国産木質バイオマス発電のエフオンが電力小売事業に参入

  • 印刷
  • 共有

100%国産木質バイオマス発電のパイオニアであるエフオンが、電力小売事業を再開した。日本の林業再生も目指しながら、自社グループに発電源を特定した再エネを販売することで企業の脱炭素経営に貢献する意欲を語った。

国産材100%で発電したCO2フリー電気の販売を開始

2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、企業・自治体では再生可能エネルギー由来の電力を本格的に調達する動きが広がっている。しかし、一般的に小売電気事業者から販売されている再エネ電力は、需要家が発電源を特定できるものが少ないのが現状だ。

こうした中で、国産材100%で木質バイオマス発電事業を展開するエフオンが、昨年5月から、自社グループが発電した電気の小売事業に乗り出して注目を集めている。

トラッキング付き非化石証書を活用し、発電源を自社グループの発電所に特定したCO2フリー電気を30%、50%、100%含んだメニューを高圧需要家向けに提供している。

エフオンは2006年にバイオマス発電事業に参入し、日本の木質バイオマス発電のパイオニアである。

福島県白河市(出力12.1MW)、栃木県壬生町(18MW)、大分県の日田市(12MW)と豊後大野市(18MW)で4基の発電所を稼働させ、電源が所在する東京電力・東北電力・九州電力各管内で電力小売事業を展開する。加えて和歌山県新宮市(18MW)にも、2022年春の運転開始をめどに5基目の発電所を建設中だ。

自社で約3000haの森林を保有し、社員が伐採から植林、育林、苗木生産まで行っている
自社で約3000haの森林を保有し、社員が伐採から植林、育林、苗木生産まで行っている

同社電力事業部の藤井康太朗部長は「バイオマス発電の特長は、太陽光発電や風力発電と異なり、天候などに左右されず24時間365日安定的に電力を供給できることです。さらに当社グループの発電所は年間90%超という高い稼働率を実現しています」と語る。

国産の木質チップのみを燃料にしていることも特徴だ。輸送で排出するCO2を低減するため、チップの大半を各発電所の半径50キロ圏内で調達しており、輸入材や木質ペレットは使用していない。国産木質チップのみでこれほどの規模のバイオマス発電所を運営できる事業者は少ない。

エフオン バイオマス電気の特徴
画像をクリックすると拡大します

「量と品質の両面で安定的にチップを調達できるのは、バイオマス発電が日本に普及する前から、地域の森林組合や木材事業者と1件1件交渉して地道にサプライチェーンを構築してきた成果です。グループ全体で使用しているチップの7割は森林由来の未利用木材で、建築用に使えない低質材を有効活用しています。チップ購入は地域経済への収益還元にもなる。地域の木材を使って発電した電気を需要家に届けたいという思いで、小売事業に参入しました」と環境プラスアルファの価値を強調する。

日本の林業再生と、新しい森林経営モデル構築にも挑む

また事業を進める中で、衰退した日本の林業の現実にも直面した。2013年に森林資源調査を開始したことを皮切りに、山林事業にも参入する。日本の林業を再生しなければならないという信念からだ。

「人工林は適切に管理されなければ健全な森が形成されません。戦後、全国で植林されたスギは収穫適齢期を迎えた今も年々成長し、樹木の体積は増え続けています。一方で林業従事者は減少の一途をたどり高齢化も進んだ結果、伐採すべき木の量に対して労働力が圧倒的に不足しているのが日本の現状です。そこでエフオンは、森林経営と並行して林業人材の育成を開始したのです」と話す。

現在、数十名の山林施業者が正社員として働いており、伐採から植林、育林、苗木生産などの現場経験を積んでいる。海外製の高性能林業機械も導入し、海外と同等の生産性を目指しているという。さらにドローンやAIを活用し、森林資源の計測、樹木の成長率推定や森林による炭素吸収量の算定も行っているほか、皆伐後どのように再造林することが森林と地域の持続可能性の面で最適かという研究も行っている。

藤井 康太朗 氏 森 広器 氏
取締役 電力事業部 部長 藤井 康太朗氏(左)
電力事業部 課長 森 広器氏(右)

「森林が適切に整備されると、水源涵養や生物多様性保全などの波及効果が生まれます。このような循環を作り出すためにも国産の木質チップだけを使うことにこだわっています。その価値を理解してくださる企業に我々の電気をお届けしたい」と需要家にメッセージを送る。

環境先進企業と共にカーボンネガティブを目指す

エフオンの顧客は、大手メーカーの工場、オフィスビルから中小企業にまで広がっている。電力事業部の森広器課長は「再エネを導入する企業が増加するにつれて、再エネ比率を高めるだけでは他社と差別化できなくなっていく。今後は『質』で再エネを選別する時代になるでしょう」と話す。

2030年、2050年を見据えてネットゼロを目指す企業が増加、さらにはカーボンネガティブを宣言した企業も出てきた。カーボンネガティブとは、CO2排出量を吸収量が上回り、ネットの排出量をマイナスにする状態を指す。そのような環境先進企業にこそエフオンの電気を使って欲しいと力強く述べる。

「エフオンが供給する電気の特徴は、CO2フリーであることや、トラッキング付き非化石証書でRE100の要件を満たすといった、当たり前の環境価値にとどまりません。環境負荷低減と持続可能性を追求した自社グループ電源に、森林吸収によるカーボンクレジットなど様々な脱炭素化の手法を組み合わせることも可能です。国産再エネの供給、森林によるCO2吸収、省エネルギー支援によるCO2排出削減といった当社グループの事業をお客様の要望に応じて組み合わせ、共にカーボンネガティブに挑戦していきたい」と意欲的だ。

株式会社エフオン株式会社エフオン

https://kouri.ef-on.co.jp/
TEL:03-6823-6300


この記事にリアクションして1ポイント!(※300ポイントで有料記事が1本読めます)