バーゼル条約

バーゼル条約とは、国境を越える有害廃棄物等の移動および処分を国際的に規制する多国間環境条約である。正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」。先進国から開発途上国への有害廃棄物の不適正な移動に伴う環境汚染や健康被害を防止することを目的に1989年に採択され、1992年に発効した。
バーゼル条約の仕組みと規制内容
バーゼル条約には189か国・1地域・1機関(EU)が締約しており、日本は1993年に加入した。条約では、有害廃棄物の発生抑制を原則としつつ、越境移動を行う場合には輸出国の責任のもとで適正に管理・処分することを義務付けている。
越境移動に際しては、輸出国から輸入国および通過国に対して有害廃棄物の内容や処理方法を事前通告し、書面による事前同意を得る「事前通告・同意(PIC手続き)」が必須となる。また、非締約国との間での輸出入は原則として禁止されている。
廃プラスチックおよびE-wasteへの規制拡大
締約国会議(COP)での合意を経て、従来の有害産業廃棄物にとどまらず規制対象品目が段階的に拡大されている。
2021年1月には、COP14(2019年)の採択に基づき、リサイクルに適さない汚れた廃プラスチックや混合廃プラスチックが規制対象(附属書II)に追加され、無秩序な輸出入が制限された。
2025年1月からは、COP15(2022年)の決定により、電気・電子機器廃棄物(E-waste)への規制が大幅に強化された。有害物質を含むE-wasteだけでなく、有害特性を持たない非有害なE-waste(附属書II: Y49)についても原則としてPIC手続きの対象となった。これにより、使用済み電子機器や基板、破砕くずなどの国境を越えた取引全般に厳格な管理が求められるようになった。
国内担保法(バーゼル法)と企業の輸出入実務
日本では、本条約を的確に実施するための国内担保法として「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(通称:バーゼル法)が制定されている。廃棄物処理法と連携しながら、環境省および経済産業省が輸出入の審査・承認業務を担っている。
2025年1月のE-waste規制開始に伴い、日本国内でも省令改正とともに「電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準」が策定された。企業の資源循環やスクラップ取引においては、たとえ有価物や中古品名義で取引される場合であっても、性状や混入状況によってバーゼル規制対象物と判定される可能性がある点に注意を要する。
事前の該非判断を怠り、無承認のまま輸出入を行った場合は、違法輸出とみなされて積戻し命令や行政処分、刑事罰の対象となる。アジア諸国をはじめとする主要受入国でも独自の輸入規制強化が進んでおり、事業者は高度な分別体制の確立や国内での再資源化プロセスの再構築など、コンプライアンスを重視した資源循環戦略が求められる。
参考
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