【セミナーレポート】脱炭素経営 省エネの先の再エネ転換へ 実践のポイント

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2024年12月6日、宣伝会議 環境ビジネス本部主催の環境セミナー『非化石エネルギー転換へ 実践のポイント ~省エネから再エネ、そして属性証明へ~』が開催された。企業のカーボンニュートラルへ向けた取り組みが進むなか、非化石エネルギー転換へ向けた実践ポイントや属性証明の活用法などについて、3名の登壇者が講演した。

“省エネ”が世界的に重要な位置づけに

資源エネルギー庁 中西氏
資源エネルギー庁 中西氏

大企業をはじめ、そこに連なる中堅・中小企業にとっても重要性を増すカーボンニュートラルへの取り組み。今回の環境セミナーでは、工場・事業所の担当者を対象に、非化石エネルギー転換に向けた考え方や実践のポイント、再エネ導入のスキーム、属性証明の活用法などを紹介。第一部では、経済産業省 資源エネルギー庁省エネルギー課の中西拓也氏が『省エネルギー政策の動向』と題し、エネルギー政策を取り巻く状況や支援策を解説した。

ロシア・ウクライナ問題、イスラエル・パレスチナ情勢、イスラエル・イラン間の軍事的緊張などを背景に、エネルギー価格の高騰やエネルギー安全保障が脅かされるなか、脱炭素への関心と要求が一層高まっている。省エネの重要性が世界の共通認識となっており、COP28では、世界の年間エネルギー効率改善率を2倍に引き上げることが合意され、G7首脳会合では“省エネは第一の燃料”と掲げられた。

「日本の第6次エネルギー基本計画では、“徹底した省エネ対策で6200万kℓのエネルギー消費の削減”を見込んでおり、これは、オイルショック後のエネルギー消費効率改善を上回る野心的な目標」(中西氏)

国では、規制と支援の両輪で、企業の省エネ及び非化石エネルギー転換を促進する。規制面では、省エネ法が改正され、2023年4月から施行。企業は、徹底した省エネに加え、非化石エネルギーへの転換や電気需要の最適化(DR【ディマンド・レスポンス】等)に努め、状況・実績を国に報告することなどとした。

一方、支援策としては、『令和6年度補正予算』において、省エネ支援パッケージを用意。特に中小企業へ向け、設備投資と省エネ診断に対する支援を厚くし、GXへの第一歩として省エネを強力に推進していく。

国際ルールに適応する証書の活用を

カシオ計算機 篠田氏
カシオ計算機 篠田氏

第2部では、カシオ計算機 執行役員の篠田豊可氏が、同社のサステナビリティ経営について講演。

カシオ計算機では2024年11月、創業からの理念である『創造貢献』をより具体化したパーパス“驚きを身近にする力で、ひとりひとりに今日を超える歓びを。”を策定。パーパスを中心に据え、自社の持続的な成長と持続可能な社会への貢献の両輪で、サステナビリティ経営を推進する。

サステナビリティ戦略の重要な位置を占める“脱炭素社会の実現”に向けては、省エネと非化石エネルギーの導入拡大を図る。現在、『RE100』に加盟し、SBTの認証を受けたスコープ1.2.3の削減目標へ向け、取り組みを進める。スコープ1.2については徹底的な省エネと積極的な再エネ導入で、国内使用電力の約90%、グローバルでも約40%まで再エネに切り替える計画。

「残る海外の生産拠点や販売拠点についても順次再エネ化していきますが、どうしても残る分については、『I-REC』といった証書の活用も視野に入れていきます」(篠田氏)

スコープ3については、部品開発を1つの切り口に、大きく脱炭素に貢献するような部品開発を、サプライヤーとの共創で実現していく。

「原料・資源を地球環境に配慮したものに完全に切り替え、どんな商品を企画し、世の中にどう貢献していくかまでを一気通貫で考えていきます」(篠田氏)

自然エネルギー財団 高瀬氏
自然エネルギー財団 高瀬氏

第3部で登壇したのは自然エネルギー財団のシニアマネージャー・高瀬香絵氏。前職のCDP日本支部でSBTに関わり、同財団では、電力のシミュレーションをする傍ら、SBTの技術諮問委員やGHGプロトコル改訂の技術諮問委員を務めている。

「世界では、自然エネルギーを中心とした脱炭素が目指されています。G7では“2035年までに電力の完全脱炭素化”を目標に掲げています」(高瀬氏)

日本で自然エネルギーを購入する方法は4つ。〈自家発電・自家消費〉〈コーポレートPPA〉〈自然エネルギー由来の証書購入〉〈小売り電気事業者からの購入〉。ただ、せっかく自然エネルギーを購入しても、森や原生林を切り拓いて開発した太陽光などからのエネルギーでは、評価されない。

日本独自の非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットと比較し、国際的な再エネ電力証書である『I-REC』は、「第三者がしっかりと監督する機能が働いていることから、国際的にも信頼が高く CDP や RE100 でも認知されています」(高瀬氏)

「良質の自然エネルギーを購入することが重要です。自然エネルギーや気候対策に関する国際ルールは今大きく変わろうとしていますので、アンテナをしっかりと張っていきましょう」(高瀬氏)

国際的に信頼性の高い『I-REC』で質の高い脱炭素を

SCSK enetrack

今回のセミナーに協賛したSCSKはこれまでのIT事業の枠を超えて再エネ属性証書のプラットフォーム 「EneTrack」を運営。『I-REC』の取引と発行、移転、償却のサービスを提供している。

『I-REC』は再エネ属性証書の1種で、国際的に認められていることが特徴。電力が「いつ・どこで・誰が・どの方法で・どのくらい」発電され、誰が使用したかという属性を明らかにできる。

そのため需要家は、『I-REC』を償却するこことで、CDPやRE100、SBTなどで「再エネ電力を使用している」ことを証明できる。一方、再エネ発電者は、『I-REC』を発行することで、その電力が再エネであることを国際レベルで証明し、それを経済価値にできる。

セミナーを企画したEneTrack部の橋沼 和子氏は「本セミナーでは、工場や事業所の現場で脱炭素に取り組む皆さまに、省エネの政策動向や省エネ・再エネに関する企業の取り組みの事例、気候変動問題に関する世界の潮流、そして属性証明について知識を深めていただく機会としたいと考えました。脱炭素は世界的な課題であり、参加者の皆さまには国内外の視点を持ち、有効な手段を選択していただきたいと願っています。特に、『I-REC』は国際的に信頼されている属性証明であり、信頼性の高い再エネを主張するための手段となります。今後もSCSKは、『I-REC』を通じて日本の再エネの推進に貢献してまいります。」と話す。

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