」と市岡氏は話す。
自家消費型太陽光発電とNAS電池が注目を集めている理由は、もう一つある。自然災害が多発する今、再エネを活用して災害レジリエンスの強化も図れる点だ。大容量で長時間の放電能力を持つNAS電池なら、災害時には太陽光発電と組み合わせて、バックアップ電源として活用できる。
「非常時にしか稼働しない発電機と比較して、日常的に運用しているNAS電池はやはり信頼できる」とユーザーの評価が高い。
さらに、落雷などによる瞬時電圧低下回避対策とピークカット対策を兼用するなど、多様なアプリケーションを兼ね備えることができるのもNAS電池が工場などの需要家から選ばれる理由となっている。
脱炭素化の重要性が増す中、自家消費型太陽光発電を導入し、再エネ比率を高めたいと考える企業が増えている。
「SDGsへの貢献やESG対策、国際イニシアチブであるRE100の達成など、環境対策の強化に取り組むお客さまそれぞれのニーズに応え、企業価値の向上を支援していきたい」と市岡氏は語る。
大容量のNAS電池だから、CO2の削減とBCP強化を達成しつつ、電力コストの削減も叶えることができる。カーボンニュートラルや持続可能な社会の実現には、NAS電池のような大容量蓄電池の活躍が期待される。
2020年10月、電子部品メーカー山一電機の佐倉事業所にNAS電池と再エネ電源を組み合わせたシステム、太陽光発電(出力680kW)とNAS電池(出力400kW、容量2,400kWh)が導入された。
山一電機 取締役 生産本部長の土屋武氏に導入の狙いや効果を聞いた。
2019年9月の台風15号により3日間停電が続き、その間、佐倉工場の生産がストップした。お客さまへの供給責任を果たし、多額の損失を防ぐために、緊急にBCP対策の検討を指示した。当初は非常用発電機や太陽光発電+リチウムイオン電池などの検討を重ねた結果、選んだのが太陽光発電+NAS電池の組み合わせだった。
■電力使用量の20%再エネ化を達成、購入電力を25%削減
佐倉事業所の電力消費量のうち、再エネ比率が20%を達成。CO2排出量に換算すると、導入時から10カ月で約350トンを削減した。
導入効果は経済効果にも及び、通常時に太陽光発電の余剰電力を充電し夜間放電することで、自家消費の比率を高め、購入電力の使用量を25%削減。CO2排出量削減のみならず、年間で相当のコストダウンができた。
■地域のレジリエンス強化にも貢献するBCP対策
有事の際にも、佐倉工場でしか生産できない部品の生産ラインを維持するために必要な電力を供給できる。事務棟の電力は、長期停電時でもエレベータを含め24時間365日維持でき、地域の避難所として使用することも計画している。脱炭素とBCPを同時に叶え、さらに地域にも貢献でき、経営層も大変満足している。
1.太陽光発電の自家消費の拡大
平常時は、日中の太陽光発電の使い切れない電力をNAS電池に充電し、夜間は放電することで、自家消費の比率を高め、太陽光発電を最大限に活用する。
2.BCP対策の強化
NAS電池に一定の容量を常に残しておき、停電時に非常用電源として活用。太陽光発電と組み合わせることで、長時間にわたり工場の重要設備に電力を供給することが可能。
3.災害時の地域防災拠点への電力供給
台風や地震などの災害時には、地域の防災拠点(避難所)として工場を提供することが計画されている。