化石燃料ボイラからバイオマスボイラへ設備更新し、契約電力の大幅削減に成功

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新東海製紙は、化石燃料ボイラからバイオマスボイラへの設備更新を国庫補助事業によって実施。エネマネ事業者であるアズビルを活用し、設備更新と併せてアズビルのEMS(エネルギー・マネジメント・システム)を導入することで、1/2の補助率で事業を行うことができた。EMSは4基の自家発電設備を最適化制御することで目標を上回る削減量の省エネルギーを達成。生産コストを削減するとともに地球温暖化対策への貢献を実現した。

エネ合補助金を活用し、バイオマス発電設備に更新

東日本大震災以後の計画停電や電力価格の高騰、さらに電力自由化を契機として、企業の自家発電設備が増加している。中でも製紙産業は生産工程でボイラー・タービンにより変換された電気、蒸気を多量に使用するため、もともと自家発電比率が高いのが特徴だ。さらに製紙業界では2000年代以降、地球温暖化対策として従来の化石燃料ボイラーをバイオマスボイラーに更新する動きも広がった。製紙産業は原料である木材の調達を通じて木質バイオマスの集荷網を構築するとともに、RPFなど廃棄物の集荷網も整備してきたからだ。

特種東海製紙グループの新東海製紙の島田工場でも、従来の電力会社からの購入電力に加え、4基のボイラー・タービンからなる自家発電設備により電力、蒸気を賄ってきた。島田工場は46万2000m2という広大な敷地に並び立つ工場棟で段ボール原紙、クラフト紙を中心に年間約64万トンの産業用紙を生産している。

新東海製紙株式会社 島田工場

新東海製紙では同工場の化石燃料ボイラー2基を2002年にNEDOの補助金、2006年にはエネルギー合理化等事業者支援補助金(以下、エネ合補助金)を活用し、バイオマスボイラーに更新。さらに2011年の大震災をきっかけに、自家発電比率を高めるという方針に沿って、今年1月には残った化石燃料ボイラー1基もバイオマスボイラーに更新した。

新東海製紙株式会社 島田工場

新東海製紙株式会社 島田工場
所在地:静岡県島田市向島町4379
設立:2016年4月
事業内容:紙パルプの製造・加工・販売

牧田氏、浜池氏、小川氏

同社生産本部動力課の牧田陽介課長は「2014年からの3ヵ年事業として、総工費約80億円をかけて発電規模23000kW、ボイラー蒸発量100t/hのバイオマス発電設備を導入しました。年間原油換算で約22800klの化石燃料を削減し、約6年で投資回収を図るという野心的なプロジェクトです。弊社にとって近年、最大の投資案件であり、導入に際しては補助率1/2のエネ合補助金を活用しました。また、補助金の要件であるエネマネ事業者との契約ではアズビルのソリューション提案を採用。更新した発電設備を加えた4基のボイラー・タービンのバランスを最適化して省エネ化を図り、買電量をさらに削減する取り組みにも、挑戦しています」と話す。

多変数モデル予測制御で4基のボイラー・タービンを最適制御

アズビルのソリューション提案は従来、手動で行われていた4基のボイラー・タービンの制御を自動化すること。さらにEMSを導入し、アズビルのリモートセンターと接続し、操業データを3年間にわたり収集・管理、分析することで新たな省エネ化サービスを提供するエネルギー支援管理サービスを実施することだ。

4基のボイラー・タービンは、従来から個々にシステムで制御されていたが、4基を統合して制御する作業は専任のオペレータが担っていた。工場の蒸気需要量を確保しつつ、エネルギー使用量が最小となるポイントを見つけるという難度の高いオペレーションだ。さらにボイラーそれぞれの発電効率が異なる上に、圧力系統などにも微妙な違いがある。

バイオマスの自家発電設備

バイオマスの自家発電設備(左)とバイオマス発電機内のタービン(右)。
バイオマスチップをボイラで燃やし、その熱で蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電を行う。同時にタービンの途中段からは蒸気を抽気し、この抽気を生産プロセスへと供給する。

そこでアズビルでは4基の操業データを詳細に分析し、シミュレーションを繰り返しながら、4基のシステムの上位に多変数モデル予測制御「SORTiATM−MPC(ソーティアエムピーシー)」による制御システムを構築。4基のボイラー・タービンを最適制御し、省エネ化することに成功した。

アズビルではすでに鉄鋼や石油精油プラントなどで「SORTiA−MPC」による制御システムの導入実績を持つ。新東海製紙ではこうしたアズビルの他工場の実績に加え、島田工場のパルプ部門の制御システムなどの実績を評価し、エネマネ事業者に選定した。申請前には、補助事業のエネルギー削減要件である原油換算500kl/年が達成できるかシミュレーションを行い、万全を期したという。

オペレータも参画し、1年間かけてシステムを作り込む

プロジェクトの取りまとめから据え付けまでを担当した技術開発課の浜地晃課長は「手動制御では個々のオペレータの技術に差があるし、また発電停止になることを恐れて、どうしても限界値の手前で制御しがちです。それに比べてシステム制御では操作が均一になり、わずかな変動も見落とすことがないので、人に任せるよりも安全性が高い。エネマネの効果を実感しました」。

SORTiA-MPC

計器室に設置されたSORTiA−MPC(中央、右)とsavic−netTMFX(左)。SORTiA−MPCでは、4基ある発電設備の運転最適化を行っている。また、savic−net FXはアズビルのセンターと接続して運転データを蓄積し、運転状況を可視化することができる。

また、オペレーションの現場を管理する小川係長も「アズビルのSEの方には約1年間、毎月足を運んでいただき、オペレータが参画する形で細かくシステムを作り込む作業をしてきました。そのためか、突然、外部から完成された形で導入されたシステムに比べ、愛着がもてますね。今後もアズビルさんとは相互にシステムを検証し、より良いシステムを構築できればと考えています」と評価する。

この3月には事業完了と省エネ効果を検証する確定検査を実施し、補助事業のエネルギー削減要件である原油換算500kl/年を上回る削減効果を確認することができた。また、契約電力も大幅に引き下げることが見込まれる。予想以上の結果を受け、新東海製紙では、新たな省エネルギー目標を設定するつもりだ。

「最適化制御の運用状況を毎日確認していますが、今までになかった気付きを得ることができています。今後3年間のアズビルとのエネルギー管理支援サービス契約の中で、さらなる省エネルギーと利益の最大化を実現したいと思っています」(小川氏)

「今回の最適化制御は、オペレータも参画しながらアズビルのエンジニアと繰り返し対話を行い、作り込んできました。自分たちも参画して作ったという実感があり、愛着と信頼を感じています。アズビルは打合せを重ねるたびに操業の改善点を発見・提案してくれて、大変助かりました。今後、アズビルには動力設備にとどまらず、工場全体を視野に入れたさらなる最適化と省エネ施策の提案を期待しています」(牧田氏)

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