幸せな脱炭素社会に向けた、地域のカーボンニュートラル
スマートインフラ・エネルギーは、地域ごとに適したインフラの総合的な運営を支援することで、地域社会の持続可能な発展をサポートする。今回は、脱炭素社会実現に向けた地域のカーボンニュートラルやICTによるDXのさまざまな可能性とその未来予想図について、デジタルグリッド株式会社 RECマネージャーの池田 陸郎氏にNTT西日本の中島氏、林田氏が話を聞いた。
自治体や企業のカーボンニュートラル推進を支援
池田 2020年10月、菅総理(当時)が脱炭素社会の実現をめざす「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、「地球温暖化対策を日本の成長戦略にする」ことを決めました。これを機に、自治体や企業は本格的に脱炭素への取り組みを始めました。この具体的なアクションとして、政府が推進する重要施策の一つが、EVの普及です。しかし導入コストが高い、走行距離に制約があるなどの課題があり、広い普及には至っていません。
中島 NTT西日本はこれまで地域のまちづくりのパートナーとして、自治体や企業のさまざまな課題に取り組んでおります。ある自治体とカーボンニュートラルに向けた実証実験を行う過程では、自治体の業務用車両の二酸化炭素の排出量が多いことがわかり、業務用車両の一部をガソリン車からEVへ移行することで、二酸化炭素の削減を実現しました。
林田 さらに自治体や企業の業務用車両のEV化に際して導入から活用効果の分析までワンストップで提供を行っています。
中島 庁舎に太陽光発電や蓄電池設備を設置し、集めた電気を使う充電ポートの実例もあります。再生可能エネルギーでEVを活用すると、カーボンニュートラルに大きく貢献できると考えます。
池田 自治体や企業でEVの導入が進んでいますが、石炭や火力発電による電気を使うと、いくばくか二酸化炭素は排出されます。しかし、太陽光などの再生可能エネルギーを使えば二酸化炭素の排出量は限りなくゼロになります。地域で貯めた電気を地域で使うEVの仕組みを実現できたのは、地域の方々と協力し、課題の解決に取り組まれているNTT西日本さんだからだと思います。
カーボンニュートラルと業務効率化の両立
中島 カーボンニュートラルの取り組みを広げていくにあたり、業務の効率化との両立を考えていくことは重要です。カーボンニュートラルを進めたはいいが、そのために業務が煩雑になったとなれば、その取り組みは定着しないからです。
林田 先ほどの事例ですと、公用車・社用車の予約管理や記録報告が、帳面への手書きであったり、データソフトに都度入力する必要があるなど、業務効率化の余地がありました。そこで、予約状況や走行履歴の記録を自動化、バーチャルキーによる物理鍵受け渡し業務の解消などを進めました。利用状態や実績をデータ化しますので、最適な車両台数管理・コスト管理を行うことができます。
池田 業務のスリム化やコスト削減など、自治体が抱えているさまざまな課題が解決されるのは素晴らしいですね。ところで、従来のEVは、充電ポートでフル充電することが基本となります。長い距離を走らなかった場合、充電に要する時間や放電される電気がもったいないということもあります。
林田 予約時に、想定距離に必要な電気だけを確保する設定も可能です。電気を抑制し、エネルギーを無駄なく使うことができるのもメリットのひとつです。
災害時に役立つ蓄電池としての役割
池田 自治体のEVは、使わないときは市民や観光客にシェアなどで開放すると公共サービスとして成立します。災害時は避難所で電源として使うことも可能ですので、新しいインフラにもなり得ます。
中島 モビリティとしての価値と蓄電池としての価値の両方を社会に届けたいと考えています。さらに、観光客にお使いいただければ、観光振興にもつながります。
池田 将来的には、まち中に電池が配備されているという状態になりそうですね。自治体が「蓄電池にもなる」EVを使っているということが、住民の安心感につながるのではないでしょうか。安心して住めるまちと認識されれば、転入人口が増える可能性もあります。
中島 NTT西日本は長年、通信業務を通じて地域の皆さまに安心、安全を提供してまいりました。EVでも、防災といった観点での安心、安全をお届けしたいと考えています。
カーボンニュートラルで叶えたいのは幸せな地域社会
林田 これまでの自治体はEVをとりあえず導入しようという段階でしたが、これからはEVを活用する未来予想図を描き、実践するフェーズに移られています。
池田 自治体がカーボンニュートラルを進めていくのに大切なのは、住民の理解と共感です。EVのある脱炭素社会で、自分たちや子どもたちの幸せが増すというビジョンを住民と共有することが理想です。
中島 私たちが叶えたいのは、住民が幸せに暮らすことができる地域社会です。EVをはじめとしたソリューションを導入する自治体が増えると、国としてカーボンニュートラルの実現に近づくことができますし、地域で推進することで、住民にとって利便性が高いスマートシティの実現や、地域の幸福度が高まる地域創生の取り組みに繋げていこう、と考えています。
池田 EVの単体事業ではなく、地域社会の幸せを願い、パートナーとして支援をされていることに感銘を受けました。約30年後、今の子どもたちが活躍する社会になっています。「あの時、カーボンニュートラルを本気でめざしてくれたから、自分たちは笑顔でいられるのだ」と思ってもらえるように今から取り組むことが、私たち大人の義務です。この取り組みが多くの自治体や企業に広まることにより、カーボンニュートラルの実現が加速することを期待しています。
※NTT西日本およびNTT西日本グループにより、地域のカーボンニュートラル推進に貢献した事例です。
NTT西日本公式サイト内【Smart Infrastructure & Energy】
https://www.ntt-west.co.jp/business/smart10x/infrastructure_energy/
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