ブロックチェーン技術で、資源循環型サプライチェーンを構築

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「ITで環境問題に挑む」をスローガンに掲げ、廃棄物管理サービスを提供するJEMSがブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステム「Circular Navi」をリリースした。動脈産業と静脈産業の資源循環をつなぐプラットフォームを構築し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献するとともに、EUで動き出したリサイクル材含有率等の資源循環にかかわる規制を見据え、サービスを提供する。

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動脈産業と静脈産業をサプライチェーンとして束ね、情報を共有

JEMSは創業約30年。「ITで環境問題に挑む」をコーポレートスローガンに掲げ、排出企業向けのクラウドサービス、アウトソーシングによる廃棄物リスク管理体制の構築支援(約650社)、資源循環企業向けの基幹システムの提供(約1,100社)。さらに自治体の一般廃棄物のプラント運営管理や、東日本大震災にかかわる災害廃棄物管理等の事業を展開している。2020年8月には豊田通商株式会社との間で資本提携および包括的な業務提携契約を結んだ。

大手企業を中心に廃棄物管理サービスを提供するJEMSが2021年11月、ブロックチェーンを活用した循環型サプライチェーンを実現するためのトレーサビリティシステム「Circular Navi」を発表し、反響を呼んでいる。システム開発の指揮を執った同社環境DX戦略部の松﨑 飛鳥氏は「大手メーカー(非鉄・繊維・化学・自動車等)、商社様等から、想定を大きく上回るお問合せ、お引き合いをいただき、驚いています」と手ごたえを感じている。

株式会社JEMS 環境DX戦略部 松﨑 飛鳥氏
JEMS 環境DX戦略部 松﨑 飛鳥氏

背景にあるのは、今後、企業活動を継続するためには、脱炭素化とともに、大量生産・大量廃棄の従来型から資源循環型へ事業をシフトする必要があるという認識が産業界に浸透してきたからだ。すでにEUを中心に様々な産業がサーキュラーエコノミーに向けた取組を模索し始めている。例えばEUではプラスチック製品に関し、リサイクル材含有率の数値目標を設定しようという動きがある。こうした中で、課題となるのが資源循環に対応したサプライチェーンの再構築だ。しかし、いまだ資源調達サイクルを巡っては動脈産業と静脈産業が分断されているのが現状だ。

松﨑氏は「資源循環型の経済を確立するためには動脈と静脈を連携する必要があります。しかし、現状では動脈側のメーカー、流通小売事業者は廃棄物を分別しているが、静脈側のリサイクル事業者が望む形で分別できていない。一方、静脈側ももっと適切、厳密な選別・分別ルールを提案し、動脈側と会話を重ねていく必要があります。そうでなければ、処理費用を払って廃棄物を引き取ってもらうという従来サイクルから抜け出し、廃棄物を有価物に変える資源循環は実現できません。そうした動脈と静脈をサプライチェーンとして束ね、製品情報を共有するためのサービスが『Circular Navi』です」と話す。

Circular Navi <機能概略>
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Circular Navi 利用イメージ
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ブロックチェーンで由来そのものを新しい価値として提供する

資源循環トレーサビリティシステム「Circular Navi」の特長はブロックチェーン技術を活用し、顧客や消費者に対し、商品そのものの品質だけではなく、由来そのものを新しい価値として提供することにある。ブロックチェーン技術とはインターネット上で取引を共有し、複数の分散型台帳により取引データの整合性を確認する仕組みだ。そのため、過去のデータを書き換えることが不可能で、情報の改ざんを阻止し信頼性を担保できる。

採用するブロックチェーン技術は「ビットコイン等のようなパブリックなチェーンではなく、サプライチェーンに参加するプレイヤーの数に限定したコンソーシアム型のチェーンを想定しています」という。

例えば「Circular Navi」を廃プラスチック処理・リサイクル分野に導入すると、小売店(排出・回収)→再生(リサイクル)→素材(樹脂)→プラ加工(成形)→販売(納品)の静脈サイクルをロット情報(QRコード、IoTデバイス)によって正確に記録。サプライチェーンのプレイヤーは各々パソコンやスマホで登録・承認・照会し、商品の出荷や荷受時の商品がどのような経路を辿ってきたか、由来を確認できる。

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「Circular Navi」はこうした由来確認により、企業に対して資源循環に貢献するという社会価値を提供するとともに、リスクマネジメント機能も発揮する。例えば、寿命の長い製品にリコールが発生した際も、どのプレイヤーのロットが要因であるか、短時間で特定することができる。製品の真偽確認の重要な記録データとしても機能する。「今後、例えばEU等がリサイクル材の含有率30%を必須要件とした場合、リサイクル材含有率の真偽を担保することが課題となります。そうした時にこのサービスが有効になりますし、さらに規制や制度に対応し、報告書や伝票の提出が義務付けられた場合にも、書類作成の手間が省けます」(松﨑氏)。

トレーサビリティサービスで資源循環+経済的価値を追求する

また「Circular Navi」は製品トレーサビリティとともに、組成や製造ロットごとのGHG量を登録することで、GHG量を推量集計することも可能だ。企業にScope3を含むサプライチェーン全体の排出量開示が求められる中、大きな算定支援となるだろう。

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松﨑氏は「現在、ご協力いただけるお客様3社と約1年間にわたる実証実験に取りかかっており、22年末にはサービスを本格展開する予定です。資源循環トレーサビリティは未来を見据え、これからの課題に対応したサービスです。静脈で流通する廃品をどう種分けしてロットの単位とするか、リサイクル率の定義をどう共通化するかなど、実証段階で詰めていきたい。さらに資源循環という社会価値にプラスし、企業に対し省エネ効果等、どう経済的価値を付加することができるか。新しいビジネスモデルを追求していきたい」と意欲を滲ませた。

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