ダイヘンの「Synergy Link」で年間CO2削減量が1.5倍に

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2050年カーボンニュートラルに向けて、CO2排出量削減に取り組む企業が増えている。しかし、太陽光発電などの機器をただ導入するだけでは、十分な排出削減効果を得ることは難しいという。各機器を制御するEMSの役割やシステム導入時のコストカットの可能性について、ダイヘン理事の上田 太朗氏が講演した。

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上田 太朗氏 株式会社ダイヘン 理事 電力機器営業本部 東日本統括
上田 太朗氏 株式会社ダイヘン 理事 電力機器営業本部 東日本統括

機器の導入だけでは不十分 有効活用にはEMSが必須

ダイヘンは、1919年の設立以来、変圧器や溶接機、産業用ロボットなどを通じて、電力インフラの高度化やものづくりの発展を支えてきた。近年は、太陽光発電用パワーコンディショナや蓄電池システム、EV充電システムなどエネルギーマネジメント分野におけるソリューション提案によって、CO2排出量やシステム導入のコストの削減にも貢献している。

同社理事の上田太朗氏は、CO2排出削減に取り組む企業が増える中、再生可能エネルギー機器を導入するだけでは、思うような効果が得られないケースもあると指摘する。例えば、太陽光発電を自家消費する場合、休日などで事業所の負荷が小さいと、発電した電気をすべて使い切ることができない。自家消費では通常、余剰電力を電力系統に逆流させる逆潮流が認められないため、発電を停止して出力を抑制しなければならない。また、複数台のEVの充電タイミングが重なって電力デマンド値のピークが発生し、電気料金の基本料金が増加してしまうなどの課題が顕在化しているという。

こうした課題を解決するには、機器だけでなくエネルギーマネジメントシステム(EMS)を合わせて導入することが重要だと上田氏は強調する。「EMSを導入すれば、太陽光発電の余剰電力を蓄電池やEVに充電したり、電力デマンド値のピークを発生させないようにEVの充電をコントロールしたりできるようになります。EMS導入によってCO2削減量が最大1.5倍に増えた事例もあります」

EMS導入効果の試算
EMS導入効果の試算

システム構築費用がほぼゼロ 拡張性が高い「Synergy Link」

同社は、需要家の電気の使用パターンなどに合わせて、太陽光発電、蓄電池、EV充電システムなどの必要な再生可能エネルギー機器をセットアップして提案する自家消費パッケージを提供している。最大の特徴は、独自に開発した自律分散協調制御技術「Synergy Link」というEMSが標準搭載されている点だ。Synergy Linkが各機器の発電や充放電を適切にコントロールするため、休日も太陽光発電の余剰電力を有効活用できる。また、EVを一斉に充電しても電力デマンド値のピークを自動で抑制できる。Synergy Linkの強みは、拡張性の高さだ。「Synergy Linkは一般的なEMSと違い、高機能な中央監視制御装置を必要としません。これまでは、EMSの規模を大きくしようとすると演算量や通信量が増加してシステム構築が難しく、費用が膨らむなどの課題がありました。また、対象機器の増減や更新などに対応しづらいといった問題もあります。それに対してSynergy Linkは、各機器に取り付けた弁当箱サイズの演算装置によって全体誘導指令が配信されそれに応じて各機器が自律的に出力を決定する仕組みです。規模に関わらずシステムの構築費用がほぼ発生せず、拡張する場合も、必要な期間やコストを最小に抑えることができるのです」と上田氏は説明する。こうした特徴から、Synergy Linkは段階的な再生可能エネルギー機器の導入にも役立つ。例えば、1年目は最小容量の太陽光発電を導入し、効果を確認したうえで2年目に増設、3年目に社用車をEV化するなどのステップを踏むことも容易だという。

事業所での導入ステップ例
事業所での導入ステップ例

同社では、自家消費パッケージの導入にあたって、CO2排出量やコスト削減額、投資回収年数などのシミュレーションツールを準備して導入効果の試算に対応している。契約電力や1年分の電力デマンド値のデータなどを入力するだけで、太陽光発電や蓄電池などの適正な設備容量を算出できる。一般的なEMSでは、ときに数千万円というシステム構築の初期費用が導入のハードルになることもある。しかし、Synergy Linkはシステム構築の初期費用や改修費用が不要で、投資回収期間の短縮にも貢献するという。

非常時の電力供給にも役立つ 他社製品との連携も拡大中

こうした特徴から、同社の自家消費パッケージを採用する事例が増えている。太陽光発電と蓄電池を組み合わせて、平常時はピークカット用に、災害時などには非常用電源として活用するケースもある。工場屋根に4MWの太陽光発電を設置した需要家は、Synergy Linkによる高精度なコントロールによって逆潮流を防止しながら、年間約2500トンのCO2削減に成功したという。また、さいたま市のスマートタウンでは、全戸に太陽光発電を設置し、Synergy Linkがコミュニティ全体で発電や蓄電を最適化することによって、停電時も電力供給ができる仕組みを構築した。

同社は、EVの充放電器と蓄電池を活用したV2Xシステムも展開する。非常時の電源としても利用できるEVは、一般的に非常用発電機として活用されるディーゼル発電機と違って騒音や燃料備蓄などの課題がない。「複数台のEVをうまく活用すれば、多拠点の電気を融通して長期間の無停電の避難所生活を送れるようになります。さいたま市の体育館では、非常時はEVが電源となって、併設した太陽光発電の電気も活用して長時間避難所に電気を供給する仕組みを構築しました」と上田氏は話す。

Synergy Linkを搭載した製品には、同社の太陽光発電用や蓄電池用のパワーコンディショナ、EVの普通・急速充電器、充放電器などがある。他社製品と連携することもでき、水素エネルギー機器、V2H機器などSynergy Linkを搭載する製品のラインナップは増加中だ。上田氏は「再生可能エネルギーの最大限活用には、太陽光発電などの機器だけでなく、EMSを導入して適切に制御することが重要です。初期投資を抑えられるSynergy Linkによって、需要家のCO2削減やシステム導入コスト抑制に貢献していきたい」と意欲的だ。

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電力機器営業本部 企画管理部
大阪市淀川区田川2丁目1番11号
問合せ先
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TEL 06-6390-5582

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