HSK、難処理プラ材の新たなマテリアルリサイクルの手法を開発

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海洋プラスチックごみ問題の解決や、プラスチックリサイクルの脱炭素化などが求められる中、放電精密加工研究所(HSK)が開発する新しいマテリアルリサイクルの手法が注目されている。熱源を用いないプラスチックの混合溶融技術は、クローズドリサイクルを実現、新たなバイオマスプラスチック材・製品の開発により、資源循環を促進する。

※混合溶融技術に関する詳細資料を公開しています。こちら、もしくは文末より資料がダウンロードできます。

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新混合溶融技術を活用したマテリアルリサイクル

近年、国際的にプラスチックによる海洋汚染問題がクローズアップされる一方、国内では諸外国による廃プラスチックの輸入停止を受けて、廃プラスチックの処理が大きな課題となっている。プラスチックリサイクルには、廃プラスチックを熱利用のために焼却処理するサーマルリサイクル、プラスチック製品へ再生するマテリアルリサイクル、化学原料として再生するケミカルリサイクルがある。

日本ではサーマルリサイクルが大半を占めるが、欧米基準ではサーマルリサイクルはリサイクルとして認められていないのが現状だ。こうした中で、マテリアルリサイクルの新たな技術として注目されているのがHSKの保有技術であるMF式混合溶融技術だ。

同社のMF式混合溶融機は、ヒーターなどの熱源を使わず、高速回転によって材料同士を衝突させ、発生した熱で材料を高温加熱、高圧化し、均一に混合溶融する。比較的小型化できるため設備投資も低く抑えられ、高圧容器の許認可も不要。融合材を粉砕し、射出成形機などでプラスチック製品に再生できる。

放電精密加工研究所 取締役 環境マテリアル開発事業部管掌 矢部 純氏
放電精密加工研究所 取締役 環境マテリアル開発事業部管掌 矢部 純氏

同社取締役で環境マテリアル開発事業部管掌の矢部純氏は、「海洋汚染問題でプラスチックは悪者扱いされていますが、本来は石油由来の貴重な資源です。従来、日本では廃プラスチックの大半が焼却処理されてきましたが、脱炭素化が目指される中で、プラスチックリサイクルの既存プラットフォームが限界を迎えています。我々の使命はこのMF式混合溶融技術により、リサイクルの新しいプラットフォームを構築し、社会問題を解決するとともに、資源循環を促進することです」と意欲的だ。

HSKは放電加工という特化技術による受託加工からスタートし、創業60周年を迎える。現在は、産業用ガスタービン部品や航空機エンジン部品、高精度プレス機の製造など事業基盤を拡大。さらに「混合溶融技術により、環境マテリアル事業を当社の中核事業のひとつに育てたい」としている。

難処理プラ材の新たなリサイクル プラットフォーム構想
難処理プラ材の新たなリサイクル プラットフォーム構想
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木粉や竹などを混ぜた多彩なバイオマスプラスチックを提案

MF式混合溶融技術の最大の特長は、熱源を使わないため素材を劣化させずに混合溶融できることだ。そのため従来は再生用途がパレットやハンガーなどに限定されていたが、幅広い製品に使える。さらに、融点が異なる樹脂同士でも、例えばナイロンとポリプロピレン(PP)を分別せず投入し瞬時に融合、樹脂が熱劣化しにくいのも強みだ。

こうした特長を活かし、HSKが提案するのが混合溶融技術を活用した「バイオマスプラスチック」だ。例えば、樹脂材料にマツ、スギ、ヒノキなどの木粉、竹、石膏、イ草、抽出後のコーヒーかす、キャベツなどを混ぜる。金属による合金と違い組合せは無限大だ。融合材は射出・押出し・プレス加工などで、ボードや植木鉢、玩具、プラモデル、自動車内装品など自在に成形できる。しかも、従来のバイオマスプラスチックのバイオマス材の混合率が30%程度だったのに比べ、接着剤なしで50%、80%混合することも可能だ。ちなみバイオマス材を50%以上の比率にすると、一般焼却炉のゴミとして処分できる。

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矢部氏は、「我々はリサイクルではなく、より質の高い材料に変えていく『アップサイクル』と捉えています。我々の提供する技術を活かし、環境価値を付加した新たな材料や製品をつくり出す。あるいはコーヒーかすを混合したバイオマスプラスチックのトレイを環境経営のシンボルとして店舗で使う。市区町村であれば、廃プラスチックと土地由来の素材、例えばホタテ貝殻や竹など混合し、クローズリサイクルと同時に地方発の商品を開発するとか、様々な用途が想定されます」と話す。

HSKではステップ1として、プラスチック製造業の工程内から排出される難処理プラスチックのリサイクル事業を挙げる。ステップ2では、ペットボトルや食品包装材など消費サイクルから回収された廃プラスチックを原料とするリサイクル事業を想定する。ステップ2では融点が違う樹脂同士も同時に投入できるなどの特長が活かされている。

R&Dセンターの試作混錬・成形サービスが好評

飯山事業所(神奈川県厚木市)に設置された実機。バイオマス素材を融合させる新技術でサーキュラーエコノミーを促進する
飯山事業所(神奈川県厚木市)に設置された実機。
バイオマス素材を融合させる新技術でサーキュラーエコノミーを促進する

今秋、MF式混合溶融技術を検証し、社会実装を目指した「高度マテリアルリサイクル研究会」が発足した。事務局は公益財団法人全日本科学技術協会に置き、会員として大手化学メーカー、成形メーカー、リサイクル事業者などが参加する。

また、HSKでは飯山事業所(神奈川県厚木市)に実機を設置し、R&Dセンターを開設。見学の他、各種バイオマス素材と樹脂の試作混錬サービス、試作成形サービスを行っている。

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バイオマスプラスチックを使った成型物。
長年培ってきた加工・金型技術をもとに様々な形状に対応が可能

「現在は週2件ぐらいのペースでお客様の試作サービスを実施しています。皆さん、いろいろなバイオマス素材を持ち寄ってこられます。やはり試作しないと社内で評価できないということで、射出成形や押出し成形、3Dプリンターも設置し成形品をつくっています」(矢部氏)

R&Dセンターは、プラスチック対策を検討する企業に対して、混合溶融技術をよく知ってもらうために開設した背景があり、「試作サービスなど気軽に使って欲しい」としている。矢部氏はSDGsをテーマに掲げる大阪万博までには環境マテリアル事業を軌道に乗せたいと意気込む。

※混合溶融技術に関する詳細資料を公開しています。

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株式会社 放電精密加工研究所 株式会社放電精密加工研究所
(HSK)
神奈川県横浜市港北区新横浜3-17-6
イノテックビル11F
問い合わせ先
email:hsk_info@hsk.co.jp
TEL:045-277-0330


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