国際規格の再エネ属性証書「I-REC」 急増する需要家ニーズとその背景

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2023年1月に日本でも発行可能になった国際的な再エネ属性証書『I-REC』。1年を経た今、国内の状況はどのようになっているのか。I-RECの概要や活用法、他の再エネ証書との違いなどを、発電側のアグリゲーターとして再エネ推進に取り組む、再生可能エネルギー推進機構(REPO)代表・三宅 成也氏の見解も踏まえ紹介する。

再生可能エネルギー推進機構(REPO)代表取締役 一般社団法人再エネ推進新電力協議会(REAP)代表理事 三宅 成也氏
再生可能エネルギー推進機構(REPO)代表取締役
一般社団法人再エネ推進新電力協議会(REAP)代表理事
三宅 成也氏

再エネ属性証書「I-REC」とは

I-REC(International Renewable Energy Certifi cate)(読み:アイレック)は国際的な「再エネ属性証書」で、世界64ヵ国(2023年実績)で発行されている。Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気を自社で使用する際に伴う間接排出)における電力の属性を証明する手段として、世界的な報告の枠組みであるGHGプロトコル、CDP、RE100などから信頼性のある再エネ属性証書として認められている。

再エネ属性証書は、電力が「いつ・どこで・誰が・どんな方法で・どれくらい」発電され、誰が使用したかを明らかにし、その情報を第三者でも確認できる仕組みである。消費した電力の属性を証明し、開示情報の信頼性を高めることが、需要家の企業価値向上に寄与する。また、その対価を支払うことで、再エネ発電者の再エネを創出するモチベーションを高め、再エネ拡大の好循環を生み出すのだ。

属性証明のしくみ
属性証明のしくみ

急速に高まる需要家ニーズ、不足する供給

RE100の加盟企業やグローバルにビジネスを展開する企業を中心に、国内I-RECの購入を希望する需要家は増加傾向にある。一方で、供給量は不足気味だ。需要家が希望する属性等の条件に合致した供給が少なく、実際の取引成立までに時間を要している。SCSKでは、より多くの再エネ発電者へ積極的な参加を呼び掛けている。

需要家の声

A社(外資サービス業)

RE100技術基準に合致した証書を探しており、それに適合したI-RECが日本で購入できるのであれば、すぐに購入したいと考えていました。自社の証書調達分は、全量I-RECを購入したいと思っています。

B社(国内製造業)

信頼性の高さからI-RECに興味を持ちました。現在当社の脱炭素の取り組みについて第三者機関が検証していますが、I-RECによって信頼性が増すと考えました。今後、海外拠点でもI-RECの購入を検討しています。

C社(国内サービス業)

国際的に認められる証書を購入したいと考えていました。また、証書供給のリスクに備え、証書のポートフォリオを組んでおきたいと考えており、その一つにI-RECを検討しています。

D社(国内建設業)

現在、FIT非化石証書の調達にあたり、最終オークションでは見込みで購入しています。証書が不足しないよう多めに購入するため、余ってしまうことが課題でした。I-RECは有効期限がなく、好きなタイミングで好きな量を購入できるため使い勝手が良いと感じています。

「I-REC」の詳細はこちら

需要家からみたI-RECのメリット

RE100やCDPなどの国際イニシアチブに参画する企業にとって、再エネの調達は喫緊の課題。その1つの手段として、再エネ属性証書の活用にも注目が集まっている。

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「『国際的な信頼性の高さ』と『使い勝手の良さ』が需要家から見たI-RECのメリットかと思います」と話すのは、再生可能エネルギー推進機構(REPO)代表の三宅 成也氏。

旧一電に勤務後、電力小売事業者で再エネ供給を手がけ、2023年1月にREPOを設立した三宅氏。現在は、アグリゲーターとして発電事業者、自治体、企業などと連携し、再エネ電源を地域主体で活用するスキームによる再エネ推進に取り組む。

「我々は、地域に分散した電源を集約し供給する役割を担います。アグリゲーターとして抱えた電力を地域に優先的に戻し、地域の電気代を下げていくスキームを構築していきたいと考えています。再エネを地域へ還元するには、電力に対する精度の高いトラッキングの仕組みが必要です。そういう意味でも、I-RECの仕組みが日本でも普及すれば⋯と思っています」

日本で普及する非化石証書は日本独自のもので、再エネ電源種別や産地などの属性を証明することはできない。国際標準の再エネ属性証書の要件を満たしていないのが実情だ。

「グローバル企業の日本支社の方から、日本の再エネ証書の信頼性などを、本社をはじめ、海外の取引先へ説明するのは困難で、労力がかかるという話を聞いたことがあります。そもそも認知度が低いのと仕組みが複雑でわかりにくいというのが原因です。特に欧米などグローバルで事業を展開する企業において、自社で使用している電力を証書を使って証明したい場合、世界標準のトレーサビリティの精度、加えて客観性という意味でも、I-RECを活用した方が相手が安心しますし、煩雑な手間も削減することができると思います」。

また、オークション形式で年に4回の取引となる日本の非化石証書に対し、I-RECは好きなタイミングで好きな量だけ購入でき、有効期限もない。償却の手続きをする前であれば自由に転売もできる。『使い勝手』という面でも、日本の再エネ証書と比較し、I-RECが優位だと言える。

発電者にお金を戻すしくみ

「再エネ属性証書というものは、需要家が再エネ発電者を応援するための手段だと思っています。

発電者を応援する手段
発電者を応援する手段

需要家が再エネ属性証書を買い、そのお金が再エネ発電者に戻る。再エネ発電の投資回収が楽になるので、新しい発電プロジェクトを創るモチベーションになる。いわゆる「追加性」と言われるものですが、非化石証書の購入代金の多くは、発電者にもどらず「追加性」につながらないのが問題だと思っています。再エネを増やしていくという観点でも、I-RECの活用は重要だと考えています。」

「I-REC」の詳細はこちら

 

SCSK株式会社 EneTrack事務局
https://www.scsk.jp/sp/enetrack/

SCSK株式会社

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