【徹底解説】脱炭素社会を計測で支える ヴァイサラ独自の技術
カーボンニュートラルの取り組みが世界中で広がっている。CO2の削減や回収についてはまだまだ課題も散見される。脱炭素に向けた新技術に対して、計測技術のリーディングカンパニーとして知られるヴァイサラは、計測からどのようにサポートしているのかリージョナルデベロップマネージャー荒井 良隆氏に話を聞いた。ガスの種類や濃度、規模など対象となるアプリケーションに最適な計測技術について、その知見をもとに解説してもらう。
温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを意味する「カーボンニュートラル」。日本を含む120以上の国・地域が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言している。2021年に開かれた第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)では、岸田文雄首相が「2030年度に、温室効果ガスを、2013年度比で46パーセント削減することを目指し、さらに、50パーセントの高みに向け挑戦を続けていくことをお約束いたします」と表明したように、多くの企業が2030年度に向けて新技術を含む脱炭素のアクションを既に開始している。
それではCO2排出を減らすためには具体的に何をすればいいのか。CO2は燃料を燃焼した際に発生するガスであるため、CO2を何かに変換するためには、当然ながらエネルギーが必要となる。また、CO2を回収するにも、同様にエネルギーが必要であるが、そのために化石燃料を使用しては本末転倒だ。また、そもそもどこでどれほどのガスが出ているのかを把握しなければ始まらない。
「各技術においてはメタン濃度やCO2計測が重要なパラメータとなるため、近年では技術知見に対する要望が弊社に多く寄せられています」こう語るのは計測機器のリーディングカンパニーであるヴァイサラの荒井氏だ。荒井氏は現状のCO2削減の手段として、主に以下の3つを挙げる。
(1)再生可能エネルギーの活用
(2)CO2を回収・利用もしくは貯蔵
(3)化石由来のエネルギー使用の効率化や省エネ
このうち(1)と(2)について、解説をしてもらった。
再生可能エネルギーとしてのバイオガス活用
再生可能エネルギーには、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマス、バイオガスなどがある。「バイオガス発電運用の効率化においては、消化槽から排出されるガス中のリアルタイム計測や熱電併給システム(コージェネレーション/CHP)の効率的運用が重要です。メタン、CO2、水分の3成分を同時計測する弊社のマルチガスプローブ(MGP260シリーズ)は、バイオガス中の配管に直接取り付けが可能で、硫化水素がある環境でも耐久性に優れています」(荒井氏)また、発酵の状態をリアルタイムで把握するのに役立つという。CHPの出力電力を最大化するためには、CHPに吸気前のメタン計測が有用である。また、バイオガスをアップグレードして高濃度のメタンにする工程では、メタン濃度が約60%の吸気や約98%の排気箇所で正確なメタン計測が必要となる。このためヴァイサラのMGP260シリーズが、プロセスの改善、CHPの保護としてプラント運用に必要な計測機器として採用されています。
CO2の回収・利用・貯蔵で活かせる計測機器
CCU(CO2回収・利用)やCCS(CO2回収・貯蔵)もしくは、2つの言葉を合わせたCCUSというワードが広く注目されるようになってきた。このCO2の回収・利用そして貯蔵についても、計測機器という切り口で解説ができる。
「CO2を回収する技術は化学吸収法、物理吸収法、個体吸収法、膜分離法を始めいくつかあります。各技術には、低分圧または高分圧に向いている、または大容量や小型化が得意という特徴があります。また、回収するガスの種類によっても、採用される技術は変わってきます。したがって、計測機器も、どのような回収技術が採用されているかに応じて検討する必要があるのです」(荒井氏)
吸気・排気の工程では、CO2計測が必要になる。例えば、回収ガスが石油精製工場、製鉄所、セメントの製造工程などの排ガスで高濃度のCO2が含まれる場合や、工業炉やオフィスなどから出る5%以下の低濃度の場合、更に注目技術のDAC(直接空気回収)の場合は、空気中のCO2レベルの計測が必要であり、ppmレベルの計測を必要とされます。計測したい濃度にあった計測機器を選定することが重要になる。計測対象ガスの濃度だけでなく、小型のCO2回収装置のように装置組み込みか、製造ラインに直接挿入が良いのかで計測機器のサイズも考える必要がある。ヴァイサラは各技術・工程に最適な低濃度から高濃度、防爆、非防爆など様々なラインナップを揃えている。「カーボンニュートラルを目指すお客様に寄り添いニーズを丁寧に組み上げることで、それぞれのアプリケーションに沿った計測機器を市場に出してきました」(荒井氏)
次に、回収したCO2の利用について注目してみたい。注目される技術の1つがメタネーションとなる。メタネーションとは、グリーン水素やブルー水素とCO2からメタンを精製することである。メタン濃度は90%以上になる。精製されたメタンを都市ガスの代替として使用する場合メタン濃度は約90%になる。正確なメタンの供給量を把握するには、合成されたメタンの濃度を正確に測定する必要がある。「ヴァイサラのマルチガスプローブは、正確なメタン計測だけでなく水分も同時計測したいというニーズに応える製品です」(荒井氏)、メタネーションにおけるプロセス中の正確な計測はメタネーションの効率的な運用をサポートできる。
「加えて、CO2の回収・貯留(CCS)もCCUと同様に脱炭素には必要な方策です。日本には大規模な油田やガス田がないため、深部塩水性帯水層への貯留が主になります。貯留時のCO2濃度は99%以上となるため、高濃度のCO2を計測する場合はマルチガスプローブMGP260シリーズが最適です」(荒井氏)
計測でカーボンニュートラルを支える
2050年までにカーボンニュートラルを達成するには、あらゆる手段を用いる必要がある。電力分野では、再生可能エネルギーやカーボンフリー火力をはじめとして、非電力分野では水素還元製鉄や燃料電池車などの水素利用の拡大、合成メタン、合成プロパン、合成液体燃料の利用が必要である。これらの施策については、すでに研究開発・実証試験が進められており、新技術も次々と生まれている。「ヴァイサラは今年で日本法人40周年を迎えます。長期にわたり日本の産業界をサポートしてきた計測技術で、カーボンニュートラルを支える新技術と共創して脱炭素を推し進めることは私たちの役割であり誇りでもあります」荒井氏は力強く語った。
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