「農業・畜産と太陽光の共存」がもたらす地域活性化 その事業モデルとは?
農業に新たな可能性を拓く「営農型太陽光発電」。これを農業だけにとどめず、アニマルウェルフェアに則った畜産までを太陽光と共存させた事業に取り組んでいるのが、株式会社グリーンシステムコーポレーション。農家の後継者不足や収入の低下、耕作放棄地の急増などの社会問題に対して、「スマート農業」や「農業版RE100」「6次産業化」を構想。農業を通じた地域活性化を目標に同社が展開する事業モデルとは一体どのようなものなのか。また太陽光ビジネスの未来のカタチとはどうあるべきか。
同社の阿久津昌弘社長と、その事業に太陽光パネルを供給し、協業関係にあるサンパワージャパン株式会社の小西龍晴営業部長に話を聞いた。
Pシリーズパネルの詳しい資料を公開しています。こちら、もしくは文末より資料ダウンロードできます。
太陽光発電との出会いが農業再生のヒントに
阿久津 私はコメ・麦・野菜を栽培し、豚・牛・鶏などを飼育する栃木県芳賀町の畜産農家で育ち、大学で人工授精師の資格をとって家業を継ぎました。ところが、資金等の問題で事業が行き詰まり、いわば挫折を経験しました。
そこで営業職に転職し、偶然出会ったのが太陽光発電でした。それから2002年に独立し、現在まで太陽光発電を中心に約6,000件の創エネ・省エネ工事を手掛けています。また自社で太陽光発電事業も行っており、現状で約20MWほどの発電所が稼働しています。2019年中にはこれを40MW、そして最終的には自社で80MWの規模まで拡大したいと考えています。現在は18円〜21円/kWh案件を約2,000件抱えており、うち約1,500件は販売予定です。
発電事業で収益を上げられるようになった今、再び畜産農業を開始し、発電事業との両立を図っています。当社は、農林水産省が取りまとめている認定農業者制度の認定農業者であり、現在10haの農地(将来的には100haまで耕作面積を増やす予定)でコメ、麦、大豆を営農型太陽光発電の環境下で栽培しています。
また、自社太陽光発電所の下では豚30頭、羊40頭、山羊20頭の家畜を飼育しています。家畜がストレスなく自由に動き回れるように、通常の発電所より太陽光パネルの位置をかさ上げしたり、家畜が逃げないよう微弱電流の流れるフェンスを設置するなど建設費は割高になりますが、アニマルウェルフェアの実現と共に、家畜が草刈り機能を担ってくれるため、十分に見合う投資だと考えています。
また私たちは事業を通して地域農業を活性化させることが目的ですから、FITありきの20年間で事業計画を立てるのではなく、その更に先の20年も見越した次世代にも引き継げる事業計画を立てなくてはならないと考えています。そのためには長期間にわたって使える耐久性の高い発電システムの構築が重要になります。必然的にエネルギー源となるパネル選びには慎重になりますが、そんな中、サンパワーさんのパネルが影に強く、かつ耐久性に優れており、非常に安定した発電パフォーマンスを発揮することを知り、弊社がこれから営農型太陽光発電事業を拡大させていく上で適したパネルと判断し、採用しています。
太陽光パネル選定のポイントは「影への強さ」と「耐久性」
小西 今回ご縁があって、阿久津社長の取り組まれる『営農型太陽光発電事業』に当社のP19シリーズというパネルをご採用いただきました。P19シリーズのパネルは、阿久津社長もおっしゃっていただいたように、影に強く耐久性に優れているという特性を持ったパネルです。
日本では農地であっても、アレイ間の影や隣地の木、電柱など、複数の影が異なる方向からかかってきます。従来パネルでは、影の割合がたとえ10%でも、その影響はパネル全体におよび、出力0%となってしまいます。そこで当社ではパネル内における並列の電気回路およびバイパスダイオードを組み合わせることにより、従来パネルとは異なり、縦と横の両方向の複数の影に対応します。例えば電柱など縦方向の影とアレイ間の影など横方向の影が同時にかかっても約6割の出力を保てます。こうした仕組みから安定した高い発電量を得ることができるのです。またパネル性能低下原因の9割を占める『セル・接続箇所の破損』や『腐食』が構造上起こりにくい設計をしているため、35年以上稼働できる製品として高い信頼性があります。
発電所オーナー様の収益性を高めるだけでなく、次の世代にも安心して引き継げ、自家消費を前提としたこれからのエネルギーのあり方を提唱できる製品です。
「スマート農業」や「農業版RE100」の構想で地域活性化に貢献する
阿久津 私が一度挫折せざるを得なかったように、地方の農業は今衰退し、限界集落化した地域も多く見られます。我々はそうした地域にこそ『営農型太陽光発電』を普及させ、もう一度元気を取り戻してもらいたいと考えています。またこれからますます高齢化の進む地方においては、スマート農業を取り入れることが必須だと考えています。
例えばGPSで3cmの精度で自動運転できる充電式ロボットトラクターを導入すれば、無人で田植えも稲刈りもできます。ドローンを使って農薬を散布すれば、病気や害虫をピンポイントで狙え、農薬の量を10分の1に削減できます。農薬の量の削減は人体への影響を軽減し、さらに農薬コストの抑制にもつながります。
労働時間に関しても、現在、1人で10a(アール)の土地を耕作するには1日に約18時間労働が必要とされますが、スマート化して9時間に生産性を上げれば農業所得は倍、6時間になれば生産性・農業所得は3倍になります。こういった形で重労働から解放されれば、高齢な農家でも十分に対応でるようになります。またスマート農業に必要な電力をすべて自分の農地で賄う「農業版RE100」を実現できればコストカットにつながります。
太陽光発電所の下では豚や羊、牛、鶏等の家畜をのびのび飼育し、営農型太陽光発電の環境下で栽培した自家製の飼料を与え、生産者も生産過程も見える安心・安全で美味しいお肉と加工品としてその地域で販売していく究極の地産地消ビジネスです。
スマート農業と畜産、6次産業化までを太陽光発電事業と融合させ、収益のあがる新しいカタチの農業として推進し、地域活性化に貢献したいと考えています。
小西 日本の国土の13%は農地でありながら、過酷な労働条件や高齢化によって耕作放棄地となり荒れ果てている農地が少なくない。阿久津社長が目指されている事業は、こうした日本の農業に希望の光を与える事業であり、非常に意義深い事業モデルだと思います。当社としては、需要にあったパネルの開発・供給を通じて今後も貴社の事業に関わらせていただければと思います。
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