削減貢献量

削減貢献量とは、自社の省エネ・低炭素製品や技術、ソリューションの供給を通じて、自社のバリューチェーン外(顧客企業や一般消費者など社会全体)で回避・削減された温室効果ガス(GHG)の排出量を定量化した指標である。
英語ではAvoided Emissionsと表記され、Scope 1〜3に次ぐ概念として「スコープ4」と呼ばれることもある。従来の標準的な製品や市場平均シナリオと、自社の低炭素製品を導入した場合のライフサイクル排出量の差分として算定される。
算定の仕組みと対象製品
削減貢献量の算定は、一般にライフサイクルアセスメント(LCA)の手法に基づき、原料調達から製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルに至る各段階を考慮して行われる。具体的には、自社製品を導入しなかった場合に想定される最も標準的な基準(参照シナリオ/ベースライン)の排出量から、自社製品導入時の排出量を差し引くことで導き出される。
評価対象となる製品やサービスは多岐にわたり、航空機や自動車の軽量化に寄与する炭素繊維、低損失パワー半導体、高断熱建材などの素材・部材のほか、高効率ヒートポンプや電気自動車(EV)といった機器類、さらには人の移動を代替するWeb会議システムや再エネ運用制御ソフトなどのIT・DXツールも含まれる。
国内外における標準化と政策の動向
日本では、経済産業省が2018年3月に「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン」をいち早く策定した。その後、2023年3月には持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が国際的な共通ルールとして「Guidance on Avoided Emissions」を公表し、GXリーグも金融機関・投資家向けに「気候関連の機会における開示・評価の基本指針」をまとめた。
2023年4月の「G7気候・エネルギー・環境大臣会合」および5月の「G7広島サミット」首脳声明においても、社会全体の排出削減を後押しするイノベーションとして削減貢献量を認識・評価する重要性が盛り込まれた。2024年5月にはGXリーグから事業会社向けの開示仮想事例集が公表されるなど、金融機関によるトランジション・ファイナンスの判断材料や、企業の脱炭素技術を評価する指標として制度整備が進展している。
実務における算定・開示の留意点
実務担当者が削減貢献量を扱う際、特に配慮すべき実務上の要件が存在する。
- 自社排出量(Scope 1〜3)との相殺は不可:削減貢献量は「他者や社会全体の排出を回避した量」であり、GHGプロトコルやSBTiなどの基準において、自社インベントリから差し引いてネットゼロを主張することは厳格に禁じられている。必ず別枠の指標として開示する必要がある。
- 事業成長と排出増のジレンマ解消:省エネ部材や低炭素製品を増産するほど、自社の製造段階(Scope 1・2)の排出が増加することがある。削減貢献量を併せて開示することで、TCFDやSSBJ開示において自社事業の「気候関連の機会」やポジティブインパクトを投資家に示すことができる。
- 客観的な参照シナリオの設定:過度に効率の悪い旧型機を比較対象に設定して削減量を水増しすると、グリーンウォッシュ批判を招く。最新の市場平均や業界基準を踏まえた客観的なベースライン設定が不可欠である。
- サプライチェーン間での重複計上と寄与率:1つの完成品による削減効果には、素材メーカーや部品メーカーなど複数の事業者が関与する。二重計上を防ぐため、技術的な貢献度やコストシェアに応じた「寄与率(Contribution Ratio)」の適用が求められる。
第三者検証と企業実務の広がり
削減貢献量の信頼性を担保するため、国際規格に準拠した第三者検証を受ける事例も出始めている。例えばキヤノンが眼科機器の削減貢献量を算定した事例では、国際電気標準会議が定めた国際規格「IEC 63372」に基づき算定を実施し、国内で初めて第三者検証を取得している。
環境配慮型製品の優位性を市場やサプライチェーンへ客観的に提示する手段として、第三者検証を通じた透明性の確保は、顧客の購買判断やESG投資家のエンゲージメントにおいて今後一層重要性を増していくと考えられる。
参考
- 経済産業省 ― グローバル・バリューチェーンを通じた温室効果ガスの削減貢献
- 経済産業省 資源エネルギー庁 ― イノベーションを通じた企業の課題解決力を計る、『削減貢献量』とは?
- GXリーグ ― 削減貢献量 -事業会社による推奨開示仮想事例集- 公表
- WBCSD ― Avoided Emissions
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