デューディリジェンス(Due diligence)

デューディリジェンス(Due diligence、DD)とは、投資やM&A、不動産取引などの意思決定に際し、対象となる企業や資産の財務、法務、環境、人権などのリスクや実態を把握するために実施する詳細な事前調査である。従来の投資判断に伴う一過性の調査にとどまらず、近年は自社およびサプライチェーン全体における環境破壊や人権侵害などの負のインパクトを特定、予防、軽減、是正する継続的なリスク管理プロセスを指す用語として定着している。
環境・人権分野における対象領域の広がり
従来の環境デューディリジェンスでは、不動産売買やM&A時に実施される土壌汚染対策法に基づく土壌汚染リスク調査や、アスベスト含有の有無を調べるエンジニアリング・レポート、鉱物調達に伴う紛争鉱物調査などが中心であった。
一方、近年のサステナビリティ実務においては、サプライチェーン全体を通じた温室効果ガス排出や水資源の枯渇、森林減少、生物多様性の損失といった環境負荷のほか、強制労働や児童労働といった人権リスクへの対応が求められている。企業は自社拠点だけでなく、原材料の採掘から製造、流通に至るバリューチェーン全体に調査対象を広げている。
欧州を中心とする法制化(ハードロー化)の進展
国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」やOECDのガイダンスに基づく自主的な取り組みから、法的義務と罰則を伴う法制化への移行が進んでいる。欧州では、2024年7月に企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)が発効した。同指令は一定規模以上のEU域内企業に加え、域内売上高が一定水準を超える域外企業も対象となり、2027年7月より順次適用される。違反した場合には全世界売上高に応じた過料や民事責任が科される規定が盛り込まれている。
さらに、パーム油や木材などの原材料を対象に森林破壊への関与がないことを確認するEU森林減少防止規則(EUDR)や、EU強制労働製品禁止規則、蓄電池のサプライチェーンDDを義務付ける改正電池規則など、個別分野ごとの規制も具体化している。これらは直接の規制対象とならない日本の中小・中堅企業に対しても、サプライヤーとしての情報開示や調査対応という形で影響を及ぼしている。
国内の動向と実務対応の要点
日本国内においても、経済産業省が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公表し、環境省も環境マネジメントシステムを活用したバリューチェーンにおける環境デュー・ディリジェンスの導入を推奨している。公共調達での入札要件化やサステナビリティ基準委員会(SSBJ)による開示基準の策定に伴い、実務上の重要性が高まっている。
実務においてデューディリジェンスを運用する際は、すべての調達先を一律に扱うのではなく、調達品目や調達地域の環境・人権リスクの深刻度に応じて優先度を決める「リスクベース・アプローチ」が基本となる。また、1次取引先だけでなく上流の原材料段階まで遡るトレーサビリティの確保、問題発生時に即座に取引を打ち切るのではなく改善を促す対話と協働(エンゲージメント)、通報窓口などの苦情処理・救済体制(グリーバンスメカニズム)の整備が不可欠である。
参考
- 経済産業省 ― 責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン
- 環境省 ― バリューチェーンにおける環境デュー・ディリジェンス入門
- 日本貿易振興機構(JETRO) ― EU企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)関連情報
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