超高出力時代の太陽光モジュール
太陽光モジュールの大型化、高出力化競争が激化する中、グローバル大手のトリナ・ソーラー・ジャパンがVertexシリーズ550W、600Wモデルを発表、高出力モジュールの新基準を打ち出した。10月22日にはオンラインセミナーを開催し、トリナ・ソーラー・ジャパン 営業技術部 シニアマネジャー 伊藤 邦泰氏が太陽光モジュールの高出力化の動向と、そのメリットについて解説。高出力モジュールがさらなるLCOE(Levelized Cost of Electricity:均等化発電原価)低減の道を開くと語った。
※セミナー講演資料「超高出力時代の太陽電池モジュールの利点と信頼性」について、環境ビジネスオンライン限定で公開しています。こちら、もしくは文末よりダウンロードできます。
太陽光発電市場はモジュール大型化、高出力化が主戦場に
2020年7月、グローバル大手太陽光モジュールメーカー、トリナ・ソーラーが3月に発表した高出力モジュールVertex500Wに次いで、さらにバージョンアップしたVertexシリーズ550W・600Wモデルを発表した。10月22日にはオンラインセミナーを開催し、営業技術部 シニアマネジャー 伊藤 邦泰氏が太陽光モジュールの高出力化・高効率化の最新動向とともに、モジュールの高電流化への対応、及び太陽光発電プロジェクトでのLCOE低減への方向性を示した。
高出力モジュールは高出力化、高効率化を図ることで、太陽光発電所の初期投資とLCOEを低減する。日本市場においても、今後FITから移行するFIP(フィードインプレミアム制度)での大型太陽光発電所や、商業施設、工場・倉庫の屋根置き自家消費発電所の事業性を大幅に高めることが期待される。
伊藤氏は「大型太陽光発電所向けモジュール市場は出力600W超えという大型化、高出力化が世界の主戦場になっています。高出力モジュールがさらなるLCOE削減の道を開くという時代を迎え、ウェハサイズ標準化の戦いが勃発。特に大型では今後3〜5年の間に、182mm角と210mm角の間で標準化の戦いが進むことが予測されます」と現在の技術動向を捉える。
そうした中でトリナ・ソーラーはいち早く、主力を166mm角と210mm角セルの2本柱に絞りこんだ開発・生産体制の採用を決断。7月6日(上海)には、トリナ・ソーラー、SMAなど太陽光発電業界バリューチェーン39社が「600W+太陽光発電オープンイノベーション・エコロジカルアライアンス」を結成した。
高出力モジュールVertexシリーズで初期投資を低減し、総発電量をアップ
Vertex550W、600Wモデルの『Vertex』は「頂点」を意味し、600Wが210mm60セル、550Wが210mm55セルで、ともにシステム電圧1500Vに対応する。同シリーズの最大の特長は太陽光発電所のLCOEを低減すること。その鍵となるのが初期投資を抑えることと、Wあたりのモジュール発電量を上げることで生涯総発電量を増やすことだ。
そのためVertexシリーズでは「モジュールの開放電圧を50V以下目標に設計することで、一つのストリング(回路)に連結できるモジュールの枚数を増やし、ストリングあたりの出力を最大化しました。当然、1ストリングのモジュール枚数が増えるので架台の総数を減らすことができ、スチール、ケーブルや基礎杭などBOS(周辺機器)コストを削減し、初期投資コストも抑えることができます」(伊藤氏)
実際にVertex 600Wモデルを182mm角セル同等品(出力585W)と比較し、効果を検証すると、182mm角セル同等品では1ストリングに対するモジュール数は24、ストリングあたりのトータルモジュール出力14,040W。それに対し、600Wモデルはモジュール数が32、トータルモジュール出力は19,200Wと、1ストリングあたり総出力が37%も上回った。福島市の出力10MW太陽光発電所プロジェクトの実例でも、過積載率120%を達成している。
また同プロジェクトでは、初期投資のコスト低減も確認できた。600WモデルのBOSコストを182mm角同等品のBOSコストと比較すると、モジュール数-2.5%、ケーブル-27%、架台-27%、設置面積-4%、基礎杭-2.5%と部材・工事コストを低減できるという結果が得られた。
Vertexシリーズ高出力化技術プラットフォームを確立
Vertexシリーズ550W、600Wモデルにはトリナ・ソーラーの誇る4つの要素技術が投入されている。まず1つ目が半導体業界における最大サイズのウェハを採用したこと。インゴットの直径サイズを大きくし、切り出すウェハのサイズを大きくすることで、受光面積を拡大し、出力を高めた。例えば166mm角セル(約6.3W)と比較し、210角セル(約10W)は1枚当たり1.6倍の出力が可能だ。
2つ目は定評のある同社のマルチバスバー製造技術を継承していること。従来のモジュールよりも細いバスバー電極を5本から9本にすることでモジュール効率を0.4~0.6%改善した。3つ目は低温レザープロセスを用いた非破壊カッティングによりクラックのない滑らかな切断面を実現したことだ。導入後もマイクロクラックやホットスポットの発生を低減する効果がある。
そして4つ目が高密度実装プロセスだ。「セルをモジュール化する時の接続技術として、最近はセルの端を積み重ねセル間のギャップを埋める技術が採用されています。しかし、我々は究極的にギャップゼロを目指し、セルの表面積を有効活用し発電効率を向上するためにモジュールを精度よく高品質に作り上げる高密度実装技術を開発しました」。
こうした技術を投入することで、Vertex550・600Wシリーズは超高出力化、高効率化を実現し、大型太陽光発電所向け高出力モジュールの新たな基準を打ち出した。
Vertexシリーズでは500Wモデルがすでに量産出荷されているが、550Wモデルは2021年第2四半期に、600Wモデルが2021年後半に量産出荷が開始される予定だ。
伊藤氏によれば「トリナ・ソーラーの量産能力は現在、10GWですが、2021年には21GW、2022年には31GWに拡張する予定です。210mm角VERTEXシリーズ向け生産比率を全
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