新開発エネマネシステムで住宅・事務所・EVの再エネ100%利用を可能に
太陽光発電や蓄電システム、V2H事業などを手掛けるACDCは今春、CO2フリー独立電源システム・エネルギーマネジメントシステム(EMS)の販売を開始する。系統電源に依存しない同システムでは、自社開発されたエネルギーマネジメントシステム(EMS)によって、再エネ利用を最大化。EVを再エネ100%で充電できるほか、住宅や事務所などにおいても、系統電源から供給される電力の利用をゼロに抑えることができる。開発秘話やシステムの特長について、代表取締役の菊池 吉浩氏と取締役の西貝 定勝氏に聞いた。
太陽光発電で住宅や事務所・EVの電力使用をすべて賄う
住宅や事務所などの建築物における自家消費型太陽光発電の導入を後押しする新たな製品が、まもなく市場に登場する。福島県伊達市で太陽光発電システムや蓄電システム、V2H事業などを手掛けるACDCが開発した「CO2フリー独立電源システム」だ。系統電源に依存しない同システムは、定置型蓄電池をベースに太陽光発電設備と電気自動車(EV)を連携し、太陽光パネルで発電した電力のみでEVに充電する仕組みである。さらには、負荷追従運転によって、施設の電力負荷と再エネ発電状況に合わせて、蓄電システムとEV電池に溜めた電力を充放電し、施設内の電化製品に供給。中小規模の事務所や住宅などにおいて、再エネの活用を最大化し、系統電源から供給される電力の利用を極力ゼロに抑えるシステムである。
停電時においてもシステムが自立運転で立ち上がり、常時と同じように電気の利用が可能となる。「本来、太陽光発電は自然環境に左右されるため非常に不安定な電源ですが、蓄電池が組み込まれたことで、夜間や雨天時でも充電した電気を使うことができる。まさに、安心安全で災害に強いシステムです」と代表取締役の菊池 吉浩氏は語る。
再エネ利用を最大化するEMSを自社開発
幅広いメーカーの汎用設備・機器とも接続可能
再エネを最大限活用し、建物の電気代や車の燃料代、さらにはCO2排出量をゼロに。これを実現しているのが、ACDCが開発したエネルギーマネジメントシステム(EMS)である。取締役の西貝 定勝氏は、「コンセプトからソフトウェアのソースコード(プログラムに「どんな動作をさせたいか」という処理の内容を書いたテキストファイル)まで自社で開発しました。その結果、太陽光発電や蓄電池の機器を扱う施工会社や販売店のニーズに合わせて、カスタマイズできるように。幅広いメーカーの汎用設備・機器とも容易に接続できるため、コストを抑えた電源システム設計が可能となります」とEMSの特長を説明する。
同社が地産地消型電力システム向けEMSの開発に着手する契機となったのが、2011年に発生した東日本大震災である。「大規模な災害への備えとして、系統電源に依存しない電力システムを作らなければならない。けれど、ディーゼル発電機を利用しては環境配慮が不十分だ」という発想から、再エネ活用を最大化するCO2フリー独立電源システムの開発が震災の翌年から始まった。
2012年はFIT(固定価格買取)制度が開始された年でもあり、太陽光発電に注目が集まっていた。けれど、社会にはまだエネルギーの地産地消という考えは浸透していなかったという。「例えば、EVは走行中CO2を出しません。ただ、石炭や石油を燃料とした火力発電所でつくった電気を使えば当然CO2は排出されている。本当の意味で環境に良い選択だとは言えません。こうした発想から、太陽光発電でつくった電気をEVに充電するシステムや、再エネ利用を最大化するEMSの開発を始めました」と菊池社長。
2017年自社ビルに試験導入、2021年自社ショールームへ展開 今春から販売開始
同コンセプトの実現に向けて動き始めたものの、当初世の中に出ていた製品ではシステム的な制約があり、足踏み状態に。2017年に系統連系型の充放電装置が販売され始めたことが追い風となり、太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせたシステムの原型がようやく完成した。「さらに、他社と差別化を図るため、太陽光発電と蓄電池、EVだけで事務所や住宅の電力負荷を賄えるようにエネルギー管理を最適化するEMSを開発し、システムに搭載しました」と西貝氏は続ける。
同社はこの画期的なシステムを自社の伊達支社に設置し、2017年よりデータ収集を行ってきた。その後「令和2年度 福島県自家消費型再生可能エネルギー導入モデル支援事業補助金」を受け、自社ショールームを開設。そのデータを基に、さらなる改善に向けて昨年度から「令和2年度第3次補正 事業再構築補助金」を受けEMSの開発に着手。課題となっていたソフトウェアのソースコードまで自社で管理できるように変更し、いよいよ今春から販売開始となる。既に、福島県内のファーストフード店や環境ビジネス事業を行う企業への納入も決まっているそうだ。EVの利活用や災害時における非常用電源としての再エネ活用を皮切りに、両社の脱炭素化や電力の地産地消に向けた取り組みを後押しする。
福島からエネルギーの常識を変える
グリーン水素導入で真にCO2フリーのシステムへ
現在、蓄電池は自立運転時にトランスがなくても全負荷の出力を行える田淵電機の製品(単相3線式 200V)を採用している。が、今後は太陽光発電設備や蓄電池システムを手掛ける施工会社などのニーズに応じて、同EMSで対応可能な機器のラインナップを拡充していく予定だ。
また、脱炭素化の切り札として注目される「水素発電」を同システムに組み込むことも検討している。水素が加わることで発電出力が安定化し、蓄電池の容量を抑えられるといったメリットがある。福島県浪江町にある再エネ由来の水素製造施設で造られたグリーン水素を利用する予定で進めており、実現すれば、まさに真にCO2フリーの独立電源システムとなる。
「原発事故によって甚大な被害を受けた福島から、エネルギーの常識を変えていく」。こうした開発者の強い想いから生まれたACDCのCO2フリー独立電源システムが、これからどのように社会に浸透し、我々の生活を変えていくことになるのか。施工会社をはじめとする様々なプレイヤーとの連携によって、脱炭素社会の実現を大きく後押しする一手となることを期待したい。
株式会社ACDC〒969-1603
福島県伊達郡桑折町字上町35-1
(このWEB広告は「令和2年度第3次補正 事業再構築補助金」により掲載しています)