環境用語集 託送料金の見直しや電気事業の関連制度の整備、方向性を提示

経済産業省は、6月28日に開催した審議会で、託送料金制度について、一般送配電事業者が効率化によるコスト削減を図り、必要な投資を確保できるようにするために、欧州型のインセンティブを付与する制度とする見直しの方向性(案)を示した。また、新たな電力取引の展開なども踏まえ、電気事業の関連制度についても整備していく考えだ。

この議論は、第5回脱炭素化社会に向けた電力レジリエンス小委員会で行われたものだ。同小委員会では、再エネの主力電源化や、電力インフラのレジリエンス(防災・減災のための強靭性)強化、AIやIoTなどのデジタル化などに対応した、電力の安定供給体制を構築する方策について検討している。

託送料金制度については、「コスト抑制」と「投資環境整備」を両立する託送制度とするために、欧州型のインセンティブ規制(レベニューキャップ・プロフィットシェア)」の導入も視野に入れた見直しを検討する方向性(案)を示した(下図参照)。

託送料金制度
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日本の託送料金制度は、総括原価と料金収入が一致し、費用が削減されれば、応分の料金の値下げを求める「総括原価方式」をベースとしている。この現行制度について、一般送配電事業者のコスト効率化のインセンティブが低いことや、再エネ導入のための追加投資など予見が難しい費用が機動的に回収できていないなど、改善すべき点があると指摘した。

「総括原価方式」に対して、「インセンティブ規制方式」は、費用削減分を事業者の利益とすることを認め、コスト効率的な事業運営を行うインセンティブを付与する制度だ。インセンティブ規制方式には、「レベニューキャップ方式」(総括原価≧料金収入)などがある。また、国民負担を抑制する仕組みのひとつに、効率化分の一部を期中に需要家に還元する「プロフィットシェア制度」がある。こうした規制の導入を検討していく考えだ。

また、託送制度の見直しに併せて、送配電網の維持・運用などに要する費用を発電側も負担する「発電側基本料金」の詳細検討を進めるとともに、再エネ主力電源化や災害対応など政策課題に伴う費用負担を全国の託送料金やFIT賦課金方式で回収することや、送配電事業者が確保すべき調整力と予備力の範囲と託送料金上での扱いなどについても検討すべきだとした。

なお、発電側基本料金については、2020年度以降速やかに導入することとなっている。今回の託送制度見直しは、発電側基本料金導入と整合的になるようスケジュールを配慮していくことを提案している。

送電と配電の機能分化に対応した制度の在り方

第5回小委員会では、次世代電力ネットワーク(NW)への転換に向けた制度などの在り方をテーマに、「託送制度の在り方」のほか、「NW次世代化等に対応した制度の在り方」など、4つの論点で資料が提示された。

NW次世代化等に対応した制度の在り方では、環境変化として、新たな電力ビジネスと、「広域化する送電網」・「分散化する配電網」の機能分化の進展をあげた。

「広域化する送電網」・「分散化する配電網」
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たとえば、新たなビジネスでは、太陽光電気自動車(EV)など、多数の分散型電源をデジタル技術でまとめて制御・活用するアグリゲーション・ビジネスや、個人間の電力取引(P2P)を仲介するビジネスなど、電力の取引類型の多様化が進んでいる。こうした環境変化に対応するため、電気事業の関連制度の在り方について検討が必要だとし、以下5つの対応を提示した。

広域化

  • 需給調整市場の創設に向けて、各一般送配電事業者の業務・責任の分担や、市場運営に係る新たな組織・契約形態について、法的・制度的な位置づけの整理・検討
  • 一般送配電事業者による、コスト削減やレジリエンス強化に役立つ仕様の統一化・共通化

分散化

  • アグリゲーターやP2Pなどの新ビジネスの電気事業法上の位置づけの検討
  • 「電気計量制度」を改革し、画一的・厳格な電気の計量方法に係る規制を一部合理化
  • スマートメーターなどの電力データを活用し、多様なビジネスモデルの創出

2021年度に創設される需給調整市場は、一般送配電事業者が需要と供給の差を一致させるために使う「調整力」を取引する市場だ。現在、一般送配電事業者は、個別に自らのエリア内で調整力を公募により調達し、それを用いて需給調整を行っている。同市場創設後は、広域的な調整力の調達・運用が行われる。2021年段階は、一般送配電事業者間での相互調整しながら市場を開設し、将来は新たな組織形態・契約形態の見直しを含めて、改めて検討することとなっている。

調整力の調達
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新たな電力取引は、個々の取引類型ごとに電気事業法上の位置づけなどが異なり、非規制と整理されるケースもある。また、電力取引の際は計量法に基づく検定を受けた計量器が必要であり、その整備コストも課題となる。そのため、新たなビジネスモデルの出現を踏まえた環境を整備するとともに、新たな取引に係る計量について、より柔軟な電気計量を実現する制度の在り方を検討する考えだ。

イメージ図
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「再エネ導入+電化」に高い脱炭素化ポテンシャル

3つの論点である、需要サイドの「電化(電動化)」については、エネルギー需給構造の低炭素化に貢献する有効な手段として、積極的に評価していくべきだとした。

欧米などで、脱炭素化社会の実現に向けて、供給サイドの脱炭素化と同時に、需要サイドの電化の必要性が議論されている。「再エネ導入+電化」については、各国で高い脱炭素化ポテンシャルが見込まれている。たとえば、欧州では、運輸や業務部門を中心とした電化の進展により、電力消費量は毎年増加し、2050年では2015年比で1.4~1.7倍になると分析されている。一方で、再エネの導入促進により、電力の単位エネルギーあたりのCO2排出量は減少を続けるため、省エネ効果、再エネ導入、電化により、大幅なCO2削減が見込まれている。

脱炭素化社会
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日本でも、2019年6月に閣議決定された長期温暖化対策「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」のなかで、「電化(電動化)」は、エネルギー供給の低炭素化に貢献する要素のひとつとしてあげられており、非化石電源比率を引き上げつつ電化率を向上させていく方針となっている。

また、人口が減少していくなかで再エネ大量導入に必要なNW投資をした場合であっても、電化によって電力利用率が高まることにより、kWhあたりのNW負担額が抑えられるという好循環が生じると考えられている。

災害時に需要側が担う役割

最後に、災害時に需要家が担う役割の重要性に言及した。2018年の北海道胆振東部地震を例に、具体的な協力として、家庭・業務・産業の各部門に対する節電要請への対応や、自家発電設備の稼働、個別の需要抑制(デマンドレスポンス(DR))などの需給逼迫緩和のための取り組みをあげる。また、一部の電力会社からは、停電情報をピンポイントで確認できるだけでなく、需要家側から電力設備の被害情報を画像付きで電力会社に送付できるアプリがリリースされており、こうしたアプリ等を通じて可能な範囲での情報提供に期待を寄せる。

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