環境対策実務情報メディア「環境ビジネス」
最終更新:2026年10月15日

ワット・ビット連携

環境ビジネス編集部
環境ビジネス編集部

ワット・ビット連携とは、生成AIの普及や通信トラフィックの増大に伴い急増するデータセンターの電力消費に対し、電力インフラ(ワット)と情報通信インフラ(ビット)を一体的かつ効率的に整備・運用し、エネルギーと計算資源の最適化を図る官民横断の構想のこと。

電力需要地へ遠方から送電する従来型モデルから脱却し、再エネや系統余力のある地域へ計算拠点を分散配置して高速通信網で結ぶことで、送電網の逼迫緩和と脱炭素化を同時に目指すもの。経済産業省と総務省が主導し、GXとDXの統合的な実現に向けた国家重要施策として位置付けられている。

「電力を運ぶ」から「データを運ぶ」への構造転換

従来のデータセンター開発では、通信遅延を抑える目的から大都市圏の需要地近郊に拠点が集中し、遠方の発電エリアから長距離の送電線を介して大量の電力を引き込む形態が主流であった。しかし、生成AIなどの高度な計算処理に要する電力が爆発的に増加するなか、大都市圏への電力供給を維持するために送電網を大規模増設することは、莫大な投資と長期の整備リードタイムを必要とする。

ワット・ビット連携はこの課題に対し、「電力を運ぶ」アプローチから「データを運ぶ」思想へと根本的に転換を図る。再生可能エネルギーが豊富で系統に空き容量がある地方地域にデータセンターを分散配置し、大容量の光ファイバー網を通じてデータを送受信することで、送電系統への負荷とインフラ増強コストを抑えながら迅速な拠点整備を可能にする。

ワット・ビット連携構想の概念イメージ
ワット・ビット連携構想の概念イメージ

実現を支える技術:WLSとAPN

ワット・ビット連携を成立させる中核技術が、ワークロードシフト(WLS)とオール光ネットワーク(APN)である。

ワークロードシフトは、各地域の電力需給の逼迫度、再エネの出力抑制状況、電力市場価格の変動などに応じて、AIの学習や推論といった計算処理負荷(ワークロード)を別の拠点へ時間的・空間的に動的移行させる技術である。これにより、データセンター側が柔軟なデマンドレスポンスとして機能し、系統運用の安定化に貢献する。

この広域負荷移行を支える基盤が、光電融合技術などを活用したAPNである。超低遅延・広帯域・低消費電力を特徴とする先進的なネットワーク網で接続することにより、物理的に離れた複数の地方分散型データセンターを、あたかも単一の巨大な計算基盤であるかのように統合制御できる。

政策ロードマップと社会実証の進展

政府は2025年2月に閣議決定したGX2040ビジョンにおいて、電力と通信のインフラ効率的整備方針としてワット・ビット連携を明記した。同年6月には総務省および経済産業省が「ワット・ビット連携官民懇談会取りまとめ1.0」を公表し、2030年代に向けた展開計画を示している。

ロードマップでは、受電可能エリアを示すウェルカムゾーンマップの活用やノンファーム型接続の柔軟化を進める足元フェーズから、2030年代前半のギガワット級大規模拠点の造成、2030年代後半の高度な広域ワークロードシフトの本格実装へと段階的に進む。

現場の実装に向けた動きも加速しており、総務省の実証事業では九州電力らによる分散データセンター統合運用の実証が開始されたほか、富士通らによる次世代分散型AI処理インフラの実証実験など、電力と通信を横断した運用基盤の検証が本格化している。

ワット・ビット連携実現に向けて留意すべき立地と運用の視点

企業の脱炭素やインフラ計画に携わる実務担当者にとって、ワット・ビット連携は用地選定やエネルギー調達の基準を大きく変える契機となる。データセンターの立地計画においては、従来の都市部への近接性だけでなく、系統容量や再エネ調達性(ワット)と、大容量通信網の引込環境(ビット)を総合評価する地方立地への移行が進んでいる。

さらに、自社のグリーンデータセンター構築や計算拠点運用においてワークロードシフト機能を備えることで、再エネ出力抑制時の余剰電力吸収や需給逼迫時の需要抑制に対応し、電力コストの低減や調整力提供による収益機会へと結び付ける複合的な設計が求められる。

参考

注目情報(PR)

この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)

環境ビジネス編集部

環境ビジネス編集部

環境ビジネスは、温暖化防止のための世界で初めての国際協定である京都議定書が1997年に採択されたことを受けて、その翌年創刊しました。当時、『21世紀は、環境の世紀』といわれ、私たちは、新たな時代の到来はもちろんのこと、新たな産業の息吹を感じ、環境に関するビジネスに役立つメディアを出版することになりました。ウェブマガジン「環境ビジネスオンライン」では、環境業界の注目ニュース・最新トレンド・政策・企業情報解説記事など、実務に役立つ情報・サービスを提供しており、多くの実務層の方々にご参照いただいています。

この情報をシェア


オススメ情報(PR)


新着イベント