英GridBeyondによる需給調整市場への参入と日本でのエネルギー最適化戦略

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2010年、現CEOのマイケル・フェラン氏がアイルランドで創業した「GridBeyond(グリッドビヨンド)」。AIとデータサイエンスを活用し、電力最適化や分散型エネルギーリソースの管理、電力市場への参入、脱炭素化経営などをサポートするエネルギーITソリューションプロバイダーだ。成長を続ける同社の日本市場における戦略や最新の取り組みを聞く。

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◆〈需給調整市場〉への早期参入を狙う

Gridbeyond 最高経営責任者(CEO) マイケル・フェラン氏
Gridbeyond 最高経営責任者(CEO) マイケル・フェラン氏

「GridBeyond」は、エネルギーの柔軟性を有する資源や設備のマネージメントを行う、グローバルエネルギーソリューションカンパニーだ。創業以来、アイルランドをはじめ、英国、米国、オーストラリアで事業を展開。日本では2022年に法人を設立し、2023年から本格的な活動を開始している。

「AIテクノロジーを活用したエネルギーソリューションサービスによって効率よく、かつヒューマンエラーを排除できることが当社のサービス特長です。飛行機の操縦を例にすると、自動運転をメインとしつつ、複雑な操作や人の判断が必要な部分はパイロットが行います。それと同様で、スーパーバイザーとして人を介しますが、実働はAIが担います」とフェラン氏。

独自のAIやロボットレーティング技術を用いて、実際に発電した電力を売買する〈卸電力市場〉、将来の電力供給力を売買する〈容量市場〉、短時間での調整力を売買する〈需給調整市場〉の3つの市場で、効率的な電力取引を代行(アグリゲーション)するサービスを提供する同社。

「欧州と比較し日本の市場は現在、まだ初期のステージ(アーリーステージ)と言えます。一方で、容量市場へ、早いうちから入り込んでいくには良い時期です。特に、始まったばかりの〈需給調整市場〉において、今のうちから存在感を示していきたいと考えています」

◆欧州での知見・経験を強みに

同社のサービスでは、独自開発したAIプラットフォームを活用し、企業や工場で使用する電力の最適化を図ることで、柔軟性のあるエネルギーである〈調整力〉を見つけ出す。これを市場で取り引きすることで、企業や工場の脱炭素化を進めつつ、新たな収入源を創出する。

アーリーステージである日本では、第1フェーズとして、CHP(ガスタービンなどの熱電併給システム/コージェネレーション)や蓄電設備をメインターゲットに設備の最適化を行うサービスを提案していく。続く第2フェーズでは冷凍食品や冷凍倉庫等の食品流通など、第3フェーズとしてセメント工場などの重工業へ展開していく。

日本では始まったばかりの〈需給調整市場〉だが、カーボンニュートラルの推進で再エネの導入が進む欧州では既に10年以上の歴史があり、同社はデマンドレスポンスのリーディングカンパニーとしての位置を確立している。

「カーボンニュートラルという意味では、欧州ではセメント工場やデータセンターなどのコーポレートPPAやEVを束ねてのエネルギー最適化なども行っています。日本でも、カーボンニュートラルに対して真剣に取り組んでいくのであれば、今後、エネルギー最適化のニーズは確実に高まっていきます。第1フェーズから第3フェーズまで、既に多くの経験と実績を持つことが当社の強み。今後必要とされるどのフェーズにも、的確に対応していくことができます」

◆日本企業とのパートナーシップを推進

日本における事業の拡大においては、日本企業とのパートナーシップを1つの戦略とする。日本法人を設立する直前の2021年8月には、同社が保有するVPP(仮想発電所)プラットフォームを用いた日本での事業展開について、千代田化工建設と覚書を締結している。

千代田化工建設は、世界をリードする総合エンジニアリング企業。1948年の創業以来、世界60カ国以上で石油・ガス・石油化学などの事業分野で設計、調達、建設(EPC)、運用・保守サービスを提供してきた。

日本の再エネ普及に際し、調整力の創出が求められる中、世界の先進的な電力市場でVPP事業を展開し、産業需要家向けを中心に400を超えるサイトに実績を有する『GridBeyond』のVPPプラットフォームに千代田化工建設が着目。千代田化工建設の生産設備に関わる知見・ノウハウと『GridBeyond』のプラットフォームを組み合わせることで、生産設備の最適運用と電力市場で取引可能な調整力の創出を目指す。

また、2024年4月には、横河電機と戦略的パートナーシップ契約を締結している。製造現場、モノづくり分野における操業改善やエネルギー管理ソリューションに強みを持つ横河電機とグローバルに実績を持つ『GridBeyond』の電力取引サービス、VPPソリューションなどを掛け合わせることで、製造業の脱炭素化と電力利用の効率化、新たな収入源の確保の同時実現を目指していく。

「当社は、10年以上にわたり、アイルランド、英国、米国といった、世界でも先進的なエネルギー市場において、エネルギー変革をサポートしてきました。そうした知見、ノウハウ、実績をもとに、アーリーステージの日本において、段階的に事業を拡大していきたいと思います。電力の最適化を我々がお手伝いすることで、化石燃料使用量の削減など日本のカーボンニュートラルにも貢献できると考えています」

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GridBeyond合同会社GridBeyond合同会社
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