アイ・グリッドのPPA・蓄電池活用サービス 再エネ余剰電力を有効利用
GXソリューション事業、仮想発電所事業、電力供給事業など、多岐にわたる事業で統合的な脱炭素ソリューションを展開するアイ・グリッド・ソリューションズ。電力の価格変動が大きくなるなか、再エネの自家消費に注目する企業が増えている。
同社では、再エネ余剰電力の有効活用を実現する、蓄電池を活用したサービス提供に力を入れる。
“再エネ自給率”向上で、企業メリットを最大化

2021年の電気代高騰で、企業においては“電気代は安くない”という認識が高まっている。電力小売事業者は事業のリスクヘッジから、価格を需要家に転嫁するのが一般的となっており、電力の市場連動プランなども出てきている。
「為替や原油価格の影響で、今後、価格変動リスクが高くなっていくことが、電力を取り巻く環境として顕在化してきています」と、アイ・グリッド・ソリューションズ(アイ・グリッド)執行役員ソリューション営業部長の中村宏氏。
“電力コストの安定化”を目的に自家発電設備の導入を進める企業が増えるなか、再エネについては、FITによる売電価格が下落する一方で、企業が電力会社から購入する電気料金は上昇傾向にあり、“売るより使った方が得”な時代へと移行している。
アイ・グリッドの考えは企業の“再エネ自給率”をいかに高めていくかだ。〈脱炭素〉へ向けて再エネ比率を高めるだけなら、電力会社から再エネプランの電力を購入すれば実現できる。ただ、これは再エネの“自給”ではなく、電力会社から都度購入している位置づけとなる。
「再エネ電力プランの購入で再エネ比率を高めれば、『RE100』など脱炭素へ向けた報告はクリアできます。しかし、電力コストの変動を抑え、自社の事業環境を安定させるための電源確保にはなっていません。そういう意味で我々は、“再エネ自給率”という言葉を大事にしています」(中村氏)


“再エネ自給率”を考えた場合、建物の屋根の面積と建物の電気需要量のバランスが重要となる。大きな屋根面積を持つ物流施設などでは、発電した電気を使いきれないため、屋根面積の一部に太陽光発電を設置し、建物の消費電力の一部を賄うケースが多く、屋根面積を最大限活かした再エネの活用ができていないのが実情だ。
余剰電力をうまくコントロール・制御
「屋根面積の活用を最大化した上で、余剰電力をうまくコントロール・制御し、再エネを有効活用し“再エネ自給率”を高めていく提案ができるのが、当社の強みです。余る電気をいかに使うかの手段はいくつかありますが、なかでも最近は、蓄電池をうまく活用したソリューションを提供しています」
屋根面積を最大活用することのメリットは大きく2つ。1つは国内の再エネ導入量の拡大という意味で意義が大きい。もうひとつは企業側のメリット。太陽光パネルを屋根全面に大きく設置するため、電力供給単価が安くなる。
「余る電気は、送配電網を介して他の施設に送る選択肢もありますが、併設した蓄電池に余剰電力を貯め、夜間に放電するといったタイムシフトを起こすことで、建物の電力自家消費量を高めていくこともできます。そうした制御を得意としていることも我々の特長です」とアイ・グリッド・ソリューションズ事業戦略部チーフの松原秀彦氏。
柔軟なコントロールで蓄電池を賢く使う
蓄電池の導入については、関心は高いものの、コストの問題で検討に至っていない企業が多い。アイ・グリッドでは2024年5月から、JA三井エナジーソリューションズ(JMES)との協働で、『蓄電池併設型オンサイトPPAサービス』の提供を開始している。
同サービスは、JMESが流通小売店舗や物流倉庫等を運営する電力需要家から施設の屋根を借り、太陽光発電設備及び蓄電池を設置する。オンサイトPPAに蓄電池を併設し、アイ・グリッドが蓄電池の充放電制御などを行うことで、施設での効率的な再エネ活用や地域における防災拠点構築などに貢献する。
アイ・グリッドは、先進技術を融合した独自の再エネプラットフォーム『R.E.A.LNew Energy Platform®』を持つ。全国に散らばるオンサイトソーラー、蓄電池、EV充電設備、EMS(エネルギーマネジメントシステム)、需要家をAI基幹システムとつなげ、分散型のエネルギーネットワークを構築している。
蓄電池を併設しても、ただ単純に電気を出し入れするだけでは、メリットは少ない。“再エネ自給率”の最大化を目指すなら、発電した電気を自社で使用しつつ、余る電気を蓄電池に貯めて夜間に放電する。これを一連の作業で回すだけでなく、場合によっては日中発電量が少なく建物の需要に対して電力が足りなくなる時間帯が予測されれば、そこをめがけて蓄電池から放電することも必要となる。経済合理性を高めるなら、電力会社の基本料金を決めるピークを下げることで、電力コストの削減にもつなげていきたい。

「充電タイミングだけでなく、需要量を見ながら放電していく。需要予測もしながら少しずつ放電することで、ピークは下げながら需要量が低くなれば使い切る。蓄電池をいかに賢く使うかがポイントですが、AIを活用することで、充放電の制御をかなり柔軟に実現できるのが、当社ソリューションの特長です」(中村氏)
蓄電池のマーケットでいくと、JEPX(日本卸電力取引所)との取引で投資回収が比較的短期でできる系統用蓄電池に注目が集まりがちだ。しかし、系統の負荷や接続コストを考えると、地域で創った再エネはその地域で使うのが望ましい。
「近年は系統接続が受け入れられないケースも出てきています。ナショナルグリッドの送配電網をベースにすると、再エネの導入は、この先スムーズにいきません。根本的には創った再エネを送電網に流さないような環境を作ることが必要です。そのためのエネルギー最適化の一つの手段として、蓄電池の活用は重要なカギになると考えています」(松原氏)
〈GXソリューション〉で“再エネ自給率”を最大化
アイ・グリッドが重要視する“再エネ自給率”の最大化は、企業の脱炭素課題の解決だけでなく、変動要素のない電源を確保するという意味で、電力コストの変動リスク抑制にもつながり、企業経営にも大きく寄与する。
同社では、電力コストが長期的なトレンドとして“変動しながら、ゆるやかに上がっていく”ことを踏まえ、“再エネ自給率”を最大化するための〈GXソリューション〉を、企業や自治体へ提供している。

アイ・グリッドでは、2017年から商業施設を活用した分散型太陽光発電事業を開始。自然環境に最大限配慮し、用地を切り開く大型開発を避け、屋根や駐車場など開発済み用地への分散型太陽光発電の導入を進め、現在、オンサイトPPAで国内最大規模の実績を持つ。また、需要家併設蓄電池シェアトップのファーウェイ製蓄電池の供給先としても、トップランクに位置する同社、メーカーからの信頼も厚い。
「我々は、余剰電力が生まれる施設、発電所をかなりの数持っています。この余剰電力をオフサイトから供給させていただくような提案も手掛けています」(中村氏)
〈GXソリューション事業〉では、ルーフトップ/カーポート太陽光、蓄電池、EVチャージャーを備えた新時代の店舗構想を、『GX Store』『GX Logistics』という形で、流通小売企業や物流業向けに提案する。
2024年7月には、総合物流企業であるセンコーの京葉PDセンターへ、蓄電池併設の太陽光発電施設を導入。『GX Logistics』の第1号施設として運用を開始している。
「余剰電力循環スキーム」で再エネ自家消費比率向上
『GX Logistics』は、太陽光パネルの設置面積を最大化しつつ、再エネ電力の自家消費比率を大幅に向上させる独自の『余剰電力循環スキーム』と、太陽光発電、蓄電池、EVなどの分散エネルギー源をネットワーク化し需給調整する『R.E.A.L New Energy Platform』を活用したGXソリューション。

センコー京葉PDセンターでは、屋根上の太陽光発電で、日中の稼働時間帯に必要な総電力の約50%を賄うことができる。また、余剰電力をAI予測による再エネプラットフォームでコントロールし、併設した産業用蓄電池に貯め、電力使用量に応じた放電を行うことを可能としている。

“グリーンエネルギーがめぐる世界の実現”を
蓄電池の提案については、3年ほど前から力を入れてきた。
大型ホームセンターを展開するジョイフル本田と連携して進める、同社店舗のGX推進では、2025年6月までに対象11店舗へのPPAモデルを中心とした太陽光発電の設置を完了。うち、10店舗に蓄電池を併設している。
蓄電池のほか、EV充電器にも注目する。2024年9月には、伊藤園、いすゞ自動車と連携し、伊藤園浅草支店でEVルートセールスと施設エネルギーマネジメントを両立させるための、効果測定及び評価を行う実証運用を開始。2025年9月までの実証期間で、EVトラックの業務利用と施設エネマネを両立させる仕組みの実装を目指す。
“グリーンエネルギーがめぐる世界の実現”をビジョンに掲げるアイ・グリッド。「GXを進めていくときには、自社だけでなく地域住民にも必ず何かのメリットがある、地域共生の思想が大切です」(松原氏)

流通小売企業を中心にGXソリューションを提供するのは、広い屋根を持ち、再エネポテンシャルが高いのと同時に、災害時の避難拠点としても機能する可能性が高いからだ。
「自治体と災害協定を結んでいる企業や避難所指定されている拠点も多い。いろんな意味でハブとなる施設に、発電設備やバッテリー設備が整っていることは重要だと考えています」(中村氏)
再エネの地産地消で『GX City』実現へ
目下、単純な施設の再エネコントロール、エネルギーマネジメントを進めているが、最終的には再エネの地産地消を実現し、地域の脱炭素化、レジリエンス強化、経済活性化、生活利便性・快適性を向上する『GX City』を目指していく。
「地域や自治体、あらゆるステークホルダーを巻き込み、再エネを最大限活用して“グリーンエネルギーがめぐる”、魅力的な地域の在り方を模索していきたいと思います」(中村氏)
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ
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