NTTアノードエナジー、〈再エネ〉×〈通信〉で脱炭素社会の実現を目指す

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NTTグループのリソースを活用し、日本のエネルギー安定化に貢献

NTTグループの技術やアセットを活用したスマートエネルギー事業の推進を目的に、2019年6月に設立したNTTアノードエナジー。脱炭素社会実現へ向け、多角的に取り組む同社。今後のビジョンや挑戦について、社長の岸本 照之氏に聞く。

NTTアノードエナジー株式会社 代表取締役社長 岸本 照之氏
NTTアノードエナジー株式会社 代表取締役社長 岸本 照之氏

グループのビジョン実現に、大きな役割

NTTグループの新たなスマートエネルギー事業の推進に向け、2019年6月に設立したNTTアノードエナジー。グループ会社であるエネット、NTTスマイルエナジーとともに、〈グリーン発電事業〉〈地域グリッド事業〉〈需要家エネルギー事業〉〈構築・保守オペレーション事業〉の4つを柱に事業を展開。太陽光をはじめとした再エネ電源を自社で開発し、顧客企業やNTTグループ各社へ提供するほか、蓄電所の設置を通じたエネルギーの安定化を図ることで、電力の地産地消も進めている。

2021年9月、NTTグループは、2040年度のカーボンニュートラルを目指した新たな環境エネルギービジョン『NTT Green Innovation toward2040』を策定。『事業活動による環境負荷の削減』と『限界打破のイノベーション創出』を通じて環境負荷ゼロと経済成長の同時実現を掲げている。

同ビジョンでは、2040年までに次世代の通信技術である『IOWN(アイオン)』の導入により電力消費を削減し、温室効果ガスを45%削減すると同時に、再エネ利用の拡大で温室効果ガスを45%削減することを見込んでいる。このうち、再エネ利用拡大において、NTTアノードエナジーの担うべき役割は大きい。

2022年6月に、NTTアノードエナジーの社長に就任した岸本氏は、長くNTT西日本で通信設備の責任者を務めてきた。

「NTT西日本で使用する電力のうち、6~7割は通信設備用です。通信設備の仕事をしながらも、エネルギーの問題をどうしていくかということは、常に頭にありました」

NTTの電気使用量は、国内で使用される電気の1%を占め、大需要家と言える。世界的な脱炭素の流れのなかで、自ら使うエネルギーをどう変えていくかという時に、スマートエネルギー事業が重要なカギとなる。

「脱炭素、サステナブルへの動きに加え、ウクライナ危機をはじめとしたエネルギー市場の需給ひっ迫。この時期にNTTアノードエナジーの社長に着任したことは、プレッシャーもありますが、チャレンジングなタイミングであると同時に、一気に飛躍できるチャンスであると思っています。NTTの通信とNTTアノードエナジーのエネルギーを組み合わせ、NTTグループの環境負荷低減の取り組みをけん引していければと考えています」

再エネの専門集団

2022年7月には、まちづくり事業会社であるNTTアーバンソリューションズのグループ会社であるNTTファシリティーズの電力関連業務を継承・統合した。

NTTファシリティーズは、1992年の設立以来、『建築×エネルギー×ICT』の融合技術を駆使した統合ファシリティサービスを提供してきた。長年にわたり、全国の拠点においてNTTグループの通信用電源設備の設計・管理、監視・保守を担い、太陽光発電所の構築・運用・保守を中心とした再エネの推進に向けた取り組みを展開してきた。

今回、NTTファシリティーズの通信用電源設備及び太陽光発電所の設計・保守を中心とした電力エンジニアリング業務等をNTTアノードエナジーに移管・統合。

「当社の4つの事業の柱の1つに〈構築・保守オペレーション事業〉がありますが、この7月にファシリティーズから、離島まで含めた電力の保守部隊約2,600名が移籍してきました。通信の要とも言える、電力設備の構築から保守運用を24時間365日できる人材が揃うことは、大きな強みとなるでしょう」

NTTグループには通信の専門家は多くても電力のプロはあまりいない。今回の電力関連業務の統合で、NTTグループ内の電力に関わる人材・技術・ノウハウがNTTアノードエナジーに結集する。

「再エネ部門を一手に引き受ける専門集団。通信、ICTのことが分かる電力の専門人材が集結する事業会社というのが、NTTグループにおけるアノードエナジーの位置づけかと思います」

エネルギー起点のまちづくり
パートナーとの協働で地域を元気に

「東京一極集中から地域分散へ、時代は移り変わっています。エネルギーも、大規模な火力発電から分散エネルギーになっていく。そうしたなか、地域や地域の企業、金融機関、自治体と、どう地産地消モデルを作り上げていくかが重要となっていきます」

NTTアノードエナジーでは2022年より、地方自治体向けに『地産地消率向上サービス』を提供開始。今回、民生部門のカーボンニュートラル化に取り組む地方自治体の共同提案者等として『第2回脱炭素先行地域』に申請した結果、以下、5つの自治体が選定された。

栃木県宇都宮市『コンパクト・プラス・ネットワークによる脱炭素モデル都市構築』。
同社の役割:地域新電力の出資者としてバイオマス発電や卒FIT家庭用太陽光にとる再エネの一括調達、市有施設やLRTへの受電カ所に導入する大規模蓄電池を活用したエネルギーマネジメントを実施。

山口県山口市『ゼロカーボン中心市街地』。
同社の役割:公共施設群へのオンサイトPPAによる太陽光発電の導入検討、清掃工場や最終処分場跡地へのオフサイトPPAによる大規模太陽光発電・蓄電池の導入検討、ならびに地域新電力の組成検討。

岩手県宮古市『広域合併したまちの脱炭素地域づくり』。
同社の役割:公共施設への再エネ(オンサイトPPA)の導入検討や、地域新電力の出資者として、地産地消の拡大につながる新規再エネ発電事業の検討。戸建て住宅への再エネメニュー創設の検討。

愛知県岡崎市『どうする脱炭素?岡崎城下からはじまる、省エネ・創エネ・蓄エネ・調エネのまちづくり』。
同社の役割:公共施設への再エネ(オンサイトPPA)導入検討および地域新電力の出資者としてエネルギーマネジメント、先行地域への再エネの供給を検討。

千葉県千葉市『脱炭素で磨き上げる都市の魅力』。
同社の役割:コンビニ、スーパー等へのオフサイトPPA導入検討、大容量蓄電池の設置、エネルギーシェアリングダウンタウン内のエネルギーマネジメント等。

「NTTグループは、通信という観点で、これまで企業、自治体、まちの活性化、課題解決をしてきました。それを今度はエネルギー起点でもやっていく。一社ではできませんので、様々なパートナーとコンソーシアムを組み、パートナー同士のシナジーを発揮して課題解決していくことが必要です。地域の電力会社、ガス会社、EVメーカー、様々なパートナーと共に、地域を盛り上げ、日本全体を元気にしていきたいと思います」

地産地消率向上サービス
地産地消率向上サービス

通信ビルを蓄電所として展開

エネルギー起点のまちづくり、〈地域グリッド事業〉を進めていく上で、カギとなるのが蓄電池。NTTグループでは、日本全国に約7,300カ所のNTTビルを持ち、停電時の通信確保などのために、約400万kWhの蓄電池を保有している。NTTアノードエナジーでは、これらの蓄電池を利活用し、再エネ拡大や電力系統安定化に資するための蓄電所事業を全国に展開する。

蓄電所事業では、全国各地に設置する蓄電池を適切に遠隔制御するためのEMS(Energy Management System)が必要不可欠。蓄電池による制御量(充放電量)を決定するには、気候の影響が大きい太陽光をはじめとした再エネの発電量を、ある程度予測する必要がある。グループ会社であるNTTスマイルエナジーでは、現在、全国に約8万7,000拠点にある太陽光発電施設のデータを見える化しており、その発電パターンを比較することで天気を予測。さらにそのデータをAIでパターン化し、同じくグループ会社のエネット(新電力)で需給予測に使っている。

「昔の通信ビルは1階に電話の受付窓口があり、人の集まる場所でした。現在は無人化していますが、そこに蓄電池や給電設備を設置しうまく活用できれば、災害時のハブや地域グリッドを構成する時の主要な拠点にもなっていくでしょう」

NTTアノードエナジーでは、NTTビルを蓄電所として全国に展開し、EMSを駆使して蓄電所を制御することで、より多くの再エネを電力系統に接続できるようにし、地域内の脱炭素化や電気の地産地消に貢献することを目指していく。

4つの事業を一連のバリューチェーンに

NTTアノードエナジーでは、〈グリーン発電事業〉〈地域グリッド事業〉〈需要家エネルギー事業〉〈構築・保守オペレーション事業〉の4事業を一気通貫のバリューチェーンで結びつけることで、スマートエネルギー事業を展開していく。〈グリーン発電事業〉では、開発機能を強化し再エネ発電所の開発に取り組む。〈地域グリッド事業〉では、NTTグループの保有するアセットの活用拡大により、再エネの地産地消とレジリエンス強化を推進。〈需要家エネルギー事業〉では、脱炭素ソリューションの展開により需要家のカーボンニュートラルを推進。そして、〈構築・保守オペレーション事業〉では、電力エンジニアリング機能の強化で品質向上と効率化をめざしていく。

4つの事業の1つ〈需要家エネルギー事業〉の1つのソリューションとしてオフサイトPPAがある。2021年3月には、セブン-イレブン40店舗およびイトーヨーカ堂の1店舗にグリーン電力を導入することを発表している。

「4つの事業は、1連のバリューチェーンだと考えています。再エネを作る、運ぶという意味での〈グリーン発電事業〉〈地域グリッド事業〉、使う、提供する意味でのオンサイト、オフサイトPPAといった〈需要家エネルギー事業〉、溜める意味での蓄電池、そして、災害時も含めた保守オペレーション。こうしたバリューチェーンを全国津々浦々で展開できる。これをNTTアノードエナジーの強みにしていきたいと考えています」

さらに、脱炭素社会における水素大量消費社会を見据え、NTTの通信用管路を活用した水素のパイプライン輸送モデルの構築へ向けた挑戦も開始している。

NTTアノードエナジーでは今後も、同社のスマートエネルギー事業とNTTグループのICT、最先端技術を融合し、脱炭素社会の実現に向け電力のグリーン化、エネルギー起点の街づくりを進めていく。

 

NTTアノードエナジー株式会社NTTアノードエナジー株式会社
〒108-0023 東京都港区芝浦3丁目4番1号 グランパークタワー
URL:https://www.ntt-ae.co.jp/

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