ASR

ASRとは、「Automobile Shredder Residue」の略称であり、日本語では「自動車破砕残渣」と呼ばれる廃棄物である。使用済自動車(ELV)から有用な金属や部品を回収した後の工程で発生し、一般にはシュレッダーダストとも称される。自動車リサイクル法において、自動車メーカーおよび輸入事業者に引取と再資源化が義務付けられている特定再資源化等物品(法定3品目)の1つに指定されている。
ASRの組成と処理における位置づけ
使用済自動車から鉄や非鉄金属、有用部品を選別・回収した後に残るASRは、廃プラスチック、発泡ウレタン、ガラス、繊維、ゴム、微細金属などが混ざり合った混合廃棄物である。全体の約7割が可燃物、約3割が不燃物で構成されている。
かつては埋立処分場の逼迫や不法投棄の主因として環境問題化したが、2005年施行の自動車リサイクル法によって、フロン類やエアバッグ類とともに適正処理と再資源化が義務付けられた。ASRの発生を抑える手法としては、解体自動車を破砕機にかけずにプレス・せん断し、電炉等へ直接投入して再資源化を行う「全部再資源化認定」の仕組みなども整備されている。
再資源化の実績と「サーマル依存」の課題
自動車リサイクル法に基づくASRの法定再資源化基準率は、2005年の施行当初の30%から段階的に引き上げられ、2015年度以降は70%以上が義務付けられている。自動車メーカー各社が組織するリサイクルグループ(THチーム、ART)による再資源化実績は96〜97%前後で高止まりしており、法定基準を大幅に上回る水準を維持している。
一方で、再資源化手法の質的な構造には課題が残る。実績の約6〜7割は焼却に伴う熱回収(サーマルリサイクル)やセメント原燃料化に依存しており、新たな原材料として再生利用するマテリアルリサイクルは2〜3割程度にとどまる。資源循環の高度化に向け、熱回収中心の処理構造から原材料循環へのシフトが求められている。
循環経済(サーキュラーエコノミー)への転換と今後の展望
法制度の施行から20年が経過し、従来の不法投棄防止や適正処理を中心とした枠組みから、サーキュラーエコノミーへの転換を見据えた制度見直しが進められている。破砕後の高度選別技術の導入に加え、破砕前の解体工程で大型樹脂部品やワイヤーハーネスを回収する「事前回収」の推進が重要な論点となっている。混合・破砕される前に良質な素材を分離回収することで、ASRの発生抑制とリサイクル品質の向上が図られる。
さらに、欧州におけるELV規則案など国際的な環境規制では、新車への再生プラスチック使用義務化が盛り込まれるなど「Car to Car」の水平リサイクルへの要請が強まっている。車両の電動化(xEV化)に伴うリチウムイオン電池の破砕前安全回収やモーター由来の銅・レアアースの選別高度化など、静脈産業と動脈産業が連携したサプライチェーン全体の高度化が不可欠となっている。
【参考】
注目情報(PR)
この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)













