住友重機械工業の役員が学ぶサステナビリティ 経営層の理解向上が迅速な要請対応に

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脱炭素に関する膨大なトピックに対し、企業のニーズに合わせた研修を提供する「脱炭素カスタム研修」。各種製造装置や精密機械などの製造を行うグローバル機械メーカー・住友重機械工業は、社長含む経営陣に対して本サービスを活用した。サステナビリティ領域で、外部対応だけでなく社員教育も行ってきたサステナビリティ推進部の責任者に、活用に至った背景や活用後の効果・反響、今後の方針を聞いた。

なお、「脱炭素カスタム研修」には社長を含む経営陣35名が参加し、アンケートでは約9割が研修の内容に対し「満足」と回答した。

(左から)住友重機械工業 企画本部サステナビリティ推進部 兼 総務本部環境管理部 主査 小川 陽子 氏、サステナビリティ推進部 部長  坂巻 紅子氏
(左から)住友重機械工業 企画本部サステナビリティ推進部 兼 総務本部環境管理部 主査 小川 陽子 氏、サステナビリティ推進部 部長  坂巻 紅子氏
「脱炭素カスタム研修」のBefore/After
「脱炭素カスタム研修」のBefore/After

『気候変動対応』『人権問題』など、モノづくり企業に寄せられる社会要請

―住友重機械工業のサステナビリティ経営方針と、サステナビリティ推進部での業務について教えてください。

小川陽子氏(以降、小川):住友重機械工業は、1888年に住友グループの祖業である別子銅山の開発で使用する機械器具の製作と修理を担う工作方として創業しました。以来、船から半導体まで、多種多様な一流の商品とサービスを提供し、社会インフラを支えるモノづくり企業として、社会の持続性に貢献することを信念に掲げています。

サステナビリティ推進部では、SDGsに代表される非常に複雑な社会課題に対し、事業活動を通じて優先的に取り組む7つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しています。直近の要請としては、「情報開示」「気候変動対応」「人権DD」が大きく、この3点が業務のメインとなっています。私は2021年の当部発足時からジョインし、主に気候変動対応において、気候移行計画や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などの情報開示、外部評価対応、生物多様性への対応を担当しています。

坂巻紅子氏(以降、坂巻): 私は、2017年からサステナビリティ(当時CSR)推進の立ち上げに従事し、マテリアリティ特定、サステナビリティ基本方針などの基盤構築を担当してきました。当部の発足以降は、主に人権方針策定を担当。現在は部長として推進の全体指揮をとっています。

―サステナビリティ領域の社員教育は、どのように進められていますか。

小川: 前身のCSR推進室では、「サステナビリティ」自体認知されていない状況でしたので、浸透に向けた研修を多く行ってきました。近年では、サステナビリティに対する理解度は深まってきたので、具体的なサステナビリティ関連のテーマに対して知識や理解度を上げることを進めています。

経営層に対しては「ESG視点からの事業課題」や「ビジネスと人権」など、サステナビリティ経営のヒントとなる具体的なテーマを中心に研修会を実施しています。従業員に対してはサステナビリティに関する考え方の解説や、グループとしてどのような取り組みが行われているのかの理解を促す教育をe-ラーニング形式で実施しています。2024年は、自社の「気候変動への適応」「人権・サプライチェーンへの対応方針」を取り上げました。

経営層の理解が要請対応のスピードを変える

―今回、「CFP」をテーマとした「脱炭素カスタム研修」の実施に至った経緯を教えてください。

小川: 企画当時の社内ニーズはそれほど大きいわけではありませんでしたが、欧州の動向などから将来的なテーマになりうるキーワードとして、役員研修のテーマに選定しました。

この分野に関しては、アカデミックな要素が大きいため社会動向・事例を知ることはもちろんですが、それ以上に算定に関しての知識が必要となります。外部の方から多角的に講演いただくことでより丁寧に伝えられると考えました。そこで、「脱炭素カスタム研修」を選びました。

坂巻:CSR推進を始めた2017年から、「社内で知らないことは勉強が必要だ」という方針で、社長旗振りのもと、社会動向を考慮したタイムリーな研修を積極的に実施してきました。外部から要請がきていても、経営層に必要性を理解してもらえないとスピード感をもって対処できません。

最近、クライアントやサプライヤーのアンケートで算定の状況を問うものや、算定の要請も増えてきています。今回の役員研修で算定の重要性や負担感を、感覚レベルでもいいので理解してもらい、要請があった際に現場がいち早く動けることを期待しています。

―研修実施後の反響はどうですか。

小川:おそらくは耳慣れないテーマということもあり、自分ごと化できるか心配していましたが、実際には活発な質疑応答が行われて安心しました。アンケートでは約9割の満足度を獲得しました。「担当領域について今後の対応を考えるきっかけになった」「CFPに対応するためには多大な努力が必要だと感じた」「企業価値の創造の重要性を再認識した」など、今後現場の動きの後押しにつながる理解を促せたことは、非常に良かったと感じています。

坂巻:経営層に新たなトピックについての情報提供ができ、今後の自社方針を固めていく手前の、重要なイベントとなりました。

―今後の、サステナビリティ推進部としての方針があれば教えてください。

小川:サステナビリティ・環境領域は、影響が緩やかなことが多いので優先度が低下しがちです。しかし、持続的に事業活動を行う上で必要不可欠です。いかに、経営層の本気度を上げられるかが私たちサステナビリティ推進部のミッションだと思っています。

また、クライアントの要請が現場から上がってこなくなることが一番の問題です。「そういえばサステナビリティ推進部がなんか言っていたな」程度でもいいので、様々な角度から情報提供し、「とりあえずサステナビリティ推進部に伝えてみようかな」となる関係性をつくることが重要だと思っています。問い合わせには一緒に考えて丁寧に対応し、現場との信頼を構築していくことを強く意識していきたいです。

坂巻:サステナビリティ経営としての課題や要請が多岐にわたり、さらに広がる中で、経営層の関与が求められることはたくさんあります。情報提供にあたっては知識だけではなく自分ごと化や定着まで見通し、優先順位をつける必要があると感じています。

外部要請に対して社内でどうしていくか。ここで「私の部署は関係ない」「この会社で求められているテーマではない」となってしまうと、要請への対応が大幅に遅れてしまいます。昨今の非財務情報の開示要求の拡大により、サステナビリティ推進部だけでなく、人事部など他部署でも経営層への情報提供(研修)が乱立している状態なので、より連携して建設的に情報提供していきたいです。

研修資料の一部抜粋(経済産業省「カーボンフットプリント レポート」を元に研修講師が作成)
研修資料の一部抜粋(経済産業省「カーボンフットプリント レポート」を元に研修講師が作成)
研修資料の一部抜粋(経済産業省「カーボンフットプリント レポート」を元に研修講師が作成)
研修資料の一部抜粋(経済産業省「カーボンフットプリント レポート」を元に研修講師が作成)

「脱炭素カスタム研修」とは

「脱炭素カスタム研修」とは、環境分野の専門季刊誌『環境ビジネス』を発行する宣伝会議が提供する研修です。企業向けe-ラーニングサービス「脱炭素ビジネスライブラリー」で提供する講座を基に、企業ごとの課題に合わせ、カスタマイズした研修の提供で社内教育を支援します。

住友重機械工業が受講した研修名:グループの持続的成長に必要な課題 「カーボンフットプリント(CFP)算定」
受講者:サステナビリティ委員会メンバー/取締役/監査役/執行役員/事業責任者 の35名
研修概要:CFPの世の中の動きや算定におけるポイント、実際の他社の取り組み事例

脱炭素に関する研修についてのお問い合わせ

株式会社宣伝会議 脱炭素カスタム研修事務局
mail:seminar@kankyo-business.jp
TEL:03-3475-3010

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