GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)

GX推進法とは、2050年カーボンニュートラルの達成と産業競争力強化・経済成長の両立を実現するため、脱炭素成長型経済構造への移行を総合的かつ計画的に推進する目的で制定された法律。
2023年5月に成立し、同年6月に施行された(令和5年法律第32号)。国が先行して巨額の財政支援を行い、将来的な炭素排出への課金を償還財源とする「成長志向型カーボンプライシング構想」を法制度化した基幹法に位置づけられる。
GX推進法の主要な5つの柱
GX推進法は、脱炭素への移行に向けた施策の方向性を示すとともに、投資支援と将来負担をセットにした包括的な枠組みを定めている。中核となる制度や仕組みは以下の5点である。
- 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)の策定:政府が脱炭素移行に向けた基本方針や目標を定め、閣議決定する。
- 脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)の発行:民間のGX投資を誘発する呼び水として、国が10年間で20兆円規模の個別国債を発行し、革新的な技術開発や設備投資を先行支援する(官民合わせて150兆円超の投資創出を目指す)。
- 成長志向型カーボンプライシングの導入:化石燃料の輸入事業者等を対象とする「化石燃料賦課金」と、排出量の多い発電事業者を対象とする「特定事業者負担金」を順次導入し、早期の脱炭素投資を促す。
- 排出量取引制度(GX-ETS)の法定・本格稼働:GXリーグでの試行運用を経て、大規模排出事業者を対象に排出枠の目標設定・算定報告・取引を制度化する。
- GX推進機構の設立:賦課金や負担金の徴収、排出枠の割当や入札管理、さらに民間投資への債務保証や出資などの金融支援実務を担う認可法人を設置する。
カーボンプライシング導入と制度運用のスケジュール
GX推進法に基づく施策は、段階的に社会実装が進められている。法律施行後の10年間(2023〜2032年度)を通じて最大20兆円規模のGX経済移行債が重点分野へ順次投入される一方、排出企業やエネルギー供給者への具体的な制度適用はタイムラインに沿って進む。
- 2023年6月:GX推進法施行、GX経済移行債の発行準備およびGXリーグによる排出量取引の試行開始
- 2026年度(令和8年度)〜:排出量取引制度(GX-ETS)の本格稼働(一定規模以上の排出事業者を対象とする義務化フェーズへの移行)
- 2028年度(令和10年度)〜:化石燃料の輸入事業者・採取事業者を対象とする「化石燃料賦課金」の徴収開始
- 2033年度(令和15年度)〜:発電事業者に対する有償オークション(特定事業者負担金)の導入開始
企業の実務担当者が押さえるべき影響と対応ポイント
自社の直接排出量(Scope 1)が直近3か年度平均で年間10万t-CO2以上の水準にある大規模事業者は、GX-ETS第2フェーズにおける参加義務化の対象となる。該当企業では、排出量の算定や第三者機関による確認、報告体制、さらには排出枠の管理・取引スキームの整備が必須となる。制度の詳細については、大規模排出事業者の参加義務化を解説した記事などで具体像が示されている。
直接の規制対象とならない事業者であっても、2028年度以降に始まる化石燃料賦課金や2033年度以降の発電事業者負担金による影響は免れない。これらはエネルギー供給側へ課されるが、電力料金や燃料調達価格、原材料費へと転嫁される可能性が高いため、早期のエネルギー効率化や再生可能エネルギー調達の前倒しがコスト防衛策となる。
同時に、GX経済移行債を財源とする大規模な補助金や税制優遇措置が順次公募されている。電化や水素・アンモニア導入といったエネルギー転換だけでなく、資源循環(サーキュラーエコノミー)や省エネ設備の導入も支援対象となるため、設備投資計画と政府の支援策をタイムリーに連動させることが実務上重要である。
参考
- 経済産業省 ― GX(グリーントランスフォーメーション)施策概要
- 経済産業省 ― 成長志向型カーボンプライシング構想
- e-Gov法令検索 ― 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和五年法律第三十二号)
注目情報(PR)
この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)













