廃アルカリ液から水素を 新たな再生技術確立

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様々な資源が高騰する中、産業廃棄物の再資源化、再利用があらためて注目される。中でも再生利用率の低い廃アルカリ液のリサイクルが注目されている。アース製作所はアルミ系廃アルカリ液から水素を取り出し、残ったアルカリ液も再生利用する技術を開発し、事業化へ。さらに事業拡大を目指し、賛同者を求める。アース製作所 代表取締役の高橋 剛氏に聞いた。

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再生利用率の低い廃アルカリ液の再資源化に挑む

高橋 剛氏 アース製作所 代表取締役
高橋 剛氏
アース製作所 代表取締役

産業界において、カーボンニュートラルの実現に向けて廃棄物再利用の取り組みが広がるなかで、課題の一つになっているのが廃アルカリ液の再利用だ。

廃アルカリ液とは廃ソーダ液や金属せっけん液、アルミ製品のエッチング(表面加工)などに使用されたアルカリや、化学工業で使用されたアンモニア廃液など、アルカリ性廃液の総称だ。日本での廃アルカリ液の排出量は226万2000トンで産業廃棄物全体のわずか0.6%であるが、再生利用率は22%と、産廃の中では汚泥に次いで2番目に低い(平成30年度実績・環境省資料)。

こうして廃棄処分されている廃アルカリ液に着目し、再生利用の技術開発を進めているアース製作所に注目が集まっている。廃アルカリ液は従来、産廃事業者に引き取られて大半が焼却か、中和処理されて放流。再生利用は、わずかに分別されたものがパルプの漂白剤に使われたりするなど、低レベルにとどまっていた。

同社の高橋 剛氏は「たまたまエネルギー関連で取引がある企業から、アルミニウムのエッチング工程で排出される廃アルカリ液の処理について相談を受けました。処理費用は10トン当たり約50万円かかるとのことでした。そこで逆に、廃アルカリ液を有価物として買い取り、単に再生利用するだけでなく付加価値を生み出すような商品開発ができないかと『アルカリ液再生事業』を立ち上げました」と話す。

高橋氏は約20年前、バイオディーゼル燃料に着目し、添加剤から製造プラントの設計・施工までの技術開発に従事。その後も、同社を拠点に幅広い産学とのネットワークを構築。一貫してエネルギーを中心とした環境関連技術の開発にかかわり、現在は水素発生装置など水素関連技術開発にも挑んでいる。

アルミニウムとアルカリ液から水素を発生させる

アルミニウム水素発生装置
アルミニウム水素発生装置

アース製作所が進めている「アルカリ液再生事業」の核となるのは、アルミニウム水素発生装置だ。まず工場から排出されたアルミ系廃アルカリ液からアルミとアルカリ液を分離し、アルカリ液を再生するとともに苛性ソーダ液とアルミを反応させて水素を作り出す。さらに水素を発生させた後に残る副産物である水酸化アルミニウムやアルミニウム原料(アルミナ)も再資源化し、様々な分野で再生利用することが可能だという。

たとえば、化粧品、美白剤、入浴剤やエステサロン商品。肥料や防虫剤。カーテン、壁紙、コネクターの難燃用途や、人工大理石などの建築資材など、幅広い商品に再利用できる。

アルミ系廃アルカリ液の再資源化について高橋氏は、「大手非鉄金属企業などとも提携し、幅広く情報交換を進めている最中です」と説明する。一方同社では、すでに採算性も見極めて、水素発生装置も含めた製造プラントも設計・施工し、事業化に乗り出している。

「私が環境技術を通して目指すのは、地球環境や人に対して良いものやオーガニックな素材を商品化し、ユーザーに癒しを与え、喜んでいただくことです。廃棄物処理・再資源化の取り組みもいまや、行政サイドから民間が担う流れへと変わりつつあります。すでにナイキやエルメスといったハイブランドでも廃プラスチックや自然素材を積極的に取り入れ、商品に新たなストーリー、付加価値を持たせています。アルカリ液再生事業でも、廃棄物の再利用とともに、こうしたストーリーを含めた商品設計をしています」と高橋氏は再生事業への意欲を話す。

再生事業に賛同する事業者とコラボを組み、事業拡大を目指す

2022年8月1日には、その第一弾として廃アルカリ液から取り出した水酸化アルミニウムを再生利用した入浴剤を自ら開発・製品化し、「楽天市場」に出店した。入浴剤には花崗岩から抽出した天然の水素ミネラルと水酸化アルミニウムを含み、強い美白効果がある。

「家庭だけではなく、ホテルやスポーツ施設などでも環境に優しい入浴剤として活用していただけたらとOEMや入浴剤開発等のご相談にも応じていきたい」(高橋氏)

高橋氏は同社の商品開発は単なる販売目的ではなく「アルカリ液再生事業」を拡充するきっかけにしたいと考えている。

「事業として採算がとれるが当社だけではできることが限られています。とりあえず、アルミ系廃アルカリ液を排出する事業家の方、産業廃棄物の再資源化に賛同いただける方とコラボを組み、アルカリ液再生事業をスケールアップし、事業を広めていきたい。またアルミ系にかかわらず廃アルカリ液の処理問題を抱えている方のご相談にも対応し、技術的なアドバイスやソリューションを提案していきます。産業廃棄物を単に再生利用するだけでなく、人の楽しみや文化に貢献できる廃棄物の出口を追及していきますので、賛同いただける方は是非、手をあげていただきたい」と新たな再生事業の確立を目指す。

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