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最終更新日:2026年03月09日

VCS(Verified Carbon Standard)

企業の脱炭素経営が進む中、カーボンクレジットを活用したGHG削減の取り組みが拡大している。こうした民間主導のカーボン市場(ボランタリーカーボン市場)で、世界最大規模の制度として知られるのがVCS(Verified Carbon Standard)だ。

VCSは、米国に拠点を置く非営利団体Verraが運営するカーボンクレジット制度で、森林保全や再エネ導入などのプロジェクトによるGHG削減量を認証し、クレジットとして発行する仕組みである。2022年時点では、世界のボランタリークレジット発行量の中でも最大規模のメカニズムとなっている。  

VCSの基本的な仕組み

VCSでは、プロジェクトによって削減・吸収された温室効果ガス量を第3者が検証し、VCU(Verified Carbon Unit)として発行する。1VCUはCO2換算で1tの排出削減または吸収量を表す。  

クレジット発行までの基本的な流れは以下の通り。

  1. プロジェクト設計書(PDD)の作成(排出削減量の算定方法やプロジェクト内容を記載)
  2. 第三者機関による妥当性確認(Validation)
  3. VCSプログラムへの登録
  4. モニタリングと報告
  5. 第三者検証(Verification)
  6. クレジット発行(VCU)

クレジットはVerraのレジストリで管理され、企業などが自主的に購入して排出量の相殺などに活用できる。

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(出所:国立環境研究所)  

対象プロジェクト

VCSの特徴の1つは、対象プロジェクトの幅広さ。主な分野は以下の通り。

  • 再エネ導入
  • 森林保全・植林
  • 農地管理の改善
  • メタン回収
  • エネルギー効率化
  • 湿地や泥炭地の再生

森林管理やREDD+など、土地利用分野(AFOLU:Agriculture, Forestry and Other Land Use)のプロジェクトが多く、ボランタリー市場において重要な位置を占めている。

方法論の一覧

  • VM0001:赤外線自動検出リークディテクション効率化プロジェクト方法論 v1.1
  • VM0002:炭素集約度の低い電力を系統に供給する新規コージェネレーション設備、および/またはLNGの天然ガス配管へ混入を供給する設備 v1.0
  • VM0003:使用年数の延長による森林管理改善のための方法論 v1.2
  • VM0004:低収益林から高収益林への転換方法論 v1.2
  • VM0005:モザイクおよびランドスケープスケールのREDDプロジェクトにおける炭素会計のための方法論 v2.2
  • VM0006:REDDメソドロジーフレームワーク(REDD-MF)v1.6
  • VM0007:一方通行と多世帯の建物の耐震化 v1.1
  • VM0009:回避可能な生態系変換のための方法論 v3.0
  • VM0010:森林管理改善のための方法論 伐採量伐採林への転換 v1.3
  • VM0011:計画的劣化の防止によるGHG排出削減の算定方法 v1.0
  • VM0012:温帯林および寒帯林における森林管理の改善(LtPF)v1.2
  • VM0013:ジェットエンジン洗浄による排出削減の算定 v1.0
  • VM0014:炭層ガス(CBM)源からのメタン排出削減方法論 v1.0
  • VM0015:Avoided Unplanned Deforestationの方法論 v1.1
  • VM0016:製品あたりのカンパニーデータに基づくODSの回収 v1.1
  • VM0018:持続可能なコミュニティにおけるエネルギー効率と温室効果ガス削減 v1.0
  • VM0019:フレック燃料車によるガソリンからエタノールへの燃料転換 v1.0
  • VM0020:軽量化車両による輸送エネルギー効率化 v1.0
  • VM0022:産業用窯炉における燃料切替による温室効果ガス削減の定量化 v1.1
  • VM0023:プロレソリオンサイクル製造におけるGHG排出量削減 v1.0
  • VM0024:沿岸湿地造成のための方法論 v1.0
  • VM0025:キャンプ・クリーン・エネルギーとエネルギー効率 v1.0
  • VM0026:持続可能な草地管理(SGM)のための方法論 v1.1
  • VM0027:採水された熱帯泥炭地の再湿潤化方法論 v1.0
  • VM0029:火災管理による森林劣化回避のための方法論 v1.0
  • VM0030:代用硝酸を用いた硝酸の製造方法 v1.0
  • VM0031:代用硝酸を使用したプレキャストコンクリート製造方法 v1.0
  • VM0032:火入れと放牧の調整による持続可能な草地管理のための方法論 v1.0
  • VM0033:潮間帯の湿地生態系の再生方法論 v1.0
  • VM0034:プリティング:コロンビア外来林オーバーレイ方法論 v1.0
  • VM0035:影響の少ない伐採による森林管理の改善のための方法論 v1.0
  • VM0036:排水された湿帯泥炭地の再湿潤化のための方法論 v1.0
  • VM0037:モザイク状の森林減少と劣化の管理を受けたランドスケープにおけるREDD+活動実施のための方法論 v1.0
  • VM0038:電気自動車を充電ステーション用メソドロジー v1.0
  • VM0039:舗装用路面の舗装混合物を変えることによるアスファルト混合物の使用方法 v1.0
  • VM0041:100%天然原料からの使用による反芻動物の腸内メタン排出量削減のための方法論 v1.0
  • VM0042:農地管理改善のための方法論 v1.0
  • VM0043:コンクリート製造におけるCO2利用方法論 v1.0
  • VM0044:土壌および畑土壌利用におけるバイオ炭の利用方法 v1.0
  • VM0045:国有林インベントリからの動的アドバイスラインを用いた森林管理手法の改良 v1.0
  • VMR0001:稼働中の露天掘り鉱山からのメタンの事前排水をベースライン排出削減として含めるためのACM0008の改訂 v1.0
  • VMR0002:廃鉱からのメタン回収・破壊を含むACM0008の改訂 v1.0
  • VMR0003:有機廃棄物の使用を含むAMSI-III.yの改訂 v1.0
  • VMR0004:移動式機械を含むAMSI-II.BCの改訂 v1.0
  • VMR0005:低流量水素装置のための方法論 v1.0
  • VMR0006:高効率ボイラー装置のための方法論 v1.2

生物多様性や地域社会への効果も評価

VCSはGHG削減量の認証が中心だが、Verraはそれに加えて、CCB Standards(Climate, Community & Biodiversity)という基準を運用している。

これは、プロジェクトが以下の3つの側面でプラスの効果を持つかを評価する仕組みだ。

  • 気候(Climate)
  • 地域社会(Community)
  • 生物多様性(Biodiversity)

なおCCBSによる報告事項として、すべての必須項目を満たすとCCB認証、さらに優れた成果を示すとゴールド認証が付与される。  CCB認証を取得したプロジェクトは、環境・社会的価値が高いと評価されるため、通常のクレジットより高値で取引される傾向がある。

セクション 項目 区分
統合セクション プロジェクト実施前の対象地の状況 必須
ベースラインの予測 必須
プロジェクトの設計と目標 必須
管理能力とベストプラクティス 必須
法律上の状況と財産権 必須
気候セクション 事業を実施しなかった場合の気候シナリオ 必須
実質プラスの気候変動防止効果 必須
対象地外での気候変動関係の影響(リーケージ) 必須
気候への影響のモニタリング 必須
気候変動への適応効果 任意
地域社会セクション 事業を実施しなかった場合の地域社会シナリオ 必須
実質プラスの地域社会への効果 必須
対象地外でのステークホルダーへの影響 必須
地域社会への影響のモニタリング 必須
特に優れた地域社会への効果 任意
生物多様性セクション 事業を実施しなかった場合の生物多様性シナリオ 必須
実質プラスの生物多様性への効果 必須
対象地外での生物多様性への影響 必須
生物多様性への影響のモニタリング 任意
特に優れた生物多様性への効果 任意

カーボンクレジット市場における位置付け

カーボンクレジット制度は大きく次の2種類に分けられる。

  • 政府主導制度:CDM(クリーン開発メカニズム)JCM(二国間クレジット制度)、J-クレジット制度など
  • 民間主導(ボランタリークレジット):VCS、Gold Standard、Climate Action Reserve など

VCSはこの民間主導市場の中心的な制度として広く利用されている。  

環境ビジネスにおける活用のポイント

環境ビジネスの観点から見ると、VCSは以下3つの意味を持つ。

(1)企業のカーボンニュートラル対応:企業はVCSクレジットを購入することで、自社の排出量の一部をオフセットできる

(2)自然資本プロジェクトの資金源:森林保全や湿地再生など、自然ベースのプロジェクトに資金を流入させる役割を持つ

(3)ESG・ネイチャーポジティブの評価:生物多様性や地域社会への効果を評価するCCB基準と組み合わせることで、ESG投資やネイチャーポジティブ戦略のツールとしても活用される


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