豊田通商と独SFC、低廉な価格帯の燃料電池発売 燃料補給なく2ヶ月供給

  • 印刷
  • 共有

サステナブルな社会づくりの大きなカギとなる水素。豊田通商では〈水素社会の構築〉に貢献するべく、燃料電池の普及促進に尽力する。海外の先行メーカーとの販売契約を結び燃料電池のラインナップを段階的に広げ、直近の2020年9月には、小型燃料電池で世界シェアNo.1の独SFC社と日本独占販売契約を締結。携帯基地局や道路表示灯、風力発電から災害時のバックアップ電源まで、幅広い分野で燃料電池の活用を推進する。

※「SFC社製燃料電池」について資料を環境ビジネスオンラインで限定公開して います。こちら、もしくは文末より資料請求できます。

ダウンロード資料イメージ
▲資料がダウンロードできます

海外で実績のある製品を日本の市場に

豊田通商グループ、6つのサスティナビリティ重要課題

豊田通商グループでは、『人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す』という企業理念のもと、6つのサステナビリティ重要課題を設定している。その1つに〈脱炭素社会移行に貢献〉がある。クリーンエネルギーや革新技術を活用しCO2削減に取組むなか、燃料電池の販売拡大に力を入れる。

豊田通商グループ、6つのサスティナビリティ重要課題
豊田通商グループ、6つのサスティナビリティ重要課題
画像クリックで拡大
豊田通商 グローバル部品・ロジスティクス本部COO 堀崎 太 氏
豊田通商株式会社
グローバル部品・ロジスティクス本部COO
堀崎 太 氏

同社グローバル部品・ロジスティクス本部COOの堀崎 太氏は「モビリティ分野や非常用電源、電気のない地域などで、燃料電池への需要は高まっています」と話す。

なかでも、小型で長時間連続運転の可能な直接メタノール型燃料電池『EFOY』シリーズ(SFC社製)は、陸上・洋上風力発電を建設する前に行われる風況調査に使用する風況観測装置(ドップラーライダー)の電源として多く採用され、販売実績は前年の倍以上になっているという。

2014年にトヨタのFCV(燃料電池自動車)『MIRAI』が発売、世界的な脱炭素への動きもあり、燃料電池の市場は伸びることが予想される。一方で日本の燃料電池市場は、家庭用エネファームと自動車に限定されており、その他の領域に用いられる燃料電池製品はほとんどないのが現状だ。

豊田通商 グローバル部品・ロジスティクス本部 営業開発部 部長 鈴木 健吾 氏
豊田通商株式会社
グローバル部品・ロジスティクス本部
営業開発部 部長
鈴木 健吾 氏

「水素社会の実現に貢献するため、海外で実績のある製品を日本の市場に送り出していく。産業機器、建機関係、船舶、携帯基地局のバックアップなど、そうした分野に製品を先行投入しようと、海外メーカーの販売権を段階的に獲得してきました」と、グローバル部品・ロジスティクス本部 営業開発部 部長 鈴木 健吾氏。

2016年に、燃料電池で30年以上の歴史を持つカナダの老舗、『バラード社』と日本国内市場での販売契約を締結。モビリティ向け、発電所、携帯基地局のバックアップ電源として販売を開始。続いて2017年に、台湾の『中興電工』との契約を締結し、2021年にはSerEnergy社のメタノール改質型燃料電池の販売を開始した。メタノール改質型燃料電池は、主に携帯基地局のバックアップ電源や 洋上風力発電用の風況観測機器であるスキャニングライダーの常用電源として活用されている。

定置式燃料電池の取り扱い製品
定置式燃料電池の取り扱い製品
画像クリックで拡大

そして、直近では2020年9月に、低出力・長時間発電用途で世界トップシェアを誇るドイツの『SFC社』と日本における独占販売契約を締結した。

小型燃料電池のラインナップを拡充

一般的に燃料電池は、ガソリンエンジンやディーゼル発電機に比べ、CO2排出量が少なく、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)が全く出ないことが環境面で優位となる。化学反応で発電するため騒音がほとんどなく、天候に左右される太陽光発電と蓄電池の組み合わせに比べ、燃料補給さえすれば安定的・持続的な電力供給が可能となる。一方で、燃料電池自体の価格が全体的に高いことが、普及の足かせとなっている。

豊田通商 グローバル部品・ロジスティクス本部 営業開発部 FC・環境ソリューショングループ 東島 隼人 氏(左)、 村瀬 友香 氏(右)
グローバル部品・ロジスティクス本部
営業開発部 FC・環境ソリューショングループ
東島 隼人 氏(左)、 村瀬 友香 氏(右)

「豊田通商としては、『燃料電池のデパート』のように、大きいものから小さいものまでフルラインナップで顧客ニーズに応えることを目指しています」とグローバル部品・ロジスティクス本部 営業開発部 FC・環境ソリューショングループ 東島 隼人氏。

燃料電池の中でも、小型燃料電池のラインナップ拡充のため、SFC社との独占販売契約を締結した。

SFC社の直接メタノール型燃料電池は、90%濃度のメタノールを供給し、燃料極で水素を分離、水素が化学反応して電気が発生する。メタノールは水素に比べ取り扱い易く、貯蔵・輸送に優れ、系統電源のない環境で1ヶ月以上の継続的な電力供給が可能となる。

SFC社製直接メタノール燃料電池「EFOY Pro 2800」

SFC社製直接メタノール燃料電池「EFOY Pro 2800」

SFC社製直接メタノール型燃料電池の発電原理

SFC社製直接メタノール型燃料電池の発電原理

豊田通商ではSFC社の燃料電池を2015年から取り扱い、これまでに400台以上を販売してきた。今回の独占販売契約により、風況観測装置を中心に、山間部での無線通信器や、災害時のバックアップ電源、高速道路の道路表示灯、監視カメラやロボットの電源など、多角的な用途で国内の販売強化を図っていく。

SFC社製燃料電池の導入事例
SFC社製燃料電池の導入事例
画像クリックで拡大

価格を抑えた新モデルで新規の顧客ニーズを開拓する

電気系統のない環境で安定的・持続的な電力供給をできる『EFOY』シリーズ。遠隔地での使用ケースが多く、SIMカードを挿入することで、遠隔でも状況管理や設定変更、動作操作ができる仕組みとなっている。ディーゼル発電機に比べ、騒音がないため設置場所を選ばず、メンテナンスは年に1回程度で済むことも大きな特長だ。

「小型で天候に左右されず、連続的に1ヶ月、2ヶ月、電気供給をできる電源として、系統電源がない場所で使用したいお客さまには非常に興味を持っていただけますし、実際に使った方からは高い評価をいただいています。ただ、既存のディーゼル発電機などに比べ、価格が高いのがネックとなっています」(東島氏)

価格面での課題をクリアするため、SFC社では、必要な仕様は満たしつつ、価格を抑えた新しいモデルを開発。欧州では5月に販売を開始しており、日本でも7月から販売をスタートする。

「新モデルの登場で、これまで価格的に燃料電池に手がでなかった分野にも、燃料電池を活用していただける機会が増えるかと思います。これまで使っていなかった分野にも用途を広げることで、燃料電池の販売を拡大し、低炭素、脱炭素社会への移行へ貢献していければと思います」(東島氏)

今後はエンドユーザーへの直接販売、Slerを経由しての販売のほか、代理店販売などもあわせ、多面的な戦略で販売拡大を図っていく。

ダウンロード資料イメージ
豊田通商株式会社 豊田通商株式会社
グローバル部品・ロジスティクス本部COO
〒450-8575
愛知県名古屋市中村区名駅4-9-8
センチュリー豊田ビル
https://ttc-fuelcell.com/


この記事にリアクションして1ポイント!(※300ポイントで有料記事が1本読めます)