再エネ活用で地域脱炭素と経済活性化を両立するには?

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地域脱炭素を実現するには、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、社会課題の解決を目指すことが重要だ。事業構想大学院大学が開催したウェビナー『地域脱炭素実現に向けた再エネ導入と利活用』では、NTTコムウェアの湯本亮伯氏とイーソリューションズの城内あおば氏が「再生可能エネルギー分野での取り組み 国内サプライチェーン構築に向けて」をテーマに講演した。

湯本 亮伯氏 エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 プロダクトマネージャー、城内 あおば氏 イーソリューションズ株式会社 事業部長代理
(左)湯本 亮伯氏 エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 プロダクトマネージャー
(右)城内 あおば氏 イーソリューションズ株式会社 事業部長代理

膨大な通信インフラ管理で培った技術で社会課題を解決

NTTコムウェアは、NTTグループにおけるITシステムの全体最適化に向けた業務を担っている。通信事業からインフラ設備の運用管理、金融、不動産まで幅広い事業領域をもつ同グループにおいて、全体システムのデザインや業務オペレーションシステムの開発などを行う。膨大な通信設備の管理をサポートしてきたIT技術や、それに伴う大量のデータマネジメントの知見をもつ点が同社の強みだ。また、AIを車載カメラによる道路のひび割れ点検に導入するなど、実証にとどまらず事業化に成功したノウハウも有する。

「これらの強みを組み合わせて、ユースケースに合ったソリューションを創出し、複雑な社会課題を解決することを目指しています」と、湯本 亮伯氏は話す。例えば「SmartMain Tech」というソリューションブランドでは、デジタル技術を活用した新しいインフラメンテナンスとして現場作業のDXや設備の稼働率向上などに役立つテクノロジーを提供するなど、同社は多様なソリューションを通じて、社会インフラのサステナビリティやレジリエンスの向上に貢献している。

長期にわたる設備メンテナンスで蓄積されたデータを皮切りに、設備の早期異常検知や予知保全だけでなく、稼働率保証や事業計画シミュレーションが高度に行えるようになるなど、バリューチェーン全体の付加価値向上を目指している
長期にわたる設備メンテナンスで蓄積されたデータを皮切りに、
設備の早期異常検知や予知保全だけでなく、稼働率保証や事業計画シミュレーションが
高度に行えるようになるなど、バリューチェーン全体の付加価値向上を目指している
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地方における脱炭素の取り組み カギは地域経済活性化

地域脱炭素に関して注目されるのが、環境省が2025年までに少なくとも100カ所の選定を目指す脱炭素先行地域だ。2022年4月の第1回公募で26件、同年11月の第2回公募で20件の合計46地域が選定された。

脱炭素先行地域には既にNTTグループのソリューションが数多く導入されており、一例としてNTTグループの発電事業を営むNTTアノードエナジーは、愛知県岡崎市で公共施設への再生可能エネルギー(オンサイト PPA)の導入検討および地域新電力「岡崎さくら電力」の出資者として、エネルギーマネジメント、先行地域への再生可能エネルギーの供給の検討を実施するという。

今後、脱炭素先行地域を増やし、日本全体でカーボンニュートラルを実現するには、地方の町村などにおける取り組みを創出する必要があると湯本氏は指摘する。「これまでの公募では都市部の採択が多く、地方における取り組み事例が少ない状況です。地方の脱炭素化にあたっては、再エネを地域活性化につなげる仕組みを構築しなければなりません。例えば、木質バイオマス発電を導入すると、木質燃料の調達で林業が活性化され、一次産業の振興に役立つでしょう。再エネの導入が雇用の創出や企業の誘致につながるなど、サプライチェーン全体で地域経済を活性化する地域脱炭素モデルを実現していきたい」と湯本氏は話す。

地方の町村部における「地域経済活性化モデル」サポート例
地方の町村部における「地域経済活性化モデル」サポート例
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風力や木質バイオマスも 地域振興と課題解決を目指す

カーボンニュートラルの切り札とされる洋上風力発電は、2050年に向けて加速度的な導入が予想される。2030年度に累積10GWという導入目標を達成した場合には、経済波及効果が13~15兆円、雇用創出効果が8~9万人とする見込みもある。

さまざまな社会課題の解決に取り組むNTTコムウェアは、こうした風力発電による経済波及効果を地域振興につなげる仕組みをイーソリューションズと構想している。「現在、風車が故障すると、修理用の部品を海外から調達しなければならないケースがほとんどです。発電を止める時間が長引くと、売電収益の逸失が懸念されます。そこで、風車の故障に備えて、修理用の部品を国内で融通・マッチングするプラットフォームや共同輸送のシステムを形成することで、納期を短縮する仕組みを検討しています」と、城内 あおば氏は話す。こうした構想を実現するにあたっては、NTTコムウェアのICTを活かしながらも、地方の大学や自治体と連携しながら社会実装に向けたステップを踏みたいとしている。

城内氏はまた、木質チップを燃料にするバイオマス発電においては、地域の林業に好循環をもたらす仕組みが必要だと指摘する。日本の林業の課題として、適切な森林管理を行っても得られる利益が少なく、管理の負担を避けて討伐する森林所有者が増えていることなどがある。林業の課題にもNTTグループの持つICTソリューションが貢献できると考えており、一例として西日本グループでは森林・林業DXの取り組みの一環として、ドローンを使って山の状態を空撮し、その森林がもつ資産価値やCO2吸収量などを見える化して森林所有者にわかりやすく示す取り組みを行っている。こうした仕組みは、森林によるCO2吸収量をJクレジット化する場合にも役立つという。

「ほかにも、木材の需要と供給をマッチングするプラットフォームの構築や、木材の生産者とハウスメーカーなどの需要家が直接取引できるような仕組みによって、森林所有者が利益を得られるようなコンソーシアムの創設なども検討し、大学や地方自治体と協力して実現していきたいと考えています」と城内氏は意気込む。

地域脱炭素の実現には力強いパートナーが必要

脱炭素先行地域のコンセプトには、再エネの最大限導入や効率的な活用とともに、地域の課題を解決することも含まれる。さまざまなステークホルダーが関係する広範な課題を解決するには、自治体や企業、学術機関などとの力強いパートナーシップが不可欠だ。「こうしたサプライチェーンにおける課題や解決のためのアイディアを駆使して、地域脱炭素のサポートに取り組んでいきたいと考えています。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ気軽にご連絡いただきたい」と湯本氏は力を込める。

 

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イーソリューションズ株式会社

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