蓄電システムのフロントランナーが構想する「脱炭素社会への貢献と事業戦略」
蓄電システム・V2Hシステム・EV・PHV用急速充電器などの開発を一社で手掛けるニチコンが、これらの機器・システムをインテグレートした複合システムのソリューション提案を強化する。全国の販売パートナーとの連携を強化して販路を拡大し、需要が急増する公共・産業用市場を積極的に開拓、企業の脱炭素経営やカーボンニュートラル達成を後押しする。
※2月25日に正式発表された新製品「全負荷および 200V 対応の単機能蓄電システム」についての詳細資料を公開しています。こちら、もしくは文末よりダウンロードできます。
蓄電システムのフロントランナー
蓄電システムのフロントランナーであるニチコンが令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰を受賞した。蓄電システムやV2H(Vehicle to Home)システム、電動車(EV・PHV)の急速充電器等、リーディングカンパニーとして自立型エネルギーシステムの構築に寄与したこと、可搬型給電器が災害対策支援に貢献したことなどが評価された。
同社はもともと産業界では、電気を蓄えたり放出したりする部品であるコンデンサのトップメーカーとして知られる。2010年にはNECST(Nichicon Energy Control System Technology)プロジェクト(現NECST事業本部)を発足。以来、家庭用蓄電システムやV2Hシステム、EV・PHV用急速充電器、公共・産業用蓄電システムなど、脱炭素社会への貢献とビジネスの拡充へ、独自の新製品の開発や販売活動を進めている。なかでも、主力製品である家庭用蓄電システムの販売台数は累計で8万7,000台に達している(2020年12月現在)。
さらにニチコンでは昨年夏以降、特に菅義偉首相が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明後、公共・産業用蓄電システムを核にした複合システムの引き合いが急増しているという。
NECST事業本部 東京分室 室長の佐久間康雄氏は、RE100に加盟する日本企業が増加したことや、ヨーロッパ、中国を中心としたグローバルでのEV販売が急拡大するなか、企業が脱炭素経営を強化していることが背景にあるとみる。加えて、太陽光発電の導入や省エネの取組みが一巡した企業が、さらにワンランクアップした経済的で高効率な創エネ・省エネ・蓄エネソリューションを求めていることも大きいようだ。
急増する産業用複合システムの引き合い
佐久間氏は「太陽光発電による電気を蓄電し、急速充電器でEVの電源として使いたい。あるいはEVの蓄電池の電力をV2Hシステムを使って、工場や事業所の電力需給バランスを調整したいなど、ここ半年で蓄電システム単独ではない複合システムに関する引き合いが急増しています。案件ごとに実証から導入までを見据え、お客様と検討を重ねている最中です。蓄電システムやV2Hシステム、急速充電器など個別機器の開発で蓄積された技術・ノウハウを、システムインテグレーターとして活かすチャンスがようやく巡ってきました」と意欲をみせる。
こうした複合システムの導入に前向きな事業者は運輸事業者、物流倉庫事業者、損害保険事業者、商業施設、加えて自治体などが中心だ。特に今後、運輸業をはじめとする交通関連分野はEVトラック・バン、EVバスの実用化をにらみ、複合システムの需要が見込まれる。
一方、一般家庭でも売電価格が下がりFIT期間を終えた家庭用太陽光発電ユーザーが年々増加する中、余剰電力を蓄電し、自家消費するというニーズが高まっている。さらに、日本でもEVの普及に備えて、太陽光発電と蓄電システム、EVを1台のパワコンで連携し、電気の使用状況に合わせて効率よくコントロールする家庭用の複合システムにも注目が集まっている。ニチコンではこうしたニーズを先取りし、2017年には太陽光発電と電動車、蓄電池をつなぐ業界初の次世代蓄電システム「トライブリッド蓄電システム」をいち早く市場に投入した。
佐久間氏は「家庭用蓄電システム、さらにトライブリッド蓄電システムに代表される家庭用の複合システムは今後大きな成長が期待されるこれからの市場でありポテンシャルが大きいです。当社では現在、大手ハウスメーカー・大手太陽電池メーカー様とタイアップし、販路を開拓していますが、今後、さらなる販路の拡大に挑戦します」と家庭用市場でも開拓を目指す。
インテグレート力を活かし、高効率複合システムを低価格で提供
今後、ニチコンは、複合システムの活用シーンを商業施設、オフィス、物流センター、スマートハウス、スマートビルはもとより、スマートアグリにまで拡張。V2L(Vehicle to Load)、V2H、V2G (Vehicle to Grid)などを介して、スマートグリッドの形成につなげたいとしている。佐久間氏は、市場の電力を効率的に有効活用するVPP(仮想発電所)についても、実証から導入段階に入りつつあるという。
一方で、蓄電池市場の拡大を見据え、海外メーカーを含めた競合他社が市場に参入している。
「当社の強みは日本で唯一、蓄電システム・V2Hシステム・EV・PHV用急速充電器などを1社ですべて開発から生産まで手掛けていることです。競合他社に打ち勝つ決め手となるのは、こうした機器・システムを最も効率よくインテグレートすることで、お客さまのニーズにマッチした使いやすく、低価格な複合システムを提供することです」と佐久間氏。そのためには、さらに異業種交流を拡げ、情報の受発信を活発化し、官公庁を含めた様々な業界と情報を共有し、市場のニーズを追求することが重要となる。「これからもトップランナーとしての役割を果たしていく」と決意も固い。
※2月25日に正式発表された新製品「全負荷および 200V 対応の単機能蓄電システム」についての詳細資料を公開しています。こちら、もしくは文末よりダウンロードできます。
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