【フォーラムレポート】Scope3の脱炭素化~事例で学ぶ課題と対応策~

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企業におけるこれからの経営戦略に欠かせない要素となる脱炭素。パーソルプロセス&テクノロジーでは、専門知識とノウハウを持つ人材が、計画から実行まで脱炭素への取り組みをトータルでサポートする。脱炭素化実現へ向けた実務、特にScope3の課題や取り組み事例を同社の梅田 篤氏が解説する。

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サプライヤとの連携構築がカギ

2050年のカーボンニュートラル実現へ向け、企業は自社における温室効果ガス(GHG)排出にあたるScope1、2だけでなく、サプライチェーン全体のGHG排出であるScope3まで含めた脱炭素への取り組みが必須となってきている。

2023年6月には、国際会計基準の策定を担うIFRS財団傘下の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が最初のサステナビリティ開示基準を公表した。国内でも2024年には有価証券報告書へのサステナビリティ部分の情報開示の義務化が付け加えられ、2025年へ向け、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)により、IFRSで検討されているフレームワークの国内への適用が検討されている。

「現状は大手企業を中心に対応が進んでいますが、今後は大手企業と取引するサプライチェーンまで含めてCO2排出を抑制していくことが取り組みとして求められていきます」とパーソルプロセス&テクノロジーGXソリューション部部長の梅田篤氏は説明する。こうした取り組みのベースとなっていくのが、Scope3までを含めたCO2排出量の可視化だ。

Scope3を含めた排出量の算定・情報開示・削減の取り組みを行うには、各サプライヤ企業との連携が必須となる。

「Scope3への対応には、現状を把握した上で一定のロードマップを作成し、それを推進するための体制をつくり、サプライヤへ排出量算定と排出量の削減を要請していく。それを踏まえて今後の打ち手を考えていくことが必要です。サプライヤとの連携がきちんとできない限り、サプライチェーン全体での排出削減は不可能で、ここがボトルネックとなる企業が多々あります」

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一気通貫で脱炭素経営を支援

Scope3への対応における主な課題は2つ挙げられる。(1)サプライヤ企業や連結子会社との連携体制の構築と、(2)社内でのデータ収集体制・オペレーションの確立だ。

「体制の確立においては、経営層・関係会社の理解が重要なポイントとなります。そのセクションで合意形成ができれば、後はスムーズに進む会社が非常に多いです」と梅田氏はいう。

また、関係各所との連携体制を構築し、それを推進するための部署や役割を明確化すること、そして実際に対応する人員の確保も必要だ。

オペレーションの確立においては、業務プロセスの構築・可視化、統一マニュアルの策定、自動化ツールによる効率化、PDCAサイクルの実行などが主なポイントとなる。

AIやIoTなどテクノロジーの活用と業務構築を得意とするアウトソーシングとの掛け合わせで顧客の抜本的なビジネスプロセスの変革をサポートするパーソルプロセス&テクノロジーでは、企業の脱炭素へ向けた取組を、〈脱炭素経営サポート〉として、(1)CO2排出量の算定支援、(2)CO2排出算定ツール導入支援、(3)脱炭素経営コンサルティング、(4)排出量削減施策の実行支援、(5)研修・ノウハウ支援の5つのサービスカテゴリーでサポートする。

「脱炭素経営に向けた第一歩としてのCO2排出量の算定・可視化の支援から、体制の構築、運用プロセス、実行に必要な人材育成まで、一気通貫でサービスを提供しています」

2つの事例で知るScope3対応

今回は特に、Scope3への取り組みに対するサポート事例について2件紹介する。

1件目の事例は、国内における2026年のISSB基準早期適用に備えて、連結子会社を含むScope3排出量の算定に取り組む企業だ。子会社の業務・業態が多種多様で、Scope3排出量算定の対応に苦慮していたという。

課題は大きく分けて2つ。1つ目は子会社とどう連携し算定すればよいか分からないという点、2つ目は自社にScope3排出量算定の知識がなく、子会社への説明ができない点だ。

「1つ目の課題に対しては、多種多様な子会社を業務・業態によってグルーピングし、グループごとに必要な算定範囲を設定しました。2つ目の課題に関しては、算定の背景や必要となる知識について、子会社別説明会や個別フォローを行いました」

まずは、グルーピングした子会社に対して事前ヒアリングを実施。それを受けて、算定に必要なデータの範囲、算定ロジック、データ収集方法などを整理・設定した。その後、算定を行うために必要な情報はどの部分で、どのように算定すればよいのかを統一フォーマットを使用して各子会社へ伝え、Scope3算定の範囲・方法の明確化と、連結子会社との円滑なコミュニケーション体制を確立した。

2件目の事例は、TCFD提言に沿った情報開示へ向けて、具体的な削減のアクションプランを意識しながら、自力でScope3の排出量算定を行っていた企業だ。

Scope3のなかでもカテゴリ1(購入した製品・サービスが製造されるまでの活動におけるCO2排出)の比重が大きく、品種ごとの膨大なデータの調達と、それぞれの算定における工数負担が大きな課題となっていた。

「膨大なデータを同種のものにグルーピングした上で排出量算定が適切に行える範囲で情報の粒度を上げ、データ排出係数を紐づけて、自動化していきました」

具体的には、22万件あったデータを30分類に仕分け、分類ごとに排出係数をかけて、自動的に算出する仕組みを構築。これにより、従来2~3週間かかっていた業務を約1時間で完了できるまでに改善した。

また、Scope3・カテゴリ11(販売した製品の使用に関するCO2排出)については代表製品を基に拡大推計していたため、排出量が極めて多くなっていたことも判明した。

「膨大な出荷パターンがあるにも関わらず1つの製品を代表製品としていたため、排出量が実態に即していませんでした。そこで、環境省のガイドラインを基に製品の販売データを分類し、製品ごとにデータベース化し、算定を精緻化しました」

データが膨大で概算になりがちなScope3算定の効率化と精緻化を実現した。

「パーソルプロセス&テクノロジーでは、ワンストップの支援を大事にしています。我々の持ち味であるプロセスデザインの力を活かし、そこに専門性を加味して企業の脱炭素化を支援していきたいと思います」梅田氏は自信を込めて語った。

 

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