生トン

生トンとは、間伐材や林地残材、木質チップといった木質バイオマス燃料の取引や計量において、伐採直後や未乾燥の水分を含んだ状態の実重量(湿潤重量)を表す業界単位である。
単位表記には「t-wet」や「生t」が用いられ、英語圏では「wet ton」または「green ton」と呼ばれる。水分を完全に除去した状態を示す絶乾トン(BDt)と対比される概念であり、トラックスケールなどによる運搬・受入時の現場計量において広く用いられている。
絶乾トン(BDt)や材積(立方メートル)との換算
木質バイオマスの取引では、水分を0パーセントまで完全乾燥させた重量を表す絶乾トン(ぜっかんとん、BDt: Bone Dry Ton)と、原木丸太などの体積を表す立米(立方メートル)との相互換算が実務上欠かせない。立米から生トンへの換算は樹種や含水率により異なるものの、湿量基準含水率45〜60パーセント程度を想定した場合、1立方メートルあたり概ね0.8〜1.0生トン程度が目安とされる。
一方、生トンから絶乾トンを算出する際は、「生トン調達量 ×(100 − 湿量基準含水率パーセント)÷ 100 = 絶乾トン」という計算式が用いられる。バイオマス発電のFIT/FIP制度における「燃料調達及び使用計画書」の申請審査においては、年間調達数量について原則として湿潤基準含水率50〜60パーセント程度を前提とした生トンでの記載が求められる。木質ペレットなど乾燥処理済みの燃料についても、原料となる生トンベースへ換算した数値を記載する運用となっている。
調達実務における発熱量評価と価格スライド制
発電用未利用材チップの取引価格は、地域や樹種によって幅があるものの、生トンあたり概ね7,000〜11,000円前後(絶乾トン換算で約15,000〜22,000円/BDt)で推移している。生トンによる重量買いを行う場合、水分を多く含む燃料ほど木材本来の実質重量が目減りし、ボイラー投入時の低位発熱量(LHV)が著しく低下する課題がある。
そのため、受入現場で高周波水分計などを用いて含水率を検査し、基準水分を超過した場合には単価を引き下げる「水分スライド制」や「受入上限ペナルティ基準」を設ける取引が増加している。山元の伐出事業者が立米や生トン単位で管理するのに対し、発電所側はボイラー効率や絶乾重量を基準として燃料価値を算定するため、売買契約の締結時に含水率(乾量基準か湿量基準か)の測定手法と換算基準を明確に取り決めておくことがトラブル防止の鍵となる。
物流効率化とライフサイクルGHG管理における課題
近年の木質バイオマスサプライチェーンにおいて、生トンの水分管理は輸送効率と温室効果ガス排出抑制の両面から重視されている。トラックドライバーの時間外労働上限規制などに伴い運搬コストが高騰する中、過度な水分を含んだまま長距離輸送を行うことは、輸送費用の高騰に直結するだけでなく、積載効率を悪化させる要因となる。
さらに、FIT/FIP制度における持続可能性基準(ライフサイクルGHG基準)の適合確認や排出量算定においても、燃料輸送時の軽油消費に起因するGHG排出量が審査対象となる。伐採現場やストックヤードで事前に天然乾燥を行って生トン重量を削減した上で搬送することは、輸送コストの圧縮とサプライチェーン全体のGHG排出削減を両立させる有効な運用策として位置づけられている。
参考
- 経済産業省 資源エネルギー庁 ― 再生可能エネルギー事業計画策定ガイドライン(バイオマス比率等)/燃料調達及び使用計画書チェックポイント
- 林野庁 ― 発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン
- 一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会(JWBA) ― 燃料材の需給動向調査 成果報告書
注目情報(PR)
この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)













