日産リーフの提案が商機に キーワードは「卒FIT」「災害対策」

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卒FIT対策として、「家庭用蓄電池」となるEV(電気自動車)がスポットを浴びているのをご存じだろうか? 先見性のある設備事業者はオール電化や太陽光発電、省エネルギー商材などの提案差別化を狙い、新たにEVやV2H(Vehicle to Home)のラインナップ化を急ぐ。

EVで有力な日産自動車も、全国の住宅設備事業者や電力会社とタイアップし、それぞれの既存顧客を呼び込む共同集客フェアを開催。新規営業機会を創出し、地域の事業者とWIN-WINな関係構築を目指す。 

卒FITにより拡大する蓄電池市場、さらに、EVが災害対策などでどう活躍しているのか、最新動向を紹介する。

卒FITが始まり、蓄電池への問い合わせが増加

2019年11月以降、固定価格買取制度の対象となっていた住宅用太陽光発電の買取期間が順次終了する。いわゆる「卒FIT」世帯の件数は2019年だけで53万世帯(200万kW)にのぼり、2023年には165万世帯(670万kW)にも達する。

卒FIT世帯では、その後も電力会社への売電を継続することもできるが、売電価格がそれまでの48円/kWhから、7~11円/kWhへと大幅にダウンする。しかも、現在、家庭用電力料金(従量電灯)は1kWh平均24円ほど。加えて今後、再エネ賦課金が上昇し続けるとみられる。

つまり、太陽光で発電した電気は売電せずに、自宅で使用した方が割安になることも想定されるわけだ。そのため、卒FIT世帯では自家消費を選択する世帯も多く、すでに買取期間が終了する前から、住宅設備事業者には家庭用定置型蓄電池への問い合わせが増えているという。

EV「動く蓄電池」も卒FIT世帯の選択肢に

ところが、家庭用定置型蓄電池の導入価格は徐々に下がっているとはいえ、いまだに高価だ。そこで注目されているのが、EV(電気自動車)を導入し、移動手段としてだけでなく、蓄電池として活用する方法だ。リチウムイオン電池の開発で今年度ノーベル化学賞を受賞した吉野 彰氏も「一般家庭向けで蓄電のためだけの用途では設備コストが大きいので、電気自動車の蓄電池で電気を貯めることが望ましい」と語る。

なかでも、日産リーフは2010年発売以来、グローバル販売台数43万台、国内販売台数が13万台を突破し、もっとも信頼性の高いEVとして認知されている。航続距離も長く(322km~458km ※WLTCモード)、定置型蓄電池に比べて大容量(40~62kWh)でコストパフォーマンスが高いことも強みだ。

図表1

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さらに、家庭にV2H(Vehicle to Home)を設置すれば、既存の分電盤に接続するだけですべてのコンセントからEVに貯めた電気を使用することができ、多くの家電製品を同時に使用することが可能だ(200VのIH・エアコンも可)。これは、常時はもちろんだが、災害発生等の非常時でも活用できる。

図表2

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災害時、2~4日給電可能なバックアップ電源として活躍

当然、EVは災害時のバックアップ電源としても役立つ。2011年東日本大震災・停電約840万軒、昨年(2018年)の台風21号・240万軒、北海道胆振地震・295万軒、今年(2019年)の台風15号・93万軒、さらに、先日(2019年)の台風19号でも当初約53万軒の停電が発生。人々にとって「電気」が経済活動のみならず、暮らしに欠かせないインフラであることを痛感させられた。

(左)台風15号で被災した君津市の小糸公民館では、スマホの充電に活用された/(右)君津市清見台公民館の様子

台風15号で被災した君津市の小糸公民館(左)や君津市清見台公民館(右)ではスマホの充電に活用された

実際に、2019年の台風15号による千葉県内での大規模停電は人々の日常に大きな影響を与えた。災害時に日産自動車は被災地にリーフを派遣、スマートフォンの充電や、照明、冷蔵庫、エアコン等を稼働させるための電源として活用された。リーフはこのような停電時において、一般家庭の使用電力で換算すると、約2~4日の給電が可能となっている。

また、災害時には一般的にガソリンの普及よりも電力復旧の方が早いことが知られており、こうしたリーフの「動く蓄電池」という特性により、日産は多くの自治体(三重県、熊本市、東京練馬区など8自治体)や企業と災害連携協定を締結している。

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