環境対策実務情報メディア「環境ビジネス」
最終更新:2026年10月26日

GRI(GRIスタンダード)

環境ビジネス編集部
環境ビジネス編集部

GRI、またはGRIスタンダード(GRI Standards)とは、オランダのアムステルダムに本部を置く国際的な非営利団体GRI(Global Reporting Initiative)、もしくはGRIが策定するサステナビリティ報告のための国際基準のこと。

企業や組織が経済・環境・社会に与える影響(インパクト)について、投資家、顧客、従業員、地域社会といった多様なステークホルダーへの説明責任を果たすための開示枠組みとして、世界で最も広く利用されている。財務的影響に着目する投資家向け開示基準と並び、非財務情報の網羅的な透明性を担保する世界共通の基準として機能している。

GRI基準の体系とモジュール構造

GRIスタンダードは業種や規模、上場・非上場を問わず、行政機関やNGOを含むあらゆる組織が適用できる。基準全体は「共通スタンダード」「セクター別スタンダード」「項目別スタンダード」の3層構造(モジュール構成)で設計されている。

共通スタンダードはすべての組織に適用され、報告原則や要件を定めた「GRI 1(基礎)」、ガバナンス体制や事業活動、デューディリジェンス方針を扱う「GRI 2(一般開示事項)」、組織の重大な影響を特定して重要課題を抽出する手順を示す「GRI 3(マテリアルな項目)」で構成される。

セクター別スタンダードは石油・ガス、石炭、農業・漁業、鉱業など、環境・社会への影響が大きい特定産業向けに策定されており、該当業種には原則として利用が求められる。項目別スタンダードは、組織が特定したマテリアリティに応じて選択する基準群であり、気候変動や生物多様性、労働慣行といった個別テーマごとの詳細な指標を規定している。

報告形式には、すべての要求事項を満たす「GRIスタンダードに準拠(in accordance with)」と、特定項目のみを選択的に開示する「GRIスタンダードを参照(with reference to)」の2通りが存在する。旧来の「コア/包括」区分は廃止されており、準拠を表明するにはGRI 1〜3の全要件、該当するセクター基準の適用、ならびに厳格な「GRI内容索引」の提示が不可欠である。

インパクト・マテリアリティと主要基準の改訂動向

GRIスタンダードの最大の特徴は「インパクト・マテリアリティ」を主眼に置く点にある。気候変動などの環境要因が自社の企業価値に及ぼす財務的影響を評価するISSB(国際サステナビリティ基準審議会)やSSBJ(サステナビリティ基準委員会)に対し、GRIは自社の企業活動が外部の環境や社会に与える正負の影響を捉える。

近年は国際的な行動規範との整合が進められており、現行の共通基準「ユニバーサル基準 2021」では、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」やOECDのガイドラインに沿った人権デュー・ディリジェンスの開示が義務付けられた。

項目別基準の刷新も進行している。2024年1月には旧GRI 304を改編した「GRI 101(生物多様性 2024)」が公表された。昆明・モントリオール生物多様性枠組やTNFDの枠組みと整合し、サプライチェーンを含む拠点別・生息地別の詳細な影響開示を求める内容となっており、2026年1月1日以降に公表される報告書から適用が義務化される。さらに、気候変動・エネルギー基準(GRI 102/103)の改編や、労働条件・人的資本に関わる基準の再編作業も進められている。

実務における活用と他基準との相互運用

世界の主要企業の7割超、日本の上場企業の約9割がサステナビリティレポートなどでGRIを参照または採用している。法定開示が進む有価証券報告書では投資家向けの財務マテリアリティ(ISSB/SSBJ基準)が重視される一方、ウェブサイト上のサステナビリティデータブック等ではGRIに基づくマルチステークホルダー向けの包括的インパクト開示を継続する企業が多い。

欧州のCSRD(企業サステナビリティ報告指令)に基づくESRS開示やISSBとの間では、重複開示の負担を軽減するため「相互運用性(インターオペラビリティ)」に関するガイダンスやMOUが整備されており、財務とインパクトの両面を開示する「ダブル・マテリアリティ」の基盤としてGRIの役割が定着している。

経営の実務においても、GRIスタンダードを形式的な開示チェックリストにとどめず、自社の重要課題を体系化する指針として活用する動きが広がっている。たとえば、マテリアリティ特定の実践例として三菱重工の経営戦略インタビューでも語られているように、国際的なフレームワークを起点として事業と社会課題の接点を整理し、長期的な経営戦略へ落とし込むアプローチが実務現場で重視されている。

参考

注目情報(PR)

この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)

環境ビジネス編集部

環境ビジネス編集部

環境ビジネスは、温暖化防止のための世界で初めての国際協定である京都議定書が1997年に採択されたことを受けて、その翌年創刊しました。当時、『21世紀は、環境の世紀』といわれ、私たちは、新たな時代の到来はもちろんのこと、新たな産業の息吹を感じ、環境に関するビジネスに役立つメディアを出版することになりました。ウェブマガジン「環境ビジネスオンライン」では、環境業界の注目ニュース・最新トレンド・政策・企業情報解説記事など、実務に役立つ情報・サービスを提供しており、多くの実務層の方々にご参照いただいています。

この情報をシェア


オススメ情報(PR)


新着イベント