再エネの有効活用へ 独自開発の統合型再エネ制御ソリューション『efinnos(エフィノス)』 外販を開始

  • 印刷
  • 共有

2020年12月に『RE100』加盟を宣言し、再エネ分野に注力することを決めた村田製作所。太陽光発電と蓄電池の効果的かつ効率的な活用を実現する『efinnos』を独自に開発。自社工場への導入・運用を経て、2024年7月からついに外販を開始。同ソリューションの開発の道のり、特長と導入効果について、紹介する。

20240924_murata_download
△上記をクリックのうえ資料をダウンロードください。

◆将来のニーズを見定め、開発を開始

気候変動問題への対応へ向け、世界的に進む脱炭素への取り組み。特に、生産設備で大きく電力を使用する製造業では、省エネに加え消費電力の再エネへの切り替えが重要なポイントとなる。

工場の電力需要は、装置・設備の稼働状況、従業員の勤務形態などで大きく変動する。また、太陽光などの自然エネルギーの発電量は天候や季節に大きく左右されるため不安定である。再エネを最大限に有効活用しながら、安全かつ安定した工場の操業を維持するには、電力需要の変動に応じ、供給量を最適制御するシステムが必須となる。

村田製作所では、『RE100』を宣言する1年前となる2019年から、統合型再エネ制御ソリューション『efinnos』の開発に着手した。

村田製作所・堤正臣氏
村田製作所 堤正臣氏

「再エネやGXが、まだ今ほど注目されていなかった当時から、太陽光や風力などのクリーンエネルギーの変動をいかにコントロールするかが必要になると考え、2019年頃から開発を始めていました」(村田製作所・堤正臣氏)。

『efinnos』は、太陽光や蓄電池のシステムおよび周辺機器からデータを収集し、拠点内の機器や設備別の運転データ、過去の運転実績、外部機関から得た天候などの予想情報をあわせ、人工知能(AI)によって太陽光発電や蓄電池システムを最適制御するソフトウエア。

制御した複数拠点での電力消費や発電・蓄電の状況は、WEBアプリケーションを通じてリアルタイムでモニタリングすることができる。村田製作所では、独自開発した同システムを2021年9月に金津村田製作所クリーンエネパーク(福井県)へ導入。続いて、2023年までに電力需要傾向や地域特性の違う国内4つの自社工場(ワクラ、ハクイ、仙台、伊勢)への導入を完了し、運用を行っている。

「『efinnos』の実証実験という意味でトライ&エラーするために、自社工場への導入を進めてきました。『RE100』の目標達成へ向けスピーディに取り組んできました」(村田製作所・堤正臣氏)

金津村田制作所クリーンエネパーク

最初に導入した金津村田製作所クリーンエネパークでは、796kWの太陽光発電システムと容量1,234kWhの蓄電池システム(2023年現在)が設置されている。『efinnos』によってこれらをAIで制御することで、再エネ比率を10%から15%まで向上、85%をグリーン電力調達することで、再エネ100%を達成している。

◆『efinnos』3つの特長

『efinnos』の主な特長としては3つ。1つ目は、AIを活用し、安全・安定した再エネ活用を実現できること。電力の需給状況や発電状態のデータを基に、過去の実績や天候などの予報情報を加味しながら、AIを活用し蓄電池の充放電を細かく制御。余剰電力をうまく蓄電池に貯め、一方で電力ピークは蓄電池を活用してカットをすることで電気代の削減と再エネ自給率の最大化を実現する。

2つ目は、複数の拠点をまとめてWEBアプリケーション上で監視と管理することができること。また過去のデータを分析し、工場全体の省エネに役立つことに繋がる。

3つ目は、村田製作所の経験豊富なスタッフによるサポートを受けることができること。導入前には緻密なシミュレーションを基にシステムの提案を行い、導入後は顧客と伴走しなら安心できる運用体制を築くことをサービスとしている。「余剰電力の活用とピークカットにおいては、消費電力と発電量の予測データが非常に重要となります。ここをセンシングしながら最適な変動を予測し、制御をかけていきます」(堤正臣氏)

季節や地域によって発電量や消費電力は異なる。村田製作所では、全国5カ所の自社工場で培った経験をふまえ、環境に合わせた細かな制御を可能にしている。

「自動車、化学、半導体、電気・電子機器などをはじめとする製造業の工場や空調設備・冷蔵設備などを備え電力消費の大きい倉庫や事業所などを対象に、まずは導入を訴求していきたいと思います。脱炭素への動きが強まるなか、今後、デジタル化が進むことで電気を多く使う業態も増えてくると思います。将来的にはあらゆる業種・業界へ導入を促していきたいと思います」(堤正臣氏)

2024年7月から外販を開始した『efinnos』だが、既に多くの問合せが来ているという。電気代が高騰するなか、デマンドを監視する意味でも、ユーザーの関心が高まっているようだ。

◆自社工場での経験を活かし導入後も長い目で顧客に伴走

導入支援や導入後に運用支援サービスを提供するというのも『efinnos』の特長の1つ。

導入支援では、事業所の過去の電力データや要望をもとに導入シミュレーションを実施し、期待できる効果を試算。導入後には、5カ所の自社工場で蓄積してきた経験知とノウハウを活かし、導入効果を最大にするための支援サービスを行う。

「太陽光の設置規模も消費電力も電気代も違う5つの自社工場での運用を経験していますので、多様なパターンに対応できることが我々の強みです。事前のシミュレーションにより、最適な太陽光の設置サイズや蓄電池の容量などを、過去の実績をふまえた上で提案することができます」(堤氏)

自社工場に導入することで、太陽光のパワーコンディショナーや受変電設備など、周辺のハードウエア機器に関しての知見も蓄積してきた。周辺機器との接続やシステム構築に関しても、シミュレーションの段階からアドバイスできる。

『efinnos』は導入して終わりではなく、その後も運用環境は常に変わっていく。

「導入後も顧客と一緒に伴走し、消費電力の変化や太陽光、蓄電池増設もあわせ、環境に応じた最適制御を提供できるよう、サポートしていきたいと考えています」(堤氏)

村田製作所は、世界最大級の新エネルギー総合展『SMART ENERGY WEEK【秋】2024』(10月2日~4日)の構成展のうち、VPP/DR・蓄電システム・充電インフラが出展する国際スマートグリッド展『SMART GRID EXPO【秋】』に出展する。ブース(E13-47)では『efinnos』のPRも行う予定だ。

20240924_murata_download
△上記をクリックのうえ資料をダウンロードください。

株式会社村田製作所株式会社村田製作所
住所:〒617-8555
京都府長岡京市東神足1丁目10番1号
技術・事業開発本部
事業インキュベーションセンター
新商品事業化推進部再エネ事業推進課
efinnos_info@murata.com
HP:株式会社村田製作所

この記事にリアクションして1ポイント!(※300ポイントで有料記事が1本読めます)